偏愛的プレミアリーグ見聞録

クリスマスを控えた今、「プレミアリーグの最強チームは？」といわれたら、アストン・ヴィラと即答で返すしかありません。5節まで3分2敗と絶不調だったウナイ・エメリのチームは、6節のフラム戦を2-1で制してから、11勝1敗の快進撃。この期間のマンチェスター・シティは10勝2敗で、アーセナルは9勝2分1敗です。直近のプレミアリーグは7連勝。6試合連続で1点差の勝利です。

昨シーズンの最終節でマンチェスター・ユナイテッドに敗れ、チャンピオンズリーグの出場権に1歩及ばない6位フィニッシュ。人件費の高騰で財政難に陥っていたチームは、オフシーズンに入るとUEFAのファイナンシャル・フェアプレーで違反を問われ、罰金として950万ポンドを支払っています。当然ながら強化予算を確保できず、完全移籍で獲得した即戦力はゲザンのみでした。

第2GKLのビゾットは既に34歳で、32歳のリンデロフはフリーエージェント。ジェイドン・サンチョとハーヴェイ・エリオットはローン移籍と、「何とか人数は揃えました！」といわれているような補強です。対して退団＆放出リストは豪華メンバー。ラシュフォード、アセンシオ、ディサシはローンバックで、レオン・ベイリーとジェイコブ・ラムジーがチームを離れています。

「アスレティック」のジェイコブ・タンズウェル記者によると、チームの強化に失敗した「悪夢の夏」の余波が序盤戦のパフォーマンスを蝕んでいたようです。記者が取材した現場関係者は、「選手たちは怒りっぽくなっており、スタッフはローテンションで、チームは衰退の一途を辿っているのではないかと懸念する者もいた」といっていたそうです。

オリー・ワトキンス、モーガン・ロジャースなど前線の主軸が決められず、5節まででわずか1ゴール。極度の貧攻にあえいでいたチームを変えるきっかけとなったのは、復活したブエンディアとフィット感を高めたドニエル・マレンでした。1ゴール1アシストでフラム戦の初勝利に貢献したブエンディアは、その後のリーグ戦でも10試合3ゴール1アシストと結果を残しています。

スパーズ戦は逆転ゴール、ボーンマス戦は先制ゴール、アーセナル戦は決勝ゴール。勝利に直結する活躍が目を引きます。バーンリー戦で2ゴールのドニエル・マレンは、ボーンマス戦とブライトン戦でも決めており、ヨーロッパリーグの先発5試合で3発をゲットしています。彼らが勝利に貢献しているうちに、モーガン・ロジャースが調子を上げてきました。

フラム戦以降の12試合で7ゴール3アシスト。オリー・ワトキンスは17試合3ゴール1アシストという微妙な状態ですが、指揮官が意図的に増やしたミドルシュートが穴を埋めています。モーガン・ロジャースは、ボックスの外からサイドネット際に収める美しいミドルで6ゴール。ティーレマンスとマッギンは、ボックス周辺からフリーで打てるスペースを創る役割を担っています。

守備においては、ライン間の距離を詰めてコンパクトな陣形を構築し、細かくポジションを修正するトレーニングを繰り返しているそうです。SBとCBとの距離が近いのも、エメリ戦術の特徴のひとつ。ラインブレイクパスをケアしつつ、相手をアウトサイドへ追いやる守り方は、接戦を制する勝負強さにつながっています。

中盤の底にいるブバカル・カマラとアマドゥ・オナナがスペースを埋めて、ボールを奪うと前線の4人が一気にスプリント。トランジションのスピードも、スパーズ、マン・シティ、アーセナル、マン・ユナイテッドを次々と撃破する原動力となりました。前半戦の最後の2戦は、チェルシーとアーセナルとのアウェイ連戦ですが、今の彼らならあっさり勝ってしまうかもしれません。

クラブの内情をよく知るタンズウェル記者は、「チームは強い結束力をキープしている。マッギン、キャッシュ、オリー・ワトキンス、コンサは仲がよく、ロッカールームでいい雰囲気を醸成している。リンデロフはコンディショニングと献身的なプレイで一目置かれている」とレポートしています。ヴィラは一気に首位に立てるのか。年末のシックスポインターに注目です。