2026.01.01 アーセナルの話題
大敗だったから?古巣に負けたから?ウナイ・エメリがアルテタと握手をしなかった理由を考える。
2022年11月にアストン・ヴィラの監督に就任してから、自らを解任した古巣との対戦は2勝1分2敗のイーブンだったのですが、敵地エミレーツで負けたことはありませんでした。グーナーを見返すことができる場で、完敗したのが悔しかったのか。いや、それよりも、アルテタに戦術で敗れたのが屈辱だったのではないでしょうか。
決戦の72時間前、スタンフォード・ブリッジの逆転劇は、58分の3枚代えが勝負のターニングポイントとなりました。ドニエル・マレン、ブエンディア、マッギンをオリー・ワトキンス、サンチョ、アマドゥ・オナナ。トップ下で厳しいチェックを受けていたモーガン・ロジャースをサイドにまわし、ティーレマンスを前で機能させる策は、チェルシーの守備陣を混乱させました。
オリー・ワトキンスの2発は、ショートカウンターとCK。プレミアリーグ8連勝で、勝てば首位と並ぶ一戦を迎えた策士は、後半にエンジンを全開にした前節とは逆の展開を狙っていたはずです。オリー・ワトキンスの後ろにサンチョ、モーガン・ロジャース、ブエンディア、2センターはティーレマンスとアマドゥ・オナナ。堅守アーセナルを倒すのに必要なのは、先制ゴールです。
右サイドの先発をマッギンではなくサンチョにした理由は、おそらく2つです。ひとつは、一撃必殺のカウンターの確度を高めるため。自陣でコンパクトな陣形を保って相手を引き寄せ、ビルドアップの際に2列めやセントラルMFが下がってプレスをかいくぐり、オリー・ワトキンスとモーガン・ロジャースにラインの裏を突かせる戦術は、左右のドリブラーを必要としたのでしょう。
もうひとつは、リードした際にアマドゥ・オナナの脇にマッギンを入れて、守備を強化するためです。エメリ戦術は、当たりました。序盤のアーセナルは、ギョケレスとウーデゴーアがDFにプレスを仕掛けると、背後にスペースが生じていました。ティーレマンスやアマド・オナナ、モーガン・ロジャースがここを使い、ハイラインの裏を突くカウンターを展開しました。
戦術としては効果的だったのですが、ひとつだけ大きな誤算がありました。サリバ、ガブリエウ、インカピエが、オリー・ワトキンス、モーガン・ロジャース、サンチョを自由にさせてくれなかったのです。アーセナルの堅守は、戦術や機能の前に個人力がベースであることを思い知らされた45分でした。ハーフタイムは0-0。エメリ監督の2つめの誤算は、致命的でした。
中盤の守備を安定させてくれるアマドゥ・オナナが負傷してしまい、前半でアウト。リーグ屈指の戦術家は、チェルシー戦とは逆の交代策を強いられました。ブバカル・カマラとマティ・キャッシュをサスペンデッドで起用できず、ただでさえ層が薄い中盤にマッギンを早々に入れると、前線の布陣を変えるためのカードがなくなります。
今季のアストン・ヴィラは、フラム、スパーズ、リーズ、ブライトン、ウェストハム、チェルシーと逆転勝利が6回もあり、47分のCKからガブリエウに決められただけなら、冷静に戦えたはずです。完敗の最大の理由は、アルテタ監督の戦術変更でしょう。後半のアーセナルは、ウーデゴーアが中央で動き回る4-2-3-1のような戦い方にシフトしていました。
この布陣の最大の効果は、中盤のセンターが2枚になり、ズビメンディが高いポジションを取れることです。プレスを無力化する縦パスを封じられるシーンが増え、アーセナルの前線の圧力が高まってきました。前半のヴィラがプレスを受けても冷静でいられたのは、サカがリンデロフとディーニュの2枚をカバーしており、「困ったら左に出せばOK」という保険があったからです。
プレスが厳しくなると同時に、サカが巧みにコースを切って保険を解約。それでも苦し紛れのボールを出すと、読み切ったティンバーが詰めてきます。52分に敵陣でサンチョをつぶしたウーデゴーアの縦のスルーパスが通ったのは、「ビルドアップで2人のCBが開いていた」「ズビメンディが前線に上がれる位置にいた」という必然が重なった結果です。
プレスの連動をチューニングしたアーセナルがいかに押していたかは、3点めにつながるウーデゴーアのクロスが上がった瞬間を見るとよくわかります。ボックス内は5対5で、ミケル・メリノとズビメンディが両方入っています。完璧なシュートを決めたトロサールは、ボックスの手前でフリーになっており、ボールを見ながら右に移動してパスを待っていました。
前半のエメリが自陣に引いたのは、ガチガチに守るためではなく、プレスを空転させてカウンターを決めるため。後半のアルテタが布陣を変えたのは、単に攻めるためではなく、相手のプレス対策をつぶすためでしょう。4-1は圧勝と惨敗に見えますが、両者の緻密な采配が勝負を左右する神経戦だったのです。うまくやれば勝てた、うまくやられて負けたと思わなければ、ウナイ・エメリは穏やかな笑顔で握手をしていたはずです。
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