2026.01.11 監督トピックス
スパーズのトーマス・フランクは信頼を得られるのか?ビッグ6の監督の若手&無名抜擢について考える。
マンチェスター・ユナイテッドが抜擢したルーベン・アモリムは39歳。ユルゲン・クロップの後継者に指名されたアルネ・スロットは46歳でした。この傾向は、クロップ、ペップ、アルテタの影響でしょう。リヴァプールから声がかかったドイツ人の監督は48歳で、2016年のペップは45歳、混乱の最中にいたアーセナルが頭を下げたアルテタは37歳でした。
サー・アレックス・ファーガソンやアーセン・ヴェンゲルがチームを仕切っていた頃は、マネージャーがスカッドを編成する権利を掌握していました。しかし今は、コンセプトと戦略・戦術が明快なヘッドコーチと、長期的な視座を持つスポーツディレクターによるチーム強化が成功するためのセオリーとなっています。
マネージャーという肩書きでも、ほしい選手をオーダーしたり、望まない選手にNGを出したりするぐらいの権限しか与えられないケースが大半です。クロップやペップを見上げていたライバルクラブは、ディレクターと良好な関係を構築できる若いコーチを抜擢し、数年先を見据えた強化を推進しようとしているのでしょう。チェルシーは、ビジネスの論理かもしれませんが…。
2022年以降に就任したビッグ6の監督で、「欧州5大リーグでタイトル獲得の経験あり」「50歳以上」の2つの条件を満たすのはポチェッティーノだけです。スパーズが招聘したポステコグルーは58歳で、トーマス・フランクは51歳と遅咲きでしたが、「ビッグマネーが必要な名将ではなく、有望株のステップアップに期待する」という近年のトレンドを汲む選択といえるでしょう。
なぜ、こんな話を始めたかというと、マレスカとアモリムが去った後、スロットやトーマス・フランクまで解任になるのではないかという不安があるからです。とりわけ心配なのは、スパーズのヘッドコーチです。今季プレミアリーグは7勝6分8敗で14位。チャンピオンズリーグは3勝2分1敗で11位と悪くないポジションですが、カラバオカップとFAカップは既に敗退となっています。
プレミアリーグは17位なのに、ヨーロッパリーグを制覇というポステコグルー式のスーパーイリュージョンを期待できる状況ではありません。戦績より気になるのは、チームの雰囲気です。リーグ戦のホームで2勝3分5敗と振るわないため、サポーターとの関係が悪化しており、選手たちも相当ストレスを溜め込んでいるようです。
11月のチェルシー戦を0-1で落とした後、ピッチで声をかけた指揮官をファン・デ・フェンとジェド・スペンスが無視してロッカールームへ。年末のリヴァプール戦では、イブラヒマ・コナテを蹴ったとして2枚めのイエローを喰らったロメロが、「速やかにピッチを離れず不適切な行動をとった」と見做され、出場停止を1試合追加されてしまいました。
今季プレミアリーグでイエロー9枚(うち2枚はレッド1枚でカウント)のロメロはランキングの1位となっており、Instagramでクラブの経営ボードを嘘つき呼ばわりしたことが問題になっています。3-2で敗れた先週のボーンマス戦でも、試合後にファン・デ・フェン、ペドロ・ポロ、ジョアン・パリ―ニャがサポーターと揉めている動画が出回っていました。
スパーズの不振は、指揮官の采配や戦術の問題ではないでしょう。ロメロとファン・デ・フェンへの依存度が高い最終ラインは、夏に即戦力を獲得するべきでした。ソン・フンミンの得点力を補完する存在として期待されたシャビ・シモンズとコロ・ムアニは、2人合わせてもリーグで1ゴールのみ。クルゼフスキ、ジェームズ・マディソン、ソランケの長期離脱も誤算でした。
最近は、さらなる負傷者が積み重なっています。ブレナン・ジョンソンをクリスタル・パレスに売却した2日後、サンダーランド戦でクドゥスが負傷し、4月までアウト。ベンタンクールが痛めたハムストリングは重傷のようで、復帰時期は未定です。ベリヴァルもリタイアで、ソランケの復帰は早くても2月。クルゼスフキの膝は予後が悪く、さらに1ヵ月ほどかかるかもしれません。
FAカップのアストン・ヴィラ戦では、リシャルリソンがハムストリングをやってしまい、指揮官は「検査してみないと何もわからない」と嘆いています。現地のサポーターからは「ワールドカップが終わったら、ポチェッティーノを呼び戻せ」という声が挙がっていますが、この状態で指揮官を代えても、うまくいかないのではないでしょうか。
まずは、足りないパーツを埋める必要があります。統率力があるCB、守備に長けたSB、展開力があるMF。ファン・ダイク、ティンバー、ロドリとはいいません。カヨデ、トリュフェ、ファン・ヘッケ、セネシ、ジェームズ・ガーナー、シュタハでも競争力が働き、チームは活性化するでしょう。ソン・フンミンの移籍によるキャプテンシーの喪失も、解決すべき課題のひとつです。
「新進気鋭の若き指揮官」の弱点は、多くが無名ゆえに信頼してもらうまでの時間を必要とすることです。就任から間もない頃は3バックで戦っていたアルテタが、TOP4に食い込んだのは3シーズンめであることを思い出したほうがいいでしょう。クロップはドルトムントで2冠達成の実力者ですが、ファン・ダイクを手に入れたのは、マージーサイドで2年を過ごしてからです。
スパーズの指揮官は、「ヨハン・ランゲ、ヴィナイ・ベンカテシャム、オーナーとは意見が一致している」といっています。パラディチは?というツッコミはさておき、「ヘッドコーチとディレクターがコンセプトを共有して強化を推進する」ベースはあるといえそうです。であれば、もうしばらく見守ってもいいでしょう。マレスカやアモリムの苦い結末をトレースしないように。
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昨シーズン、満身創痍でヨーロッパリーグを獲ったポステコグルーを解雇した基準で考えると、たしかにトーマス・フランク、首元がスースーしてる感じがします!
スパーズは、ケインに続いて、ソンとも袂を分かって、オフェンスの出口戦略を失っているのも大きい気がしています。ワールドクラスのふたりが実行することで、どんな監督のどんな戦術であっても必ずスケールアップしてくれていたので。
くわえて、そのふたりと比べると、いささか小粒な現FW陣に魔法を掛けてくれるマディソンもいませんし…