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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

インスイングのボールが急増し、ゴール前は全面戦争!限界が見えたプレミアリーグのCKは今後どうなる?

ウェストハムの同点ゴールが取り消しとなったあのシーンがSNSで話題になり、「ダヴィド・ラヤはファールを受けていた」と主張する人々が根拠として挙げた画像には、GKの左腕をつかんでいたパブロ・フェリペとシャツを引っ張ったトディボが映し出されていました。「ハマーズにファールがあったかどうか」が唯一の論点なら、決定的な証拠といえるでしょう。

しかしそこには、もうひとつのファールの証拠がありました。プレミアリーグが昨年の8月に公開した「レフェリングの重点項目」を適切に運用するなら、トディボをホールドしたウーデゴーアはアウトです。主審のクリス・カヴァナーとVARのダレン・イングランドは、「オンフィールドのホールディングの判定がより厳格化される」と記されていたのを忘れたのでしょうか。

このシーンを俯瞰すると、ニアでソーチェクとカイ・ハヴェルツがつぶれており、ルイス=スケリーはマヴロパノスを押さえつけ、デクラン・ライスはサマーヴィルの首に腕をまわしていました。公開された主審とVARのやり取りを確認すると、マヴロパノスに対するデクラン・ライスのホールドと、トロサールとパブロ・フェリペの激突についてはチェックされていたようです。

私が挙げているのは、VARのアキル・ハウソンが確認を促した2つの事象の前にあったアクションです。ホールディングに関する判定の厳格化という期初の考え方に則り、「最も早いタイミングで起こった事象をファールとして、それ以降の出来事は無効とする」なら、デクラン・ライスのホールドによってPKとするのが妥当でしょう。

これは決して「アーセナルが悪い」といいたいわけではありません。彼らの対応は、プレミアリーグのセットピースにおいて、もはや日常になっています。映像を詳細にチェックしながら、あらためて感じたのは、「キッカーが蹴った瞬間、同時多発的に激しい競り合いが行われており、レフェリーやVARに短時間で決着せよというのは無理難題になりつつある」ということです。

プレミアリーグのセットピース、とりわけコーナーキックが変わるきっかけとなったのは、2021-22シーズンに昇格したブレントフォードです。仕掛け人はトーマス・フランク監督とセットピース専門コーチのベルナルド・クエヴァ。「GKの飛び出しをブロック」「ボールに複数の選手が集中」など、今ではよくあるシーンは、当時は斬新な戦術としてレポートされていました。

2021-22シーズンは、CKにおけるインスイングのキックの比率が50%を超えた初めてのシーズンでした。ビーズをヒントとして独自の戦術を構築したのは、アストン・ヴィラが招聘したオースティン・マカフィーと、アーセナルが呼び寄せたニコラス・ジョヴァ―です。現在のブームの火付け役となったのは、CKの進化とともに優勝争いの常連となったアーセナルでしょう。

小規模クラブの独自の作戦に留まっていれば、「ストークのロングスロー」のような扱いで終わりますが、メディアが取り上げる機会が多いビッグクラブが成果を出したと報じられると、注目度は否応なく高まります。2023-24シーズンのアーセナルはCKで16ゴールを決め、WBAとオールダムのレコードに並びました。リーグ全体の数字が如実に変わったのは、翌シーズンからです。

「アスレティック」のリアム・サーム記者とグラハム・スコット記者によると、プレミアリーグのインスイングのキックはここ2年で急増しました。2024-25シーズンは前年から11%UPの60%で、2025-26シーズンは71%を占めています。今季の36節終了時点で、インスイングのCKは2503本、GKへのファールは146回、CKから174ゴールとなっており、いずれもレコードだそうです。

CKのゴールとファールの話になると、最も成功しているアーセナルがディスられがちですが、彼らはレフェリングの傾向を分析し、ぎりぎりのラインを攻めているだけです。「ジャッジに一貫性がない」という批判は、リーグの主催者が引き受けるべきでしょう。しかし、ラグビーのスクラムのような激突が左右中央で勃発しているなかで、最初のファールを特定するのは困難です。

この話がやっかいなのは、正しければ支持されるわけではないことです。ウェストハムとアーセナルのぶつかり合いを受けて、映像のチェックに5分以上を要した結果、「実はデクラン・ライスが」といっても誰も納得しないでしょう。「ソーチェクは」「パブロ・フェリペは」など、部分的な目撃情報から批判が重なり、「遅い」「一貫性がない」といった声が大きくなるだけです。

このうえは、四択です。「スムーズな運営重視でレフェリーの判断に委ねる」「今のままでよしとして、微妙なジャッジには目をつぶる」「生成AIがジャッジ」「ルール変更」。キーパーチャージの復活、最初に誰かが触るまでゴールエリアへの進入禁止、CKを廃止してコーナースローなど、抜本的な見直しをすれば、ラグビーはフットボールに回帰するのではないかと思われます。

ルールと実際のレフェリングをふまえて、戦術を研ぎ澄まそうとするクラブに罪はありません。ゴールエリアがカオスと化したCKをひとりで裁ける人間はおらず、レフェリーやVARに責任を押し付けても何も解決しません。許容するか、変えるか。CKはもう、限界です。誰かを悪として声高に非難するお気楽な外野にならないようにと、自分に言い聞かせる今日この頃であります。


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