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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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ヨーロッパ全土にエジルショック!嘆きの元同僚たち、ドイツ人は困惑、ライバルは警戒モード

ガナーズサポーターのなかにも、あまりピンと来ていない方もいるかもしれません。メスト・エジルがアーセナルに移籍するということが、どれほど衝撃的で、理不尽で、素敵な事件なのか。21歳でレアル・マドリードに入団してから、3年間で74アシスト。2010-11シーズンの欧州アシスト王で、昨季は9ゴールを挙げ、チームのなかでいちばん得点に絡んでいる選手です。特に大きいのは、エースのクリスティアーノ・ロナウドが生涯挙げたゴールのなかで、最多アシストを記録しているのがエジルだったということ。2位ベンゼマと3位ライアン・ギグスを大きく引き離す27アシストは、まさにホットライン。レアル・マドリードの中盤の指揮官だった証です。スペインを追いかける1番手であるドイツ代表においても、2012年は13試合出場で6ゴール、6アシストと獅子奮迅の活躍を見せ、2年連続でファンが選ぶドイツ代表最優秀選手に選出されています。バリバリのワールドクラス。攻撃的MFとしては世界一といっても過言ではないでしょう。

普通は、ありえません。24歳で今が旬の世界的な選手を、カバーニよりも20億近く安い移籍金で他クラブに放出するなどということは。もし、日本代表が本田圭祐か香川真司を韓国に譲ったら、どう思いますか?いや、乱暴な例えかもしれませんが、そのくらい理不尽な話なのです。2日の発表後、欧州中が大騒ぎで、未だ興奮さめやらぬ状態。今回は、そのさまざまな声を紹介いたしましょう。

■レアル・マドリードの元同僚は、ただただ怒りと落胆…。
まずは、エジルの存在をいちばん必要としていたクリスティアーノ・ロナウドです。スペインの「アス」紙のよると、そのほとばしる怒りは尋常じゃないようです。「最悪のニュース。僕のゴール前での動きを一番わかっていた選手だった。今回の話に憤っている」。そりゃ、そうでしょう。ベイルを獲ってエジルを出したのでは、強くなったんだかなってないんだかわからないですからね。そして、エジルが最後にレアル・マドリードで出場したゲームのユニフォームを持っているセルヒオ・ラモス。彼は相当、公私にわたり親しかったようで、突然のプレミアリーグ行きのニュースに寂しさを隠せません。「メストはチームメートでもあり友達でもあり、違いを創れる選手だった。もし僕が今回、移籍していれば、彼が移籍市場の最後にクラブを離れていく選手にならなかったかもしれない。でも、これは彼自身とクラブが決めたこと。今はただ彼の幸運を祈っている。メストとの間には素晴らしいフィーリングがあったと思う。とにかく残念だ」。もうひとり、今季加入したばかりのイスコは、ただただ呆然です。「エジルの話に僕はほんとうにびっくりしている。先週は残留するといっていたので、なおさらね。彼には圧倒的なクオリティーがある。試合を変えられる選手だ」 。

■ガナーズの選手とOBは大興奮!「ベルカンプと同じことをやってのけるだろう」
もちろん、ガナーズ側は大喜びです。まずは、エジルとポジション争いをすることになるかもしれないウォルコットから。「すごく刺激的だ。U-21のときに彼と対戦したんだけど、0-4で完敗したよ。彼はその頃からクオリティーが高く、今もクラブでも代表でも活躍している。彼の加入は大きいね。一緒にプレイしたいと思っていたんだ」。同じくライバルでもあり、ドイツ代表の仲間でもあるポドルスキも「僕らの目標は、ロンドンで一緒に成功すること。メストは、アーセナルのスタイルにフィットするはずだ。ピッチの中でも外でも、僕らは理解し合えている。彼は僕の友達であり、才能あふれる選手だ。(自身はケガで2ヵ月以上離脱する見込みだが)彼を観客席から見るのではなく、今すぐ一緒にプレイしたい」と、手放しで歓迎しています。ガナーズOBでは、元アイルランド代表のナイアル・クイン氏が絶賛。「エジルは24歳だから、これから10年は活躍できる。彼はベルカンプがやってのけたことを同じようにやれるだろう。チェルシーのモウリーニョ監督が”世界最高の10番”と称賛するプレイヤーであり、ルート・フリットも、今までみた選手の中で技術的に最も完璧だと褒めていたのを覚えている」とコメントしています。ベルカンプと同等、というのはこのクラブでは最高級の賛辞ですね。

■ライバルのモウリーニョ監督は、相変わらずひとこと多い…。
エジルの元上司、モウリーニョ監督はドイツ人MFの才能を称えつつ、デンバ・バをアーセナルにレンタルする話をご破算にしたことを明かしました。「エジルは唯一の存在で、彼のコピーは存在しない。”世界最高の背番号10”だ。彼が持つヴィジョンや、決断のおかげで私も選手たちも楽に戦えた。皆、彼を好きだし、その姿をフィーゴやジダンと重ね合わせることができた。エジル獲得で、アーセナルは優勝争いに参加してくるだろうね。デンバ・バへのオファーを私が断ったのは、アーセナルがエジルと契約したからだ。彼らは手ごわいタイトル獲得候補になったわけだからね」。…いやいや、相変わらずモウ節炸裂です。よくいえばシャープ、悪くいえばひとこと多い。受け取りようによっては、エジルの件がなければデンバ・バはくれてやってもよかった、ともなりかねない発言で、これを聞いたらセネガル代表FWはどう思うだろうと考えると、ドキドキします。

■ドイツ代表関係者は、ひたすら困惑。
エジルの才能をよく知るドイツ代表の面々も、今回の件には「信じられない」のひとこと。「レアル・マドリードの元チームメイトの何人かが悲しんでいると聞いている。エジルのような素晴らしい選手を手放すなど、私には信じられない。彼らはこの数年間、非常に多くのゴールを演出し続けてきた中心選手を売却したんだからね」とはレーブ監督。そして代表で一緒にプレイしているバイエルン・ミュンヘンのMFトマス・ミュラーも、ドイツ紙「ビルト」のインタビューで「エジルはすごくマドリードが好きだった。でも残念ながら、状況は急激に変わってしまった。レアル・マドリードはこの夏、新しい監督を招へいして、スター選手を獲得してチームを一新したけど、僕ならエジルを売らなかったと思う」とペレス会長の意志決定を非難しています。ワールドカップやユーロで、そのテクニックを間近で見ていた同胞たちこそ、いちばん信じがたいニュースだったのかもしれません。

サッカーの世界では、ときとしてひとりの選手の加入が、チーム全体を魔法のように変えてしまうことがあります。一昨年、ピルロはユヴェントス復権のキープレイヤーとなり、昨季はファン・ペルシがマンチェスター・ユナイテッドのプレミアリーグ独走のエンジンとなりました。モウリーニョ監督がいうように、エジルがアーセナルを劇的に変え、タイトル獲得の原動力となるかもしれません。今週末はワールドカップ予選がありプレミアリーグはお休みですので、世界最高MFのデビューは14日のサンダーランド戦になりそうです。どんなサッカーが観られるのか、今から楽しみですね。(写真著作者/クリスティアーノ・ロナウド:Илья Хохлов/Ilya Khokhlov/Ilja Chochłow ジョゼ・モウリーニョ:apasciuto)

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