【Leicester×Everton】狙いなきゼロトップ…絶不調エヴァートンがゴールを決められない理由。
対するエヴァートンは、右SBに若いジョンジョ・ケニーを入れ、中盤にグイェとトム・デイヴィス、2列めにはアーロン・レノン、カルヴァート・ルーウィン、ミララスです。シュナイデルランとシグルズソンをベンチに置いたチームは、降格ゾーンから脱出できるでしょうか。どちらが早く立ち直るのかを占う一戦は、どうやらレスターに分がありそうです。3分、敵陣でのボール奪取からデマライ・グレイが左隅を襲う惜しいミドルシュート。前監督に起用されず、不満を募らせていた21歳のアタッカーは、出ればやれると闘志をみなぎらせています。8分の右からのCKは、イボーラのヘッドが枠にいかずファーに流れ、ウェズ・モーガンのボレーはDFにヒット。右サイドから再三突破を図るデマライ・グレイは9分にもきわどいグラウンダーを中に通しますが、チルウェルのボレーは右に外れました。
エヴァートンは、相変わらずカルヴァート・ルーウィンの孤軍奮闘。トム・デイヴィスが何とか前線を動かそうとパスを送りますが、レスター守備陣に読まれてボールをキープすることができません。18分、優位に立っていたホームチームが得意のカウンターで先制しました。レイトン・ベインズのFKのクリアを拾ったのはデマライ・グレイ。トム・デイヴィスとグイェを次々と抜き去ったドリブルにキングパワーのテンションが上がります。中央に持ち込んだ後、右に走ったマフレズへのパスで決まりました。フリーのマフレズが狙い澄まして入れたグラウンダーに飛び込んだのは、ジェイミー・ヴァーディ!豪快なボレーが決まり、スタジアムは歓喜の渦に包まれます。
22分にもレスターはカウンターから決定機を創ります。左からドリブルで疾走するヴァーディ。エースのラストパスを目の前でカットされたマフレズは、すぐさま奪い返して右足でシュート。これはうまく当たらず、ピックフォードの懐に収まります。27分、エヴァートンに初めてのチャンス。ルーニーのスルーパスでアーロン・レノンが右から抜け出しますが、ゴール前に入って決めるべき選手がパサーになっている状況で前線が厚いわけがなく、中央へのボールはカルヴァート・ルーウィンに通りませんでした。
29分、エヴァートンにとって痛恨の2失点めは、絶好調のデマライ・グレイによってもたらされました。U-21イングランド代表が左から蹴ったボールを、U-20ワールドカップ優勝メンバーのジョンジョ・ケニーが痛恨のクリアミス。アタッカーの思惑は、中央にいたヴァーディに触らせようというぐらいだったと思われますが、ケニーが後逸したボールは絶妙な高さに跳ねて、U-21代表の正GKピックフォードを幻惑しました。前半のうちに追いつきたいエヴァートンは、35分にチャンスをつかみます。ボールを奪取した後のマフレズのマルセイユ・ルーレットは余計でした。拾ったミララスが右足を振り抜くと、ボールは右のポストをかすめて外に抜けていきます。1分後、ミララスは今度は左隅を狙ったミドルシュート。コースは絶妙だったものの、シュマイケルが反応してCKです。
2-0となってからのエヴァートンは、パスがつながるようになったものの、いかんせんフィニッシュはミドルシュートばかり。ルーニーは中盤に下がってパスを散らすか、クロスを上げるのが仕事になっており、前線で体を張るのがカルヴァート・ルーウィンひとりでは容易にマークされてしまいます。ハーフタイムにアーロン・レノンとミララスが下がり、バニンギメとニアッセがピッチへ。ゴールへの意識が高かったミララスがいなくなっては、エヴァートンは厳しいでしょう。後半もアウェイチームがボールを支配しているものの、レスターの選手たちのほうが自分たちのサッカーができている手応えを感じていたはずです。最終ラインでの攻防に持ち込ませず、中盤でボールを奪えていたのは、イボーラ、エンディディ、チルウェルがよく走ってエヴァートンのパサーを自由にさせなかったからです。
狙いなきゼロトップと、全員がヴァーディの走路を確認しているチーム。両者の差を端的にいえば、こんな表現になるのではないでしょうか。エヴァートンには、誰がどこに走り込むのか、どこでフィニッシュさせるのかといったプランとイメージがありません。クロスを決めるなら、ニアに走り込む選手、ファーで狙う選手、ニアがつぶれた際に裏でフォローする選手と3人はほしいところ。しかしエヴァートンはニアに誰も走らず、中を閉じておけばシュートを打たれることはありません。弛緩した時間が過ぎていきます。レスターは自陣をケアしながら時間を遣えればOK。58分のグイェのミドルもDFに当たってしまい、エヴァートンは攻め手が見つかりません。
64分にカルヴァート・ルーウィンが右サイドで裏に抜けますが、ニアッセはニアに入ってくれず、ウェズ・モーガンがクリア。74分、ルーニーがシグルズソンに後を譲ると、マフレズが下がって岡崎慎司が登場します。プレスに難があるマフレズを下げて、最もチェイスする選手を入れた効果はてきめんでした。レスターの完勝は、好調だったデマライ・グレイを抜擢し、走るチルウェルに左をまかせたピュエル監督のお手柄です。セインツでは守備的なスタイルを非難された指揮官は、ずっと守っていても文句をいわれないチームと出会い、存外素晴らしい戦績を残すかもしれません。プレミアリーグ18位に留まったエヴァートンは、トーマス・トゥヘルを呼べるのでしょうか。新しいスタジアムを建設し、ビッグクラブへの仲間入りをめざすクラブにふさわしい監督は、一度引退をほのめかした老将サム・アラダイスではないのではないかと思います。両者とも、噂ですが。(デマライ・グレイ 写真著作者/Sven Mandel)
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更新ご苦労様です。
今のエバートンを建て直すのは、ビッグサムが適任かもしれません。選手を揃えていてもずれた歯車を戻すには容易ではないと思うので、経験値のある人が良いと思う次第です。頑張れエバートン!
Mackiさん>
なるほど。「今季をどうにかしよう」とするならありかもしれませんが、長い目で見た時にどうかと思います。アラダイスによって助けられ、アラダイスの後で再び苦しんでいるクリスタル・パレスを見ると、なおさら。
機能していたかどうかは別にして、前半のエヴァートンにはボールと逆サイドのウィングが絞ってきて中央に厚みを持たせるという狙いがあったように思います。
中央でDFを釣る動きがもっとあればもう少しチャンスを作れたような気もしますが、いわゆるCFタイプがいないと難しいですね。
後半はミララスを下げるより、ミララスの後ろのスペースをケアできる選手を入れた方が良かったかもしれませんね。
私も監督は、やってくれるのであれば、1年限定でビック・サムが適任と思います。
今このタイミングで戦略家タイプの監督を招聘するとかえって現場が混乱し、状態がさらに悪化するリスクもありますし、モチベータータイプの方が良いのではないでしょうか。
先日のワトフォードの話じゃないですが、今年は最低限残留、できればボトムハーフ脱出を目標にし、冬と夏に補強・人員整理をしてチームがいい状態で次のビジョンのある監督に引き継いだほうがうまくいきそうな気もします。
経営陣がそこまでの長期的視点を持てるか、そして現場がそれを受け入れられるかがエヴァートン立て直しの肝になってくるように思います。
あとバレスの失敗をアラダイスの責任にするのはさすがに酷だと思いますよ。あれは明らかに次の監督(と経営陣)の失敗ですので
COYSさん>
クリスタル・パレスの失敗をアラダイスのせいにはしていませんよ。アラダイスがやめるとなった後、別なタイプの監督に舵を切ったためにリスクが高まったということです。エヴァートンも、例えば「代打アラダイス、その次はポゼッション重視の監督」などとすると、2年連続で苦い序盤戦となる可能性があるのではないかと思います。