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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

超私的因縁の対決。2018-19シーズン現地観戦記~アーセナルVSマン・ユナイテッド

熱血グーナーがエミレーツからお届けする観戦レポート、第2弾はプレミアリーグでTOP4争いを繰り広げる2チームの直接対決です。FAカップ4回戦、アーセナルVSマンチェスター・ユナイテッド。エメリとスールシャールというフレッシュな監督の激突、アレクシス・サンチェスへのブーイングと話題性抜群の一戦でしたが、現地はどんな雰囲気だったのでしょうか。さっそく、レポートしていただきましょう。

今じゃあんまり大きな声で言えないのですが、プレミアリーグを見始めてまだ日の浅かった頃、マン・ユナイテッドにちょっと好きな選手がいて、実はオールドトラッフォードに行ったとき、記念にと彼のネームを入れたシャツを作ったことがあります。それがスールシャール。当時のユナイテッドの中では抜群に品がよく(他のみなさん失礼)、鋭い中に善良さを感じるキャラクターに好感を持っていました。そんなわけで今回、FAカップのドローでアーセナルとユナイテッドの対戦が決まったとき、こんなに早く強敵と当たることに「なんでやねん!」と思いつつ、スールシャールとの再会にはちょっとだけ浮き立っていたのも事実。それもこれも、本当に負けるつもりがなかったからなのですが…。

せっかくのビッグマッチ、ちょっと早めにスタジアムに向かってみると、いつものガナパブ“The Tollington”はキックオフ1時間半前にすでに人でいっぱい。道中の路肩にはマンチェスターから来たアウェイコーチ(エミレーツまで直行の長距離バス)が並んで雰囲気あります。ナイトゲームなので、お馬さんポリスの胸の電飾もキラキラして何だかカワイイ。そうこうしてスタジアム前に着くと、30人くらいの一団が何やら大声で歌いながらこちらを挑発してきます。アウェイファンがこうして幅を利かしているのもそうよくあることではなく、さすがユナイテッド戦という風情。ユナイテッドサポに漂うこの「負けてない」感には、何となく伝統の厚みや余裕のようなものを感じて、うっかり共感してしまいそうになります。FAカップの試合では、いつものプレミアリーグの試合よりアウェイ席の割り当てがずっと多いので、その分アウェイサポーターが元気ということもあるかもしれません。

ウォームアップの様子を見るため、スタンドにも早めに入ってみました。ピッチへのゲストとしてシルベストル氏がインタビューを受けています。たしかにこの試合なら、ユナイテッド、アーセナルの両方に在籍した彼は適任ですね。そしてピッチに目をやると、あれ?ユナイテッドのキーパー、デヘアじゃないんだ……彼には過去、散々苦しめられているので、いないならそれに越したことはないのですが、なぜかちょっと傷ついたような気持ちになったのは、「デヘア温存で十分」と言われたような気がしたせいでしょうか。あとから聞いた話では、マン・ユナイテッドは「カップ戦はロメロ」と決めているということのようで、まあそれはそれで納得。呼応するように、アーセナルもチェフがスタンバイしています。おそらくこれが、私が目にする最後のチェフになるのでしょう。

 今回の席はノースバンク(テレビ画面左手のゴール裏)側のアッパー席。序盤のアーセナルは押せ押せムードで、とくに高いところから見ているとイウォビとコラシナツで攻め上がる左サイドは迫力満点に感じます。それに比べると右からの展開がほとんどないのが気になっていましたが、後から思えばあれはユナイテッドにガッチリ封じられていたということなんでしょうね。そのアーセナルの右サイド(ユナイテッドの左サイド)ではサンチェスがうるさい動きを見せていましたが、メイトランド=ナイルズが負けずに対応しているのが頼もしく思えました。

ものすごかったのはそのサンチェスへのブーイング。彼がボールを持つたびに、スタジアム自体がうなるようなブーイングが必ず起こり、アーセナルサポのわだかまりの深さを感じさせます。1週間前のアーセナルサポはジルーにあんなに温かい拍手を送っていたのにと思うと、当然のことながら去り方の差は大きいのだと改めて感じずにはいられません。とはいえ個人的に思うのは、このブーイングもまた、一つのリスペクトなのではないかということです。思い出すのは、あまりよくない形でクラブを去ったアレックス・ソングがウエストハムの選手としてエミレーツに戻ってきたときのこと。現地で観戦した試合でしたが、客席からは何のリアクションもなく、こんなに寂しいことはないと思いました。サンチェスへの執拗なまでのブーイングは、執着の裏返しでもあると感じるのです。

個人的には、チームの輪にあまり積極的に加わらなかったことも、お金にこだわるような態度も、あっさり「勝てる」環境を選んだのも、あくまで職人気質なサンチェスのプロフェッショナリズムだと思っています。そして、加入1年目の彼にものすごく助けられ、そのプレーに心躍らされたのも事実。それだけにあのブーイングはちょっと可哀想とも思うのですが、ヒーローだった人にだからこそ浴びせるブーイングもあると理解できるようなその場の雰囲気でした。ユナイテッドの1点目がそのサンチェスの、とてもサンチェスらしいゴール脇での動きから生まれたとき(ホンマになんちゅうゴールや!)、とてもとても悔しく思うとともに、「ああ、このゴールに私たちは何度も助けられた」と思わずにいられなかったことを告白しておきます。

同時に残念ながら、そのサンチェスに抜かれてゴールを奪われたチェフにも、かつての神通力が失われているのを見た思いがしました。引退を発表したのは、彼自身が一番そのことをよくわかっているからなのでしょう。結果的に3点を奪われたことをチェフのせいだとは思いませんが、客席の反応にも、彼との時間がすでに終わりなのだということを受け入れているような、諦めに近い空気を感じました。もちろん、彼がチームを去るときには多くのサポが愛を込めて別れを惜しむでしょう。こういうお別れの仕方もあるのです。

試合のほうは、2点取られてかなり気力がそがれていたものの、前半のうちに1点返したことでスタンドも前向きなムードに。私などはその時点で、「0-2からでもこういうことができるようになったのか」と感動してしまったくらいでしたが(単純)、やはりCBが揃って退場というのは痛かったですね。コシェルニの接触事故は、遠目に何が起こったのかわからなかったのですが、あとで映像で見て真っ青になりました。私が行くと彼によくないことが起こるのか。(彼がアキレス腱を切った昨季のELアトレティコ・マドリー戦にも私は行っていました)遠目には「頭を打ったので大事を取って交替」というようにも見えましたが、顔面の骨折の可能性もあるとかで、早く元気に試合に復帰してくれることを祈るばかりです。

コシェルニの治療が終わってすぐ、エジルとグエンドウジがピッチに入りましたが、おそらくスクランブルだったグエンドウジの交代と違って、エジルのほうはコシェルニの接触前から準備をしていました。そしてこの日もエジルにはみんな大注目。アップをやめてエメリに呼ばれたのに気づいた瞬間、チャントの大合唱が起こりました。思えば彼がプレーするのを見るのは本当に久しぶり……ロンドン滞在中に出場に立ち会えたのは、とても幸せなことでした。結果的には、彼が試合に貢献することはあまりできなかったわけですが、高いところから見ていると改めて、彼の出すパスの鋭さと優しさ、見えている絵の違いを実感します。あのような試合であっても、「ああ仲間をそう使うのか」と思うようなパスがいくつもありました。

試合前のウォームアップでは、なぜかグエンドウジとえらく仲良くしていましたが(正確には、ドウジ君が妙にエジルになついているのをまんざらでもない様子で受けている感じ)、試合中のプレーでも彼ら2人のパス交換が目立ったような。壊れものエジルとコミュ強グエンドウジ。個人的にはちょっと意外な組み合わせですが、これが今後、何かよい形につながってくれるといいなと思います。

それにしても憎たらしいのはスールシャール・ユナイテッドですよ!ポクバはもちろんのことリンガードやらマルシャルやら、モウリーニョ政権下ではくすぶっていた人たちが急にキラキラしちゃって、とくにマルシャルについては采配もずばりという感じで悔しいのなんの。ワンチャンスを逃さない速攻も、それこそスールシャールの現役時代みたいで、いい思い出になりつつあった昔の悔しさがよみがえってきました。そんなわけでスールシャール君よ!これでアンタも我がライフタイムエネミーになった!と決然と思ったものの、朝のBBCのニュースで明るくインタビューに応える彼を見ているとどうも懐柔されちゃうんだよなあ……厄介なライバルが出てきてしまいました……。

最後にちょっとした小ネタを2つ。試合の終盤、コラシナツがラシュフォードに絡んで始まった乱闘騒ぎで(本当に乱闘の多いカードです)、VARによる審議が行われたのですが、その間会場では、ビジョンに「レッドカードかどうかを審議中」という文字が映し出されるのみ。映像はないんですね。そりゃそうかとも思うものの、たしかにこれではVAR反対の声が上がるのもちょっとわからないでもありません。もう一つは、試合が終わって宿に戻るときのできごと。例のTollingtonの脇を歩いていると、Tollingtonにぎっしり入ったアーセナルサポと(っていうか試合終わってすぐなのにすでにここに人がいっぱいってどういうこと?)、アウェイコーチに乗り込むユナイテッドサポーターが道を挟んで歌の応戦をしていました。まあこんなときアーセナルサポが歌えるのは“We won the league in Manchester”という例のチャントしかありません。こんな感じ……ということで動画でお届けいたします。現場からは以上です!(やけっぱち)

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