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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

レスターで英雄、エヴァートンで戦犯…マン・ユナイテッドにあの敏腕FDは是か非か?

ジェイミー・ヴァーディー、リヤド・マフレズ、岡崎慎司、エンゴロ・カンテ。2015-16シーズンのプレミアリーグで奇跡的な優勝を遂げたレスターに、慧眼のスカウトがいたのを覚えている方は少なくないでしょう。スティ-ヴ・ウォルシュ、当時の肩書はフットボールディレクターやスカウト部長ではなく、アシスタントコーチ。ヴァーディーのスプリント、マフレズのドリブルテクニック、岡崎慎司やカンテの運動量をデータで分析し、自らスタジアムに足を運んでプレイを丹念にチェックしたフィクサーが、前年は降格寸前だったチームをプレミアリーグの頂点に引き上げたといっても過言ではないでしょう。このたび、その名前がメディアの見出しを飾ったのは、マンチェスター・ユナイテッドが招聘を検討していると報じられたからです。「デイリー・メール」の記事を追いかけてみましょう。

プレミアリーグのライバルたちに、組織機能で後れをとっているマンチェスター・ユナイテッドは、フットボールディレクターの候補をリストアップしています。エド・ウッドワードCEOのお気に入りは、クラブOBのダレン・フレッチャー。インテリジェンス溢れる35歳のレジェンドは、ファーガソン時代のチーム作りにこだわったりしなければ、クラブを熟知しているというアドバンテージを活かせそうです。これに対して、レスターとエヴァートンでスカウト部門を統率したスティ-ヴ・ウォルシュの是非も論じられているとのこと。彼の抜擢に反対する人々の根拠は、エヴァートンでの大失敗でしょう。

2016年の夏にレスターからトフィーズに「転職」したフットボールディレクターは、関与する時間がなかった初年度の夏はグイェ、ボラシェ、アシュリー・ウィリアムス、カルヴァート=ルーウィンという無難な補強を施しますが、プレミアリーグのビッグ6の一角崩しを目論んだ2年めの大型補強が空回り。前シーズンの冬に獲得したリックマンとシュナイデルランがパッとしなかったのに続いて、クラーセン、サンドロ・ラミレス、ヴラシッチは何もできずにクラブを去ることになりました。

期待通りといえるのはGKのピックフォードのみ。マイケル・キーンとシグルズソンはフィットするのに時間がかかり、クコ・マルティナも機能したとはいえませんでした。「デイリー・メール」は、クーマンとウォルシュの「敗因」について、組織の混乱を挙げています。クラーセンやシグルズソンはクーマンが声をかけ、ウェイン・ルーニーは経営ボード主導。コンセプトなき1億5000万ポンドのビッグディールは、チームの土台を脆くしてしまい、責任を問われたウォルシュはシーズン終了とともにチームを追われました。

マンチェスター・ユナイテッドから来た10番は、プレミアリーグ2ケタゴールを達成したものの、クーマンの早期解任を招いた元凶だったのではないでしょうか。トラップした後の判断が遅く、攻撃のスピードを落としてしまうルーニーによって、シグルズソンやクラーセンは持ち味を殺された感があります。ウォルシュに全体を統括させなかったクラブの過ちか、クーマンのチーム作りを理解できなかったFDの限界か、大規模クラブで働いたことがない敏腕スカウトの経験不足によるものか。失敗の捉え方によって、マンチェスター・ユナイテッドの判断が変わる可能性があります。

私見を述べさせていただけるならば、「外部からの招聘がベター、ただしウォルシュではない」。ウッドワードの意を汲む人選では大きな改革は望めません。。フラットな目線で一石を投じ、過去の栄光を完全に忘れさせてくれる人材が必要なのではないでしょうか。例えば、高額な買い物を嫌ったヴェンゲル監督を諫めるように、ミキとオーバメヤンを連れてきたスヴェン・ミスリンタートのような存在です。クラブOBを連れてくるとしても、スールシャールの先輩格か、他クラブでプレイした経験が豊富な「外様」を登用するほうが、愚行の環を断ち切れるのではないでしょうか。

いずれにしても、新FDの就任は早ければ早いほど効果的です。マンチェスター・ユナイテッドの決断はいかに。リオ・ファーディナンドとフレッチャーといった候補者を見ると、安易な人選という感が拭えないのですが…。「新戦力の獲得交渉がヘタだったCEOは、フットボールディレクターの人選と説得も苦手だった」などといじられることがないよう、適切なプロセスに基づいた納得感のある採用をお願いいたします。

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