偏愛的プレミアリーグ見聞録

「アーセナルは数日以内に、ニコラ・ペペのメディカルチェックを実施」。クラブレコードとなる7200万ポンド（約96億円）のディールが成立寸前という「スカイスポーツ」の記事を見ると、ガナーズが8000万ポンドの一括払いを嫌ったとされる彼の去就が気になります。プレミアリーグNo.1ドリブラー、ウィルフリード・ザハ。クリスタル・パレスのユースチームで育ったロンドン大好きウインガーは、エヴァートンの誘いに乗るのでしょうか。「スカイスポーツ」のトランスファーライブは、マージ―サイドのクラブが5500万ポンド（約73億円）にジェンク・トスンとジェームズ・マッカーシーをセットして口説き落とそうとしていると報じています。

マルコ・シウヴァ監督のエヴァートンが楽しみなチームなのは間違いありませんが、プレミアリーグ12位から8位への移籍がザハの望むステップアップといえるのかが気になります。数日前の「テレグラフ」が、ザハが求める2大条件はチャンピオンズリーグ出場権とロンドンと伝え、「1年後にチェルシー移籍となる可能性がある」と主張しています。この話にウェストロンドンは関係ないのでは？と思った方もいるでしょう。ブルーズには、昨季プレミアリーグ後半戦でクリスタル・パレスにローン移籍したミヒー・バチュアイがいるのがポイント。プレミアリーグ11試合5ゴールという数字を残したストライカーとザハのスワップとなれば、高額の移籍金は必要なくなるというお話です。

理屈はわかります。チェルシーのスカッドを見ると、ペドロやウィリアンは既に30代で、プリシッチとハドソン＝オドイしかいないポジションに強力なサイドアタッカーを加えたくなります。しかし私は、こんなことを思うのです。「1年後にアーセナルもありでは？」。ザハがノースロンドンに行きたがっていたと聞いて、何とか実現に漕ぎ着けられないものかとハラハラしながら成り行きを追っていた者としては、ラブストーリーのハッピーエンドのほうに心が惹かれてしまうのです。

いや、それよりもテンションが上がるのは、「ザハ、オーバメヤン、ニコラ・ペペの超高速3トップ」です。プレミアリーグ得点王と、リーグアン22ゴールの爆走レフティと、リーグNo.1のドリブル成功数を誇るテクニシャンのトリオは、サラー、マネ、フィルミーノに勝るとも劣らない得点力を発揮してくれるのではないかと期待してしまいます。アタッカーの高齢化という観点では、ガナーズもエジルとムヒタリアンが30代です。「5000万ポンド＋ミキ」などという条件なら、昨季プレミアリーグでミキの半分の3ゴールしか決めていないジェンク・トスンよりも呑みやすいのではないでしょうか。

「ガナーズが1年後にザハ獲得」というストーリーを考えるうえで、最大の懸念点となりそうなのは、ここまで積み上げてきた「ツケ」を払わなければならないことでしょう。今季はサンテティエンヌにレンタルとなるウィリアム・サリバの移籍金は後払い、ニコラ・ペペの高額移籍金は分割払い。噂になっているユーヴェCBルガーニが単年レンタルで買い取りオプション付きとなれば、1年後に総額1億ポンドの後払いを抱えるブラックな企業が出来上がります。「CL出れたら返せっから、ここはツケといてくれや！」と威勢よく呑みまくるオッサンが4シーズン連続のELとなったら…。怖い怖い。ここはこれ以上掘るのをやめて、楽しい話に切り替えましょう。

GKレノ、DFベジェリン、ルガーニ、ホールディング、ティアニー、MFグエンドゥジ、ルーカス・トレイラ、イオビ、FWニコラ・ペペ、オーバメヤン、ザハ。最終ラインと中盤の若いタレントたちが続々とブレイクしてくれれば、鮮やかな速攻を武器とする魅力的なチームに仕上がるのではないか…。そんな妄想をしながら、トフィーズのオファーにザハがどう応えるのかを息を詰めて見守るのであります。1年後、「チャンピオンズリーグに出場するロンドンのクラブ」はどちらなのか？あるいは両方？ひとりのウインガーの移籍話から派生する興味は尽きません。