サッカーを観るメガネ~戦術論がわからなくても、ここを観ればさらに楽しい
FAカップ4回戦、トッテナムとリバプールが下位カテゴリーのクラブに足をすくわれ、QPRも惨敗、チェルシーは罰ゲームともいうべき再試合決定。波乱の結末となりましたが、ここから、ある共通項が見えてきます。曰く、「固定化しているスタメンを休ませ、普段使わない若手や控えを出したチームが自滅した」、ということ。マタ、デンバ・バを休ませ、バートランドとマルコ・マリンを使ったチェルシー。アデバヨルをアフリカネーションズカップにとられ、デフォーが負傷してトップがいないのにデンベレを出さずに戦ったトッテナム。コアテス、ボリーニというスタメン出場経験が少ない若手を起用したリヴァプール。パクチソン、ファビオ、ボスロイド、DJキャンベルをいきなり揃えて崩れてしまったQPR。
過密日程、長いシーズンを考えれば、どこかで主力を休ませる必要はあり、それ自体が悪ということではありません。問題は、今回波乱の主役となってしまったチームはすべて、スタメンが固定化しているために、違う選手が出てきたときにチームに綻びが生じやすいということです。こんなことをいうと、「マンチェスター勢は選手層が厚いからそんなことがいえるんじゃない?」と反論をいただきそうですね。もちろん、「選手層=トップレベルの選手の人数」もありますが、むしろ、「選手のユーティリティ、すなわち複数の持ち場をこなせるかと、ポジションの流動性」という要素のほうが大きいのではないでしょうか。
マンチェスター・ユナイテッドは、多くの選手が複数のポジションをこなすことを求められています。香川、ウェルベック、ギグス、フィル・ジョーンズ、スモーリングが中と外、キャリック、フレッチャー、スコールズが前と後ろ。ルーニーは、試合の状況に合わせて真ん中より前すべて。シティも流動性は高く、ダヴィド・シルバは中盤の前めをすべてこなし、ヤヤ・トゥレがセンターMFからトップ下に出てくるのは点が欲しいときのオプションのひとつであり、前線もジェコ、バロテッリ、テベス、アグエロがさまざまな組み合わせで使われています。そう、普段から、選手がいろいろな立ち位置で仕事をしていると、経験値が上がり、誰かを休ませたときに極端なギャップが生まれることがなくなるのです。
これはプレミアリーグの話だけではありません。ここ数年のチャンピオンズ・リーグのチャンピオンは、昨年のチェルシーをのぞいて、ユーティリティプレイヤーが多く、ポジションの流動性が高いクラブでした。マンチェスター・ユナイテッドはもちろん、カンビアッソとサネッティ、キブが中盤から後ろを支えていたインテル、ピケとプジョルを同時に怪我で欠いても「中盤を下げれば済む」と補強をせず、マスチェラーノとブスケツを下げて平然と乗り切るバルサ。リーグを戦いながらカップも欧州も獲りにいく、ということは、「チームに所属する全選手の最大ポテンシャルを日常的に発揮させ続ける」ことに他ならないのでしょう。このあたり、サー・アレックスとモウリーニョ、ベップ・グアルディオラのチームづくり哲学は、共通してますね。
かようにサッカー通であるかのように語っている私ですが、細かい戦術論になると気持ちがついていかず、バイタルエリアだ、ダイアゴナルパスだ、と横文字が並ぶと黙ってしまいます。そこで、戦術がわからなくともサッカーの楽しみを増やす術として、固定化と流動性に着目することをおすすめします。平たくいえば、「誰がどこでプレイしているのか」「誰からどんなパスを出して攻めているのか」という2点を観ること。毎週、こだわって観ているうちに、選手の流動性とチームとしての臨機応変さが高いチームが、いかに安定しており、劣勢をはね返す力があるのかが感じられると思います。
アフリカネーションズカップが終われば、ガナーズ、スパーズ、チェルシーのロンドン勢は、選手のやりくりが少し楽になります。ここからの選手起用のあり方が、最後に笑うクラブを決めるのでしょう。とくに注目は、怪我からの復帰も含め、主力級が戻ってくるアーセナルです。
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初めまして、最近BSで海外サッカーを見るようになった林檎信者といいます。
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