セレッソ時代の恩師・クルピさんに賛同!「香川真司はマンチェスター・ユナイテッドを離れろ」
現在、プレミアリーグではほとんど出番がなく、サブどころかベンチ入りも危なくなっている香川真司。私は、プレミアリーグ開幕から年内にかけては、一貫して「結果さえ出せば監督の信頼は得られるはず。がんばれ」といい続けてきました。しかし現在は、「夏には移籍を」に宗旨替えしているわけですが、ターニングポイントは1月11日のスウォンジー戦です。惜しくもゴールはできなかったものの、この試合で背番号26は今季最高といっていいプレイを見せたにも関わらず、モイーズ監督は次戦のチェルシー戦で香川真司を外し、それ以降まともに起用していません。この状況をみて、「これまでは、いいプレイさえ見せればチャンスはあると思っていたけれど、もはやモイーズは香川を見切ったのだな」と判断しました。
「なぜモイーズは、香川真司を評価しないのか」については、クルピさんが指摘している「フィジカル重視のプレースタイルがシンジと合わない」という問題もさることながら、半分は香川真司自身の問題でもあると思います。よく、香川真司のファンの方が、「前線でいいポジションを取っているのに味方がパスを出してくれない」と、チームメイトのほうに問題があるようなことをおっしゃいますが、今季のプレミアリーグに関していえば、
香川真司はよくない。ゴールを奪えそうなポジションに入れないし、シュートを打つべき状況で打てない。
という評価です。私が考える、マンチェスター・ユナイテッドに加入してからの「香川らしいゴール」といえば、2012年09月29日のトッテナム戦のテクニカルな一発と、2013年5月19日、昨季プレミアリーグ最終戦となったWBA戦のヘディングシュートです。前者は、オフサイドラインぎりぎりにポジションをとってファン・ペルシのパスを呼び込み、完璧な2タッチでDFのさわれないところにボールを置いて左足で流し込んだ美しいゴール。後者は、右サイドでチチャリートが突破したのをみて、ニアサイドのベストポジションに侵入してGKの足元にヘッドを叩きつけた文句なしの得点です。それぞれ、香川真司は「味方がパスを出しやすく、かつ相手にとって嫌なポジション」にいいタイミングで入り込み、ラストパスを引き出しています。ハットトリックを決めたときは、ルーニーのパスセンスのほうが際立ちましたが、この2発は、まさに香川真司のクレバーさとオフザボールの動きの質のよさが凝縮されたゴールでした。
今季の彼は、何回、ゴール前の挑発的なポジションに入ったでしょう。前線に顔を出すときの多くは、ゴールの匂いがしないサイドか、敵が密集していてパスが出しづらいポジションです。フォーメーション、戦術、彼自身のコンディション、メンタルなど問題は複数にまたがって存在しそうですが、誰もパスを出してくれないということより、香川真司自身がボールを呼び込めておらず、シュートが打てないという問題のほうが大きいと思います。少なくとも、昨季よりも動きの質は明らかに悪くなっています。
また、シュートの本数が極端に少ないのは、打てるところに入っていないことに加え、打てる状況で打たないからです。これは、メンタルに問題があるようにみえます。2013年4月17日のプレミアリーグ第29節、ウエストハム戦で、キャリックのパスを受けて一瞬の迷いもなく左足シュートを放ち、ポストに当ててファン・ペルシの同点ゴールにつなげたあの積極性は、今季は一度も見せていません。DFをかわしにいってシュートを打つのは、カウンターのときぐらい。中央でコースが空いても、脇にいる味方にパスを出してチャンスをつぶしたりしています。
かくして、ゴールもアシストもなく、極端にシュートが少ない攻撃的MF・香川真司は、モイーズ監督の信頼を一度も受けることなく、不要という判断を下されるようになりました。これは推測ですが、モイーズが香川を使いづらがっている最大の要因は、「守備の仕方がコースをカットするフォワードのスタイルで、ハードマークができないこと」なのではないかと思います。ただしそれでも、香川真司がゴールを重ねてくれさえすれば、窮地に追い込まれていた新指揮官は、喜んで日本代表のエースをピッチに送り込んだでしょう。結局、原因を辿れば、「アピールの機会に結果がついてきたかどうか」に尽きるのでしょうね。
私も香川真司の大ファンですので、現在の状況をみていると心が痛みます。来季、監督が変わらなければ、ぜひチームを出ていただいて、彼を必要としてくれる監督の元で復活してほしいと思います。そのときになってみないと、どこがいいとはいえませんが、少なくともひとついえるのは、「攻撃の戦術がしっかりしている監督のチーム」です。
この先の出場機会は、マタがチャンピオンズリーグに出場できないことを考えても、多くて3試合でしょう。今の香川真司に望むのは、「ワールドカップで活躍して迎える来季以降のキャリアのために、そして日本代表のために、何としてもコンディションを落とさないでほしい」ということですね。レギュラーを争う選手であれば、試合勘云々は重要な問題ですが、他の選手とレベルが一段違う香川は、調子が悪くなければ不動のレギュラー。であればゲームの経験は、ワールドカップ前のテストマッチで充分でしょう。直前にいい準備ができれば、レギュラーシーズンで試合に出ていなくても活躍できることは、2002年の稲本潤一が証明しています。とにかく、コンディション。そしてあわよくば、今季のプレミアリーグで意地の一発を見せてもらえれば…。
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