モイーズ氏が、マンチェスター・ユナイテッドを去らなければならなくなった最大の理由…私見ですが。
惨敗自体が悲しかったわけではありません。2勝1分け1敗と、プレミアリーグ2013-14シーズンの出足は芳しいものではありませんでしたが、チェルシーとドロー、リヴァプールにアウェイで1点差負けなら「そんなこともあるだろう」というぐらいの結果です。そこで迎えたダービーで惨敗したからといって、プレミアリーグ制覇を諦めなければならないというほどの衝撃はありません。アウェイでうまくいかないことなど、ときどきあります。大事なことは、戦い抜くこと、何らかの形で明日につなげること。しかし、この日のモイーズ監督は、4-0となると、アシュリー・ヤングをクレヴァリーという不可解なカードを1枚切ったきり、俯いて石のように動かなくなってしまいました。当時の観戦記で、私はこう書いています。
選手たちからみたら、「戦わない監督」「ゲームを投げる監督」に見えますよね。ベンチの選手は「なぜ俺を使わないんだ」と思っていたのではないでしょうか。おそらく、既にこの日から崩壊は始まっていたのでしょう。7か月後、マンチェスター・ユナイテッドを解任されたモイーズ氏が、LMA(リーグ監督協会)を通じて発信したメッセージには、サー・アレックス・ファーガソン前監督やスタッフ、サポーターに対しての謝意はありましたが、選手に対してのメッセージはありませんでした。
ミュンヘンでチャンピオンズリーグ敗退を喫した翌日、ウェルベック、クレヴァリー、アシュリー・ヤングが3時まで夜遊びに耽り、監督解任報道の翌日にはルーニー、ラファエウ、フィル・ジョーンズらが何もコメントすることなく、ゴルフを楽しんでいます。ガリー・ネヴィルやロイ・キーンといったマンチェスター・ユナイテッドOBが、今回の解任騒動について「選手たちにも責任がある」「選手も恥じるべき」といった気持ちがわかります。
「監督と選手、どちらに責任があるか」といわれれば、「それぞれ」というのが答えでしょう。しかし少なくとも、選手からの信頼を得られず、指示を出しても動かなくなってしまったチームの監督は、その場を去るしかありません。モイーズ監督解任関連のニュースをつぶさにチェックし、さまざまな事実を確認していくなかで、昨日、AFPの「モイーズが犯した5つの過ち」という記事を読んで、あらためて感じたのは「最大の解任理由は、選手たちの不信感が限界に達しており、チームを出たがっている状況を早期に何とかしなければいけなかったから」なのではないかということでした。
私は、モイーズ氏個人には何のネガティブな気持ちもありません。彼は、いい監督だと思います。ただしそれは、「ストークやクリスタル・パレスを立て直したピューリス監督同様に」という意味であって、マンチェスター・ユナイテッドを率いる器量はなかった、とも思っています。昨季までのエヴァートンは、いいサッカーをしていましたが、これもあくまでも「多いといえない予算をやりくりして、上位に負けても中堅以下から勝ち点を稼いでプレミアリーグ6位前後に食い込める」というぐらいの「いいサッカー」です。一発かわされたらアウトというくらいDFラインが低く、全体が間延びして選手間の距離が遠く、ワンツーひとつ決まらないほど前線の連携がなく、サイド偏重になったり中ばかりになったりするようなコンセプトや一貫性がないサッカーでは、プレミアリーグやチャンピオンズリーグで頂上に立つことはできないでしょう。
モイーズ氏は、自分のスタッフを連れてきて、自分のスタイルでマンチェスター・ユナイテッドを創ろうと考えていたようですが、それは選手たちが納得するレベルのものではなかったのでしょうね。マンチェスター・ユナイテッドの前コーチの、ミューレンステーンさんがモイーズ氏にいったという言葉が象徴的です。
「デヴィッド、失礼かもしれないが言わせてくれ。君はエヴァートンで素晴らしい仕事をしてきたが、自分の操る船がヨットから豪華客船に変わることを理解しているか?」
来季の監督は、欧州で勝てるサッカーを知っており、選手をいま一度モチベートできる方がいいですね。噂になっているファン・ハール氏に若干懸念があるのは、モチベーターとしての資質です。バイエルン・ミュンヘンの選手たちが、「グアルディオラの練習は楽しい」と、目を輝かせているのをみると、なおのこと、ポジティブなムードと信頼関係は大事だなと思います。来季こそは、マンチェスター・ユナイテッドの選手が自信たっぷりにプレイしている姿を観たい。選手と監督が、最後まで戦い抜いているのが伝われば、サポーターは納得するものです。たとえ、マンチェスター・ダービーに大敗したとしても。
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