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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

「アーセナルはタイトルから100万マイル離れている」ガナーズOBが古巣を悲観する理由。

「アーセナルがプレミアリーグのタイトルチャレンジャーになれるか。ペップ・グアルディオラでもやっていても、ないだろう。現時点ではない」「ミケル・アルテタは大好きだ。エメリより優秀だと思う。しかしそれでも、タイトルとは100万マイル離れている。彼らは守れない。守れなければ、タイトルには挑戦できない」。ガナーズのOBであるポール・マーソンさんが、アーセナルがプレミアリーグの優勝を争う可能性はないと断言しました。彼が指摘する最大の問題は、守備力。「守れなければ勝てない。簡単な話だ」といい切る「スカイスポーツ」の評論家は、2015-16シーズンにレスターと優勝を争った古巣が復活をめざす道のりは「slow, slow journey」であり、楽観主義には到底なれないと喝破しています。

アーセナルには、ファン・ダイクの統率力がない。ラポルテの読みがない。マグワイアのハードマークがない。2019-20シーズンの停滞を見ると、評論家の主張に傾きそうになるのですが、しかし、こうもいえるのではないでしょうか。「ひとりの選手が、アーセナルを優勝候補にする可能性はある」。2012-13シーズン、多くの主力が下り坂に差し掛かっていたサー・アレックスのマンチェスター・ユナイテッドは、ファン・ペルシ無双で独走からの逃げ切りに成功しました。2015-16シーズンのレスターが鉄壁の守備に変貌を遂げたのは、エンゴロ・カンテがウェズ・モーガンとフートのCBコンビを守ったからではなかったか。2018-19シーズンの最強マン・シティも、フェルナンジーニョがいるといないとでは別なチームでした。

そして、リヴァプール。それまではTOP4の一角でしかなかったユルゲン・クロップのチームは、ファン・ダイクの加入によって堅守と評されるスカッドに変貌を遂げました。CBを強化した5ヵ月後、レアル・マドリードとのチャンピオンズリーグファイナルでGKの重要性を痛感したドイツ人指揮官とマイケル・エドワーズSDは、アリソン・ベッカーというダメ押しの補強で最終ラインを完成に近づけます。2019-20シーズンは、27勝1分1敗という驚異の勝率で爆走中。直近の2シーズンで2敗しか喫していない世界王者に学ぶなら、カリドゥ・クリバリのようなワールドクラスに投資するのが、外野を黙らせるシンプルな答えなのかもしれません。

古巣を悲観するポール・マーソンさんは、「マンチェスター・ユナイテッドは、プレミアリーグが再開すれば格段によくなると信じている」ともいっています。こちらも理由は明快で、「ブルーノ・フェルナンデスを獲得したから」。ボールをもらう瞬間に必ず前を確認し、空いたスペースや選手に効果的なパスを出し続けるポルトガル代表は、得点力不足で取りこぼしが減らなかったチームをチェルシーやマン・シティに2-0で勝ち切れるレベルに引き上げました。

ガナーズOBが激賞する「チームを変えられるレベルのプレーメイカー」は3人です。ブルーノ・フェルナンデスに加えて、今季プレミアリーグのアシスト王ケヴィン・デブライネと、「3ヤードあるいは4ヤードにおける最高のパサー」ジャック・グリーリッシュ。メスト・エジルに衰えが感じられるアーセナルは、ゲームの展開を1発で変えられる存在も欠いています。ポール・マーソンさんの挑発的な評価を覆すために着手する強化ポイントは、至ってシンプルなのではないでしょうか。

ジェイミー・ヴァーディ、ジェームズ・マディソン、ウィルフリード・エンディディ、ジョニー・エヴァンス、カスパー・シュマイケル。ロベルト・フィルミーノ、ファビーニョ、ファン・ダイク、アリソン・ベッカー。攻守のバランスのよさを武器にプレミアリーグ制覇を争うチームは、中央の軸が強固です。パブロ・マリはラポルテになれるか。トーマス・パーティを獲れば変わるか。ユリアン・ドラクスラーは得点力UPの切り札となるか。マルティネッリはベルカンプの域に達するのか。ポール・マーソンさんの主張に半ば納得しながらも、「100万マイル離れている」という扇情的なもの言いには、軽くツッコミを入れたくなります。たったひとり加わるだけで、あなたの意見は100万マイルほど劇的に変わるかもしれませんよ、と。


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