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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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【Brazil2014】あっという間の4連発。あの6分間、ブラジルに何が起こっていたのか?

1982年からワールドカップを観始め、何回か現地にも足を運びましたが、こんなにひどい開催国、すなわちホームチームを初めて観ました。そしてまた、精神的にこれだけ崩れたブラジルを観たこともありません。1-2で負けたのであれば、ネイマールとチアゴ・シウヴァの不在というエクスキュースで片付いたかもしれません。しかし、スコアは1-7。ブラジルのスタジアムの熱狂を怖れたかのように、5点めを奪った後、自らおとなしくなってしまったドイツがニュートラルにギアをチェンジしなければ、さらにドイツに2~3点入っていてもおかしくないワンサイドゲームでした。

11分のトマス・ミュラーの先制点は、その後のゴールラッシュの予告編でした。CKから中央でフリー、しかも高いボールでなく足元です。ブラジルのDFラインとセンターMFが、ドイツの選手の動きをチェックできていないのが、ここで初めてわかりました。先制されて、いよいよブラジルのパニックが始まります。

いちばんの問題は、ボールを奪った後、縦に大きく蹴り出すことしかできなかったことでしょう。たとえばサイドでボールをキープして、味方のフォローを待つぐらいの時間があれば、前線にいたドイツの選手はハーフラインまで戻ったはずです。しかし、ブラジルはせっかくのマイボールを、ベルナルジやフッキを狙うでもなく、ただ縦に入れてしまいます。あんなに工夫のないダヴィド・ルイスをプレミアリーグで観たことはありません。ドイツは、敵のボールを3秒で奪い返せるわけですから、当然、数人が前線に残ります。一瞬、攻めにギアチェンジしてマークを離したフェルナンジーニョやルイス・グスタフォ、マイコンは、すぐに押し返されてドイツの選手を見きれずパニックに陥り、ドイツの選手は間をすり抜け、常にゴール前で最低2人はフリーになっていました。

23分からの6分間。ドイツの18番、トニ・クロースは、一度もハードなチェックを受けることはありませんでした。ドイツの2点めは、サイドから入ったボールをフェルナンジーニョがインターセプトしにいき、伸ばした右足が届かずトニ・クロースに置いていかれたシーンから始まりました。前線にはサイドから走り込んだトマス・ミュラー、クロース、エジルがいます。ブラジルの選手は、トニ・クロースのパスをミュラーがダイレクトでつないだだけで、クローゼのマークを外してしまいます。これで2-0。その1分後、キックオフ直後のボールを、またもやブラジルは簡単にドイツに渡し、右サイドのラームにパスが出ると、マルセロは奪いにいくでもなく、コースを切るでもなくまったくの無力。グラウンダーのクロスが入ると、視野が狭くなっていたブラジルDF陣は、とにかく守らなきゃとゴール前に集まります。ペナルティエリアの外でチャンスボールを受けたトニ・クロースは当然フリー。強いボールを枠に収めさえすれば、大概のシュートは入ったでしょう。左足ボレーがGKジュリオ・セーザルの右手の先を抜けて3-0。

ブラジルは、冷静さと集中力を欠いています。キックオフから後ろに戻ったボールを受けたフェルナンジーニョは、背後から迫るトニ・クロースに気づかず、周りからのコーチングもありません。ドイツの選手は、ほぼ全員が「おいしい」と思ったでしょう。不用意なトラップをクロースがさらった瞬間、前線に飛び出したのはケディラでしたから。余裕と勝算がないと、守備的なMFはここまで上がらないものです。トニ・クロースは、このときもマークを受けていませんでした。たった2人のショートカウンターが決まり、4-0。

ここまで点差が開いても、ブラジルは「簡単にボールを失うと、前に張りついたままのクローゼ、トマス・ミュラー、エジル、トニ・クロースの餌食になる」という状況に気づきません。29分、この10分で何度も繰り返してきた目的のない縦へのパスを、フンメルスにカットされると、背番号5は何とドリブルで突破。3人かわして前につなぐと、あっという間に3対3の状態。ケディラからエジル、再びケディラと2本のパス交換で完全にブラジルDFを振り切り、5-0。シュートはすべてフリー。うち3本は、易しいインサイド。この間、正しいポジションを取っているブラジルの選手はひとりもいませんでした。

ブラジルの敗因は、主将のチアゴ・シウヴァがいなかったことよりも、控え選手にワールドカップを戦うレベルの選手がいなかったことのように思います。プレミアリーグで活躍する、守備もできるMFオスカルやウィリアンを揃え、一見堅実そうに見えた彼らは、実は11人のチームだったのですね。ネイマールとチアゴ・シウヴァという名の目いっぱい張った金色の薄皮をはがすと、そこには銀も銅もなく、ただ土が緩く広がっていただけでした。リベリーのいないフランスや、ファルカオを欠いたコロンビアにもましてブラジルが脆かったのは、後を継ぐ選手の不在と、23人で戦う準備をできなかった監督フェリッポンのエラーだったと思います。後半、少し持ち直したブラジルが、それでもゴールを割れなかった姿を観て、相手をなめているかのようにプレイできるベテラン、カカやロナウジーニョの顔が脳裏をよぎりました。

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“【Brazil2014】あっという間の4連発。あの6分間、ブラジルに何が起こっていたのか?” への4件のフィードバック

  1. アーセナル より:

    アーセナルみてるようで悲しかったなあ・・・

  2. londres nord より:

    先制点を獲られ、点を獲りに行き、カウンターで失点を繰り返す、昨季終盤のリバプール戦、チェルシー戦におけるアーセナルみたいでした。解説をしてたベンゲルさんも参考になったでしょう。

  3. Uボマー より:

    ブラジルが個に頼ったサッカーするのは昔も変わりませんが、今回はその個の部分が弱く感じました。ドイツは相手チームをよく研究している上に選手の能力も高い。強い訳ですね。決勝はオランダ、アルゼンチンどちらが出ても面白いゲームになりそうです。

  4. makoto より:

    アーセナルさん londres nordさん>
    アーセナルの方が、まだよかったと思います。ブラジルは4連発された時、前がかりにすらなれずに後ろから長いのを蹴っていただけでした。

    Uボマーさん>
    それは私も感じました。チェルシーのサッカーをやろうとしているような人選でしたね。また、DFラインはレギュラーに比べて控えが弱すぎるとも思いました。ドイツとアルゼンチン、楽しみですね。

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