【Brazil2014】ファン・ハールの粋な計らい。感傷的な3位決定戦は、23人全員出場のオランダ完勝!
1点のビハインドを追って、この日スタメンに入ったウィリアン、パウリーニョ、ラミレスのプレミアリーグ勢がオランダの中盤に圧力をかけます。15分までは完全にブラジルペース。オランダゴール前を危険なクロスが何度も横切り、開始早々の失敗を前半のうちに取り返すのではないかという勢いです。
ところが17分、追加点はオランダ!頭数が少ないブラジルDF陣にロッベンがドリブルで仕掛け、右にいたデ・グズマンに流すと、デ・グズマンはゴールラインまでえぐって高いクロス。先に触ったのはブラジルでしたが、こぼれ球の落下点にいたブリントが完全にノーマークです。背番号5は落ち着いてトラップすると、ゴール正面から右足で強烈なシュート!ブラジル、ドイツ戦の再現のような0-2。惨敗の準決勝同様、開催国は冷静さを欠いてマークがずれるシーンが多く、カウンター中心のオランダの攻撃は、高い確率でチャンスになります。ブラジルの反撃はシュートに結びつかず、21分のオスカルのミドルもGKシレッセンに抑えられます。
30分を過ぎ、ブラジルはオスカルがひとり、アグレッシヴに戦っています。中央からドリブルでDFを翻弄するなど、これだけ挑発的な彼はプレミアリーグでも観たことがありません。絶好調オスカルをオランダはファールで止めるほかはなく、何度もいい位置でFKを獲得します。38分、オスカルが自ら蹴った右サイドからのFKは、ニアでルイス・グスタフォがコースを変え、パウリーニョとダヴィド・ルイスが殺到するもののわずかに触れず。前半終了間際の正面からのFKも、オスカルの一撃は壁がブロック。結局、前半は2-0でオランダ。ブラジルは、このまま連敗で自国開催のワールドカップを苦い思い出としてしまうのでしょうか。
後半も、ブラジルが攻めてオランダはカウンター狙いという展開。58分にはオスカル、ラミレスのチェルシーホットラインから左ポスト際にきわどいシュート。62分のダヴィド・ルイスのFKもGKシレッセンの正面。攻めて攻めて、しかしブラジルに歓喜のシーンは訪れません。68分にペナルティエリア内でオスカルとブリントが交錯。微妙なシーンでしたが、ジャッジはオスカルのシミュレーションでイエローカード。ブリントは膝を痛め、ヤンマートと交代します。フェリペ・スコラーリ監督は、73分にラミレスが下げ、フッキ投入。フッキが再三仕掛ける強引な突破はオランダDF陣が体を張ってブロックし、一方的に攻めながらもシュートが枠にいきません。
そしてついに、ブラジルの終わりを告げる3点めが入ったのは、追加タイム5分の表示が出た直後の90分過ぎ。ロッベンのドリブルの脇を走り抜け、フリーでパスを受けて右サイドを破ったヤンマートが、中でノーマークになっていたワイナルドゥムにグラウンダー。ニアにいる選手のマークを外せば、簡単にフィニッシュを決められても仕方がありません。あとは短い時間をやり過ごすだけとなった93分、ファン・ハール監督がこのために取っておいた1枚の交代カードを使い、粋な計らいをみせます。GKシレッセンに代わったフォルムは、オランダの今大会23人め、最後にピッチを踏みしめた選手です。3-0完勝、世界3位、そして全員出場。ファン・ハール軍団は、彼ららしいサッカーとチームワークを世界にアピールして、感傷的なゲームをクリーンシートで終えました。
準決勝の後、ファン・ハール監督が「3位決定戦など不要」と語っていましたが、それは彼らが優勝しか意味がないと考える国だからでしょう。たとえば日韓ワールドカップのトルコVS韓国や、前回のウルグアイのように、世界3位を躍進の集大成と捉える国であれば、大いに盛り上がるのがこの試合です。私は、興業的にも1試合多いほうが収益が上がるということもあり、3位決定戦賛成派ですが、優勝の夢がついえた抜け殻同士の対決には、どうしても悲しさがつきまとってしまうとも思います。ブラジルがこのゲームで世界に印象づけたのは、ストライカーの不在という寂しい事実だけでした。彼らは、準決勝で被った大きな傷跡をさらに広げるような試合しかできず、傷心のまま大会に幕を閉じました。
初戦で前回王者のスペインに5発で圧勝し、最後の試合でコンフェデレーションズカップ覇者の開催国ブラジルに完勝したオランダを、あらためてリスペクトしたいと思います。思い切った若手起用をベースに、サッカーの戦術のおもしろさを表現してくれたファン・ハール軍団は、ドイツに勝るとも劣らない今大会屈指のクオリティでした。
悲願の優勝に手が届かなかったのは残念ですが、どうか胸を張って帰ってください。スペイン戦で今大会のチーム初ゴールを決めたファン・ペルシが、脇目もふらずにファン・ハール監督の元に走っていって、右手で熱いハイタッチをかわした瞬間、若きオランダの躍進を予感したのを昨日のことのように覚えています。そして最後は、GKフォルムがワールドカップのピッチを味わう美しいフィナーレ。最高のチームワークで、持てる力を最大限出し切ったオランダサッカーの素晴らしさを、世界は忘れないでしょう。
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