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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

アーセナルは何が足りなかったのか。ノースロンドンダービーの2失点とノーゴールを振り返る。

ノースロンドンダービーにおけるアーセナルの戦い方を「BBC」に寄稿したスパーズOBは、「ゲームを終わらせた2つめのゴール」と表現しました。2005年にニューカッスルからホワイト・ハート・レーンにやってきたジャーメイン・ジェナス氏は、ジョゼ・モウリーニョが遵守を命じた厳格な約束事を全うするトッテナムの守備と、ミケル・アルテタの複雑な戦術に戸惑い続けるアーセナルの攻撃を天秤にかけて、「45分で2ゴールは無理」と見積もったのでしょう。ポゼッション70%を記録したガナーズのオンターゲットは、ラカゼットのヘッド2発に留まり、セカンドハーフの大半を自陣で過ごしたプレミアリーグ首位チームの堅陣を崩せませんでした。

カウンター2発を喰らったゲームの敗因を探るべく、まずは失点シーンを振り返ってみましょう。10分のソン・フンミンの鮮やかなミドルの「なぜ」を問うなら、直前にアーリークロスをクリアされたベジェリンの動きを追う必要があります。アルデルヴァイレルトが頭に当てたボールを拾ったベルフワインがハリー・ケインにつなぎ、左サイドのソン・フンミンに展開されるまでに3秒ほどの猶予がありました。この間のベジェリンは、ユルゲン・クロップのチームではありえない「ボールウォッチャー」でした。奪われた瞬間に、ソン・フンミンの居場所を確認するべきだったWBは、中途半端にハリー・ケインに寄ってしまったために自らの持ち場を使われてしまったのです。

7番がドリブルで仕掛け、ホールディングが引っ張り出されたとき、ベジェリンには直前のポジショニングミスを挽回する手段が残されていました。ソン・フンミンの進路を塞げばOK。サイドではなくボックス右と、戻る方向はよかったのですが、カバーしようとしたエリアは深すぎました。外からオーバーラップしてきたレギロンを気にしたホールディングが、ソン・フンミンを味方に任せてSBに着こうとすると、時間もスペースも手に入れた7番が得意のコントロールショット。敵がいないエリアをケアしていたベジェリンがスリップした瞬間、ボールはファーのサイドネットに届いていました。

前半終了間際の2点めのカウンターは、ベジェリンのグラウンダーをカットしたセルジュ・オーリエが起点でした。ガナーズの右WBのポジションは、その直前にボール奪取に成功したトーマス・パーティーがカバーしているはずでしたが、復帰初戦のセントラルMFは足を痛めてピッチの外に出ていました。彼がピッチに座り込んでいたら、プレイは止まっていたでしょうか。いや、ロ・チェルソと3人のアタッカーが、4対2という絶好機を手離すはずはありません。実際はソン・フンミンのアシスト&ハリー・ケインのゴールという着地でしたが、右のベルフワインにラストパスが渡っても、結果は変わらなかったでしょう。

今のアーセナルは、2失点よりも1点も返せなかったことのほうが気になります。攻撃については、ジェナス氏のレポートをチェックしてみましょう。オープンプレーからのクロスは24本をクリアされ、8本がシュートにつながっています。ティアニーが10本入れて2本をシュートで終わらせているのに対して、ベジェリンは4本のうち1本。守備時に判断ミスが目立つ右サイドのWBは、ラカゼットのオンターゲット2本を生み出したとはいえ、サイドアタックや速攻における貢献度が高いとはいえません。オーバメヤンが枠を狙ったのはわずか2回。ティアニーのクロスを叩いたヘッドはバーを越え、ボックス左からの一撃はアルデルヴァイレルトにブロックされてしまいました。

ストライカーのシュートチャンスが少ないのは、中盤の選手の攻撃に対する関与度が低いからでもあります。「スカイスポーツ」によると、今季プレミアリーグにおけるアーセナルのチャンスクリエイトは71回。この数字は、最下位に沈むシェフィールド・ユナイテッドを4つ下回る17位です。シュートを10本打っているMFがいない唯一のチームは、ダービーの最後の15分をラカゼットをトップ下に置く4-3-1-2で戦いました。多くのグーナーが、「メスト・エジルが元気なら…」「フセム・アワールを獲得できていれば…」と唇を噛んだのではないでしょうか。

MFのゴールはゼロ、オンターゲットはトーマス・パーティーの2本のみ。チャンスクリエイトはダニ・セバージョスの2回のみで、アシストもダニ・セバージョスがひとつ記録しているだけです。「アルテタは、守備に集中しすぎた」。スタッツを見れば見るほど、ジャーメイン・ジェナス氏の指摘にうなずくしかありません。

トッテナム、リヴァプール、マンチェスター・ユナイテッドのように、ロングフィード1発でカウンターを仕掛けられるチームを志向するのか、チェルシーやマンチェスター・シティのように、獰猛なSBとウインガーがボックス脇を蹂躙するアタックをめざすのか。ファイナルサードに効果的なボールが入らず、ノースロンドンダービーで完敗したチームは、いま一度コンセプトを問い直されています。


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