偏愛的プレミアリーグ見聞録

2023-24シーズンがスタートしてから、アーセナルは4人のレフティが話題になっていました。昨季のチームで絶対的なレギュラーだったガブリエウ・マガリャンイスは、開幕から3戦連続ベンチスタート。アルテタ監督は彼の評価を落としたわけではなく、トーマスを右サイドに配したときは、ベン・ホワイトとサリバを並べたほうが機能するのではないかと考えたのでしょう。

左インサイドに入ったカイ・ハヴェルツと、偽SBのトーマスがうまくはまるかどうか。ジンチェンコが出遅れたこともあり、コンディションがいい選手を起用するより、プランBの確立を優先したのだと思われます。トーマスが鼠径部を負傷し、ジンチェンコが復帰したマンチェスター・ユナイテッド戦は、サリバの脇にガブリエウ。25歳になったCBは、自らの価値を証明しました。

6500万ポンドという高額の移籍金で入団したカイ・ハヴェルツも、メディアやグーナーの注目を集めました。アルテタ監督は、どこで起用するのか。最前線か、4-1-4-1あるいは3-2-4-1のトップ下か、ジャカのポジションか。現在のチョイスは、左インサイド。守備はまずまずですが、マルティネッリとの連携不足とゴールに近づくプレイの少なさが課題となっています。

カイ・ハヴェルツの不振は、2年めを迎えたポルトガルのプレーメイカーにチャンスをもたらしました。3人めのレフティ、ファビオ・ヴィエイラの初戦は、エミレーツにフラムを迎えたロンドンダービー。56分にドイツ代表の後を継いだプレーメイカーは、67分にテテに絡まれPKをゲットすると、72分には完璧なアーリークロスをエンケティアの足元に送りました。

34分の出場で2ゴールを生み出したファビオ・ヴィエイラは、マンチェスター・ユナイテッド戦の101分にも、左サイドからの美しいラストパスでジェズスを独走させています。2試合連続のアシストは、迷えるカイ・ハヴェルツをベンチスタートに落とすきっかけになるかもしれません。多くのグーナーが、彼が先発したらどうなるかを見たがっているのではないでしょうか。

そして最後のレフティは、トラブゾンスポルへの移籍が決まったニコラ・ペペです。2019年の夏に入団したウインガーは、自分を口説いたラウル・サンレヒとウナイ・エメリ監督を3ヵ月で失ってしまいました。アルテタの就任は2019年12月。若き指揮官にとって、最初のフルシーズンだった2020-21シーズンは、ニコラ・ペペが活躍した唯一の年でもありました。

公式戦47試合16ゴール5アシスト、プレミアリーグ29試合10ゴール1アシスト。4月以降は12試合8ゴールと量産モードに入り、8位という不本意なポジションに終わったチームの希望となりました。しかし翌シーズンは、プレミアリーグ20試合1ゴール2アシスト。8節のクリスタル・パレス戦以降は、先発出場ゼロでシーズンを終えています。

直接的な理由は、ブカヨ・サカのブレイク。本質的な理由は、戦術理解度の低さと守備力不足です。居場所がなくなったドリブラーは、2022-23シーズンをニースで過ごし、この夏は移籍先に関するゴシップが飛び交っていました。契約が残り1年だった選手を短期移籍で手離すということは、クラブレコードだった移籍金7200万ポンドの回収を諦めることを意味します。

今季プレミアリーグ初出場のゲームで、レギュラーで出場すべき存在であることを証明したCB。新たなクラブの戦術に戸惑い、持ち味を発揮できないアタッカー。入団2年めで、自分らしいプレイを取り戻しつつあるプレーメイカー。ついにクラブを離れることになったウインガー。明暗分かれる4人のレフティですが、シーズンの終わりに誰が笑うのかはまったくわかりません。