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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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激痛だった年末の停滞…アーセナルの2023-24シーズンを総括!進化、誤算、課題をレポート。

28勝5分5敗で89ポイント。ペップの4連覇を阻止するためには、勝利がひとつ足りませんでした。0-2で屈した33節のアストン・ヴィラ戦が直接的な敗因に見えますが、ウェストハム戦とフラム戦の連敗が致命的でした。11月から1勝4分1敗と崩れたマン・シティを突き放したい時期に、1勝1分3敗と停滞。ライバルの希望をつないでしまいました。

とはいえ4連覇の王者も、最終節の手前のスパーズ戦でソン・フンミンにやられていれば、アウトでした。ぎりぎりの勝負の決着は紙一重。オルテガのビッグセーブを見たペップが腰を抜かすほど追い詰めたアーセナルが、トロフィーにふさわしいチームだったのは間違いありません。あらためて2023-24シーズンを振り返り、前年からの進化と残された課題を整理してみましょう。

終盤の大失速で5ポイント差をつけられた2022-23シーズンから、最も改善を遂げたのはリーグNo.1の堅守です。失点は43から29に激減。キーマンを選ぶなら、フルタイム出場を果たしたウィリアム・サリバ、ハイプレスの持続力が高かったウーデゴーア、豊富な運動量で広いエリアをカバーしたデクラン・ライス、リーグTOPのクロス阻止率12.3%を記録したラヤでしょうか。

ウェストハムの元キャプテンは、前半戦は中盤の底でCBの負担を減らし、カイ・ハヴェルツが最前線にまわった後半は攻撃における貢献度を高めています。プレミアリーグ38試合7ゴール8アシストはキャリアハイ。ハマーズ時代にゴールが少なかったのは、カウンター志向のチームのオーダーであり、ゴールに絡めないというロイ・キーンの批判が的外れであることを証明しました。

2つめの進化は、セットピースにおける得点力の向上です。マン・シティに次ぐ91ゴールを決めているアーセナルは、オープンプレーからの49ゴールは6位で、セットピースからの20ゴールは1位、PK10発はチェルシーに次ぐ2位。オウンゴール5発はリヴァプールと1差の2位で、カウンターから7発はウェストハム、ノッティンガム・フォレスト、ニューカッスルに続く4位です。

ベン・ホワイトのGKいじり、ヘディングの打点が高いCBコンビの活用など、セットピースのスペシャリストであるニコラ・ジョヴァーの指導に加えて、デクラン・ライスとブカヨ・サカのキックの精度の高さも進化したポイントのひとつです。ビッグ6に6勝4敗という素晴らしい戦績は、巧みなセットピースと鋭いカウンターなくして実現しえなかったでしょう。

3つめは、右サイドの連携強化。ボックスの右を突くベン・ホワイトのオーバーラップが威力を増したのは、ウーデゴーアとサカとの意思統一が図られたからです。最終盤に攻撃力を見せつけた冨安健洋がシーズンを通じて元気なら、左サイドのクオリティも高められたのではないでしょうか。ティンバーが復活する来季は、右サイド偏重や個人技頼みになる時間を減らせるはずです。

ここからは、誤算と課題を挙げていきます。激痛だったのは、ジェズスとマルティネッリがトップフォームをキープできず、序盤戦で好調だったファビオ・ヴィエイラがリタイアしてしまったこと。キャプテンが外しまくり、ジャッジにも恵まれなかったヴィラ戦、チャンスを逃し続けたハマーズ戦、低調だったフラム戦…年末に続いた敗戦の原因のひとつは、前線の不振です。

後半戦に入ってからは、トロサールとカイ・ハヴェルツが穴を埋めたものの、そこに至るまでに落としたポイントが命取りとなりました。この時期の負け方をあらためてチェックすると、もうひとつの課題が浮き彫りになってきます。左SBの守備と「有事のガブリエウ」。ポジショニングとデュエルに難があるジンチェンコ、判断が遅れがちなキヴィオルはやはり不安材料でしょう。

普段は安定感があるガブリエウも、余裕を失うとキックミスやボールロストが増えてしまいます。ダブルを喰らったヴィラとの2試合と、12月の連敗を見ると、ガブリエウのクリアミスやポジショニングミスが失点に直結しているのがよくわかります。振るわない選手がいても代役を起用できた前線よりも、ヴィラ戦やハマーズ戦の冨安の不在のほうが痛かったのかもしれません。

冨安が先発した公式戦16試合のうち14試合は1失点以下で、2失点を喫したのは2-3で勝ったノースロンドンダービーとCLのランス戦のみです。次のシーズンは、「左SBにティンバーを配して冨安とサリバがCB」といったオプションが機能すれば、プレミアリーグとチャンピオンズリーグを両方勝ちにいけるのではないかと思われます。

進化と課題をまとめると、「守備とビルドアップの質は高まり、堅守と連携がはまった試合は世界最強レベル。ただしBプランは未だ弱く、交代策や戦術変更で厳しい状況を打開できずに終わる試合がある」といったところでしょうか。ジェズス、ファビオ・ヴィエイラ、トーマス、冨安が常に活躍できれば、相当強くなるはずですが…。来季のさらなる進化に期待しましょう。


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