偏愛的プレミアリーグ見聞録

始まりは2024年1月30日、ノッティンガム・フォレストの本拠地シティ・グラウンドで1-2の勝利。2024年になってから、アーセナルはプレミアリーグのアウェイゲームで無敗を続けています。あらためて戦績をチェックしてみると、「負けなかっただけ」ではありません。プレミアリーグ11試合を10勝1分で、ポイントをロストしたのは5月のマンチェスター・シティ戦のみです。

2月の3試合は圧巻で、ウェストハムに0-6、バーンリー戦は0-5、シェフィールド・ユナイテッドも0-6。カイ・ハヴェルツ、マルティネッリ、サカ、ウーデゴーア、デクラン・ライス、サリバ、ガブリエウ、ベン・ホワイトと8人がゴールをゲットしています。11試合トータルで、31ゴール3失点。9試合がクリーンシートで、リードされている時間がゼロというのも驚異的です。

ノッティンガム・フォレスト戦でアウォニイに決められたのは89分で、4月のノースロンドンダービーの2失点は0-3になってからです。彼らのアウェイでの戦い方は、相手がビッグ6か、それ以外かで分かれます。格下のチームとのゲームでは、前線からの厳しいプレスでパスコースを限定し、主導権を握って攻め立てています。

これぞアウェイのアーセナルと拍手したくなる一戦から、象徴的なスタッツを紹介しましょう。2024年2月11日、ロンドンスタジアムのウェストハム戦。情熱的なグーナーなら、ウーデゴーアとトロサールがお見合いしてしまい、後ろに流れたボールをダイレクトで叩き込んだデクラン・ライスのスーパーショットを覚えているでしょう。

0-6で圧勝したこの試合は、ポゼッションが30％対70％、シュート数は5対25、オンターゲットは1対12。先制はCKからサリバのヘッダーで、サカがPKを決めた後の3点めは、左からのFKをガブリエウが頭で決めています。そう、アーセナルが敵地に乗り込んで勝てる理由のひとつは、セットピースという強力な武器があるからです。

2アシストのウーデゴーアは、パス成功が109本（！）で、チャンスクリエイトは7回。オープンプレーからの3ゴールは、すべて右からのラストパスで決まっています。トロサールのゴールも、「アーセナルのアウェイあるある」。2024年のアウェイ11試合で6ゴールのアタッカ―は、日曜日のマンチェスター・シティ戦のキーマンとして注目したい存在です。

この試合は、ダヴィド・ラヤの数字も特筆すべきでした。ロングフィードがゼロだった守護神は、21本のパスの成功率が100％。GKとしては珍しい数字です。サリバも97％で、ロングフィード5本をすべて通しており、ボールを支配してホームチームを押しつぶした圧勝の原動力となっています。

格下とのゲームではイニシアティブを取るガナーズですが、ビッグ6と対峙すると、4-4-2の堅守がストロングポイントになります。2つのノースロンドンダービーとマンチェスター勢とのアウェイでは、すべてポゼッションが50％以下で、シュート数も下回っています。4試合とも2ケタのシュートを打たれており、トータル56本。勝利につながった5発のうち、3つはセットピースです。

オープンプレーで決めたのは、マン・ユナイテッド戦でカイ・ハヴェルツのグラウンダーをプッシュしたトロサールと、ノースロンドンでカイ・ハヴェルツのサイドチェンジを活かしたサカのファインゴールのみ。相手のレベルが上がると重心が下がり、カウンターに活路を見出すしかない展開が増えてきます。

プレミアリーグではビッグ6に3勝1分ですが、2024年のチャンピオンズリーグのアウェイはノーゴールで勝利なし。今後も強者に対して自陣に引いて迎え撃つ戦い方を選ぶなら、カウンターのクオリティを高めたいところです。明日のマン・シティ戦は、プレスの先陣となるウーデゴーアを欠いており、ハーランドを封じて速攻とセットピースに賭ける展開になりそうです。

強豪クラブとのアウェイゲームについて、よくいえば「堅守とセットピースを活かして無敗続行」。課題を強調するなら「守備的な戦術で主導権を握られながらも、少ないチャンスをものにして何とかポイントゲット」。昨季プレミアリーグで180分無失点のマン・シティ戦は、どんな結末になるのでしょうか。リードされたときの戦い方を見てみたい気もしますが…。