偏愛的プレミアリーグ見聞録

「とても難しい決断だった。アーセナルは、素晴らしい人々と共に働く機会を与えてくれて、クラブの歴史において特別な存在の一部となるチャンスをくれた。これはスペシャルな旅だった。スタン、ジョシュ、ティム、ロード・ハリスに感謝している」

「男子チーム、女子チーム、アカデミーチームの素晴らしい仲間たちと仕事するのが大好きだった。とくにミケル、最高の友人になった。今こそ、新たなチャレンジを追求する時が来た。アーセナルは常に心の中にあり続ける。クラブとサポーターのみなさんに幸あれ。最高の時が訪れることを願っている」

その知らせに触れたのは、「ファブリツィオ・ロマーノのデイリー・ブリーフィング」をふと開いたときでした。火曜日の深夜3時。リヴァプールに関する記事を配信し、プレミアリーグで苦闘するイギリス人の監督たちについて、大方書き上げていました。チャールズ・ワッツの「Edu’s SHOCK exit」という見出しに胸騒ぎを覚えながらも、ゴシップの類だと思い込もうとしました。

夜が明け、「X」のおすすめキーワードを見たとき、覚悟しました。「アーセナル」「電撃退団」といった言葉から連想されるニュースは、他に思い当たりません。「なぜ、今」。ポータルサイトで、思いがけない訃報が目に入ったときのように、そんなひとことしか頭に浮かびませんでした。公式サイトを開くと、既に辞任したという過去形の報告がありました。

アーセナル復活の立役者、エドゥ・ガスパールは、盟友のミケル・アルテタとともに、トロフィーを掲げるのだと信じていました。バルセロナでもマドリードでもミュンヘンでもなく、ノッティンガム。悪名高きエヴァンゲロス・マリナキスは、ガナーズを愛するスポーツディレクターに何を囁いたのか。

ノッティンガム・フォレスト、オリンピアコス・ピレウス、リオ・アヴェの包括的な強化、CEOとして招聘、エミレーツの3倍以上のサラリー。「アスレティック」のエイミー・ローレンス記者や、「CaughtOffside」に寄稿したファレル・キーリング氏が伝える何もかもが、彼がアルテタに別れを告げる理由としてふさわしくないように思えてなりません。

サー・アレックス・ファーガソンの最高のパートナーだったデヴィッド・ギルCEOが、オールド・トラフォードを離れたとき。マイケル・エドワーズがユルゲン・クロップと袂を分かつと決めたとき。寂しさを覚えながらも、これほどの悲しみがなかったのは、彼らが既に頂上の景色を見ていたからでしょう。

経営ボードやスタッフから信頼され、多くの選手たちが心酔したディレクターだったことも、心を揺さぶられた理由のひとつです。マルティネッリを発掘し、ウーデゴーアを口説き落とし、デクラン・ライスの父親と弟を納得させたポジティブで情熱的なトーク。カラフィオーリとミケル・メリノはガナーズ一択となり、クラブ間の交渉が終わるのを何週間も待ち続けました。

ブカヨ・サカ、ウィリアム・サリバ、イーサン・ヌワネリといった野心溢れるヤングスターたちを引き留めたのも、SDのお手柄です。ともに戦った選手たちと肩を寄せて、トロフィーを掲げる姿が見たかった。素晴らしい補強と緻密な戦術で、ペップと戦っていたアルテタを追っていたはずだったのですが、私も彼らのようにエドゥという人間に心酔していたのかもしれません。

ファーガソンは、ギルの後を追うように輝かしいキャリアにピリオドを打ちました。マイケル・エドワーズが残っていれば、クロップの苦悩はあれほどシビアにはならなかったでしょう。ミケル・アルテタは、腹を割って話せる新たな相棒に出会えるのでしょうか。「カリスマ的なコネクター」と評したエイミー・ローレンス記者は、こんな言葉で惜別の記事を結んでいます。

「Edu emerged from that difficult period and put his stamp on things.Now he takes his sweet-talking and he’s out of there（エドゥは困難な時期を乗り越え、自らのスタイルを確立した。そして今、彼は甘いトークを携えて去っていった）」