2025.06.06 アーセナルの話題
ラヤのバックアッパーはケパ?アルテタ監督の理想を追求するアーセナルの補強を見ていて思うこと。

16勝2分1敗で首位を独走、唯一の敗戦は9月のオールド・トラフォード。マルティネッリのゴールが取り消されなければ、無敗で年明けを迎えていたかもしれません。アルテタ就任以来、その戦術に最もフィットしていたストライカーは、カタールで重傷を負うまでのジェズスでしょう。流動性と意外性をもたらす動きと献身的な守備は、入団したばかりとは思えませんでした。
アーセナルの9番に関する議論が始まってから、アレクサンデル・イサクを獲るべきといい続けてきたのは、あの頃のジェズスの残像があるからです。指揮官が求める役割を完璧にこなしながら、ゴールとアシストを量産できるストライカー。すなわち「あのジェズスを超える存在」は、ニューカッスルのエース以外に見当たらないと思えたのです。
2022-23シーズンの残り5試合まで首位を走りながら、サリバと冨安健洋が抜けた穴を埋められずにトロフィーを逃したチームは、最終ラインの層を厚くしつつ、中盤の運動量とフィジカルの強度を高める補強を続けました。2023-24シーズンはダヴィド・ラヤ、デクラン・ライス、ティンバー、カイ・ハヴェルツ。昨シーズンはミケル・メリノとカラフィオーリを加えています。
過去2年の補強は成功だったと評価する一方で、平均身長が上がり、ゴツゴツしたチームになったとも思います。最も低いティンバーでも179cm。彼を除けば、フィールドプレーヤーの4人は全員188cm以上です。負傷したカイ・ハヴェルツの代役としてミケル・メリノが指名されたとき、いつの間に空中戦の強さが重視されるようになったのかと驚きました。
新戦力の獲得によって守備のクオリティが高まると同時に、偽SBによって実現していたパスワークのテンポが落ちる試合が増えた感があります。長身かつ強靭な選手たちが躍動するセットピースからのゴールが増えたチームは、ボックス脇を攻略して決めるシーンが減っています。指揮官が最前線に高さを求めたのは、連動性を失った危機感による窮余の策だったのかもしれません。
前線を動かすキーマンだったウーデゴーアは、「水を運ぶ人」になる時間が長くなり、2023-24シーズンは102回だったチャンスクリエイトが63回に激減しました。2025-26シーズンの戦い方を構築していくうえで、原点回帰も必要なのではないでしょうか。ズビメンディの脇にルイス=スケリーが入り、デクラン・ライスとキャプテンがゴールに近いエリアでプレイする3-2-4-1です。
夏の補強に関する報道を見ていて気になるのは、指揮官とSDの強欲な人選です。ボーンマスのディーン・ハイセンを注視と報じられたときは、「CBをこなせる選手が7人もいるのに、足そうとしてます?」とたじろぎました。シェシュコが最前線のファーストチョイスだとすれば、高さ、スピード、ポスト、プレスをすべて強化できる可能性があると考えているのでしょう。
昨日は、「スカイスポーツ」が「ケパ・アリサバラガの獲得を検討」と伝えています。リリース条項の500万ポンドが格安とはいえ、昨季プレミアリーグでダヴィド・ラヤと僅差のセーブ率73.9%を記録していたGKです。バックアッパーとしてはあまりにも豪華なプランにも、アンドレア・ベルタとアルテタ監督の妥協なきチーム作りの狂気が漂っている感があります。
一方で退団した選手と売却候補を見ると、ティアニー、ジンチェンコ、ジョルジーニョ、スターリング…最も高いジョルジーニョが180cmで、身長が低い順に出そうとしているかのようです。ニコ・ウィリアムズは181cm、レロイ・サネは183cm。どちらかが加わったら、172cmのトロサールは新たなステージを探すことになるのでしょうか。
身長はともかく、「完璧をめざそうとしてゴツゴツ化が進む」ことを懸念しています。筋肉をつけすぎてストレートの球速が落ちたピッチャーや、パンチ力と引き換えにフットワークを失ったボクサーのようになるのは、本意ではないでしょう。その意味では、センスあふれるルイス=スケリーとヌワネリがもたらした多様性は、われわれが思う以上に価値が高いのかもしれません。
プレミアリーグ制覇をめざして得点力を取り戻したいアーセナルは、新たなタレントの獲得だけでなく、既存戦力の活性化も推進する必要があります。ウーデゴーアのゴールに直結する仕事を増やせるか。サカと比べると、ゴールに向かうプレイが少ないマルティネッリを活かせるか。サイドを崩した際の中央の厚みの構築も、改善の余地ありといえるでしょう。
補強の懸念点を挙げたのは、「ひとつの理想に向かって似たようなタイプを揃えると、Bプランが機能しなくなるリスクがある」と感じたからです。あくまでもわかりやすい例ですが、「カイ・ハヴェルツをミケル・メリノに代えて放り込みを続けるより、ジェズス起用で戦い方を変えたほうがいい」といったシーンもあるでしょう。
アルテタ監督が惚れ込んでいるといわれるシェシュコは尊重するとして、もうひとり獲るならサイドのスペシャリストより、前線ならどこでもできるロドリゴのほうが攻撃のバリエーションを増やせるかもしれません。残留に向かっているという記事があり、退団となっても高額の移籍金が気になりますが、2トップなどBプラン、Cプランの可能性が広がりそうです。
シェシュコ、ロドリゴ、ズビメンディ、ケパが加わり、トーマスが残ったら盛り上がります。ロドリゴは174cmで…いや、選手のリストを見ていて「デカくなった!」と思っただけなので、この話を引っ張るのはやめましょう。ティアニーは、もったいなかったですね。精度の高いクロスと鋭いシュートは、いいオプションになったのではないかと、今さらながら思います。
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