偏愛的プレミアリーグ見聞録

昨日、「満身創痍のアーセナル」と書きましたが、チャンピオンズリーグプレーオフ、フェネルバフチェとの第1戦は何と0-3の快勝です。スタメンがまともに組めるのか、ケガ人が戻ってこられたとしても、ちゃんと体を張ったプレイが90分持続できるのかが気になるところでしたが、選手のモチベーションもコンディションも思いのほか高く、この勝利でプレミアリーグでの開幕敗戦ショックを払拭できるのではないでしょうか。

ケガと報道された選手のうち、ロシツキ、ラムジー、サニャがスタメンに入り、目の上を切っていたギブスも傷を埋めた痛々しい顔ながらピッチに姿を見せます。さらに明るい話題は、モンレアルの復帰。スペイン人の本職SBがピッチに戻って来れば、CBに何かあっても、サニャをセンターにコンバートしてDFラインの綻びを最小限にできます。とはいえここまでのお話は、「出られる・出られない」でしかなく、今重要なのは「勝てる・勝てない」です。以前に「厳しい地」と書きましたが、ここは地獄のイスタンブール。過去、数多くのアウェイチームが苦しめられた、熱狂的トルコ人サポーターのお膝元です。アーセナルは無事、チャンピオンズリーグ本戦に駒を進められるのか。実力的には、負ける相手ではないはずですが…。

アーセナルはここでも彼ららしく、「前半低調、後半別世界」でした。フェネルバフチェはコンディションがよくないようで、カイト、ラウル・メイレレス、ウェボを擁しながら、この夜は敵をあわてさせることができない凡庸なチーム。しかし、ガナーズもパスをつなぎながらも、なかなか相手ゴールを割ることができません。前半30分には、またもやアクシデント。ウェボのキックを顔面に喰らったコシールニーがピッチを去ります。プレミアリーグの開幕戦で退場になった守備の要は、次節のフラム戦は出場停止なので大事をとってという判断なのかもしれませんが、33分にジェンキンソンを投入しなくてはならない状況は、ヴェンゲル監督のゲームプランにはなかったでしょう。まだ0-0です。アーセナルは耐えられるのでしょうか。両チームとも、先制点を得ることができないまま、ゲームは後半に入ります。

しかし後半開始からまもなく、アウェイチームに待望のゴールが入ります。立役者は、このゲームで文句なしのマン・オブ・ザ・マッチ、アーロン・ラムジー。テストマッチでも、裏を狙うウォルコットに完璧なスルーパスを供給してましたが、やはり14番とのコンビネーションはここでも完璧。中盤でパスの出しどころを失って仕切りなおしたボールを、裏に潜ろうとするウォルコットを見るや絶品スルーパス！フリーで右を突破したウォルコットは、焦ってシュートを打つことなく、逆サイドから詰めるギブスの姿を確認すると足元に合わせ、ついに先制。このゴールで、形勢は大きくアーセナルに傾きます。

攻め続けるアーセナルの追加点は64分、またもやラムジー。今度は得意のミドルシュートを左隅に強引にねじ込みます。ゲームはここで終わったといっていいでしょう。この日の弱ったフェネルバフチェには、1点を返す力すらありません。先制点の際にウォルコットに裏を取られた左SBカドレツの出来は最悪で、77分にはペナルティエリア内でウォルコットを倒し、PKを献上。これをジルーが簡単に決め、0-3。このダメ押しの一発で、9月からのチャンピオンズリーグへの参戦をほぼ手中にしました。

コシールニーの顔面を蹴ったウェボにはレッドカードが出てもよかったとは思いましたが、それでもプレミアリーグのアストン・ヴィラ戦のようなアンフェアなジャッジに悩まされることなく、終わってみれば順当勝ち。これで、目線をプレミアリーグ一本に向けられます。8月の補強の有無によって、このチームがタイトルを獲れるかどうかは大きく変わりそうですが、チームを前へ前へと動かすエンジン、ロシツキが開幕から健在の今季は、ゲームへの入りが悪いために前半にビハインドを背負うスロースターターぶりさえ克服すれば、今まで以上の結果を期待していいのではないかと思います。まずは週末、フラムに取りこぼさないことですね。引き続き、ひと皮むけたラムジーとウォルコットのプレイに注目です。（アーロン・ラムジー　写真著作者/Ronnie Macdonald）