【CL準決勝・後篇】プレミアリーグ勢が屈したバイエルンに、レアル・マドリードが勝利した理由
残り45分がスタート。両チーム最初のシュートでGKノイアーを脅かしたのは、イスコのパスをもらったクリスティアーノ・ロナウドでしたが、50分を過ぎると前半と同じく、バイエルンのポゼッションで試合は進みます。とはいえ、前半に比べてバイエルン・ミュンヘンに攻撃の鋭さがなく、チャンスは単発のミドルシュートのみ。時間が経つにつれ、次第にレアル・マドリードの時間が増えていきます。後半のレアル・マドリードの狙いはカウンターと右サイド。68分にクリスティアーノ・ロナウドが左隅を狙ったグラウンダーの一発は、ノイアーが必死のセーブ。直後、右に上がったCBペペのクロスも、ダンテがヘッドでクリアし、バイエルン・ミュンヘンは何とか追加点を阻みます。
70分過ぎ、ここまで思惑通りに試合を進めていたレアル・マドリードに痛いアクシデント。CBペペが太ももを押さえて動けなくなり、若いヴァランへのスイッチを強いられます。アンチェロッティ監督は、同時に病み上がりのクリスティアーノ・ロナウドを下げ、いよいよガレス・ベイル登場。守備における運動量を担保しながら、カウンターに特化して追加点を狙う戦術でしょう。66分にラフィーニャをハビ・マルティネスに代えていたグアルディオラ監督は、リベリーをゲッツェ、シュバイニーをトマス・ミュラーにチェンジ。レアル・マドリードの堅いセンター、モドリッチとシャビ・アロンソを数的優位で崩しにかかります。80分、ラームからのパスを中央で受けたトマス・ミュラーが左足シュート。81分、カウンターから左サイドを上がったベイルが強いグラウンダーを中に入れ、CK。両者ともフィニッシュが決まらず、1点差のまま残り時間は10分を切ります。
このまま試合を終わらせようとしていたレアル・マドリードでしたが、84分、初めてのミスからバイエルンに絶好機を創られてしまいます。ロッベンのドリブルを3人で奪ったレアル・マドリード。セーフティにクリアすればいいシーンで、モドリッチが自陣深くから無理につなごうとしてボールを失います。これを拾ったトマス・ミュラーがすかさず中央にパスを入れると、ゲッツェがフリーで強烈なシュート!この最大のピンチをビッグセーブで救ったのは、スペイン代表GKカシージャスでした。バイエルン・ミュンヘンの最後のチャンスは、90分のトマス・ミュラー。マンジュキッチがクロスを競ったこぼれ球に、ゴール前で反転して一瞬フリーになった背番号25でしたが、間一髪で飛び込んだのはシャビ・アロンソです。「PKだ」と騒然となるバイエルンベンチ。しかしVTRを観ると、シャビ・アロンソが先に触っています。最後まで攻めた世界王者。しかしスコアは1-0のまま、ウェブ主審の笛!レアル・マドリードが、プレミアリーグのクラブがなしえなかったホームでの先勝を決めました。
前篇の早いUP時間を見てもらえれば信じていただけると思いますが、私は第1戦はレアル・マドリードが勝つと踏んでおり、その前提で「レアル・マドリードが、プレミアリーグ勢が惨敗したバイエルン・ミュンヘン相手にホームでの第1戦で優位に立てたとしたら、それはなぜか」というテーマ設定をしておりました(自慢したいわけではありません。ただし、レアル・マドリードが優勝したら、昨季のバイエルン・ミュンヘンに続いて2年連続で「本命予想」的中したことをちょっぴり自画自賛させてください・笑)。では、なぜレアルマドリードが勝つと予想したかといえば、「現在のバイエルン・ミュンヘンの極端なポゼッションサッカーに対抗できる材料を、世界一持っているチームだから」です。
つまりは、こういうことです。ベップ・グアルディオラのサッカーに勝つには、大きく分けると2つの方法があります。「ポゼッションで勝るか、カウンターで逆襲するか」。前者は、もはやバルセロナでも難しいでしょう。だとすれば、残るは後者です。グアルディオラスタイルの弱点は、ポゼッションにこだわるがために後ろに大きくスペースが空くことと、DFもパスワークを重視するためにディフェンス力が軽視されること。守備力が高いバトシュトゥバーが欠けても代わりの選手を獲らず、ハビ・マルティネスをCBのオプションに使い、同じく攻守のバランスのいいラームを中盤に上げ、右SBにラフィーニャを入れるのがベップらしさです。
これに対抗するために必要なのは、「受け身にならず、シュートコースを積極的につぶしにいけるDF陣」「中盤から一発で危険なパスが出せる、展開力のあるセンターMF」「個人力でゴールをもぎ取れるスケールの大きいFW」の3点。これを持っているクラブは、残念ながらプレミアリーグには存在せず、欧州に2つしかないと思います。ひとつはパリ・サンジェルマン。そしてもうひとつが、レアル・マドリードでしょう。
この日のペペとセルヒオ・ラモスはパーフェクト。バイエルンからボールを奪い、カウンターのスイッチが発動すると、モドリッチが一発で世界を変える前線へのパスを突き刺してきます。前線には、右も左も頭も世界ナンバーワンクラスのクリスティアーノ・ロナウドと、ヘッド以外は何でもできるカリム・ベンゼマ。これが、グアルディオラのサッカーに勝つための要素です。今日の試合を観て、すごいなと思ったのは、「マルセロとアルベロアがいなくても、コエントラン、カルバハルの両SBがあれだけのカウンターができること」ですね。そういえば、プレミアリーグのSBが、カルバハルのように長い距離を全力疾走するシーンをしばらく見ないなぁ…とぼんやり考えていました。
翻って、プレミアリーグのクラブをみると、いちばん近いのはマンチェスター・シティで、彼らはポゼッションでも一定、対抗できると思われます。しかし、コンパニしかいないCBが弱いのが、彼らの致命的な弱点。アーセナルやマンチェスター・ユナイテッドは、戦術の問題が大きいですね。相手にポゼッションで上回られたときの、セカンドオプションがないアーセナル。少なく見積もっても10メートルはファーガソン時代よりもDFラインが低いのに、意志を持ったカウンターができないマンチェスター・ユナイテッド。言葉は悪いですが、彼らのサッカーは「ウエストハムやノリッジなど、平均的なプレミアリーグのクラブに勝つためのサッカー」になってしまっており、欧州トップに勝つための方法論がありません。
チェルシーは、今季はバイエルン・ミュンヘンやバルサと当たっていないので、未知数ですが、モウリーニョ監督なら何か仕掛けてくるでしょう。それでも現在のレベルでバイエルン・ミュンヘンに対抗するには、アトレティコ・マドリード同様、「ドローに持ち込む負けないサッカーはできても、勝ちにいこうとすると厳しい」と思います。
来季以降、プレミアリーグのクラブが世界一をめざすためには、レアル・マドリードやバイエルン・ミュンヘンが持っているもので、自分たちに足りないものを強化していく必要があると思われます。それは決して、お金をかければいいというものではありません。結果論で「プレミアリーグの選手はスペインやドイツよりレベルが低い」とおっしゃる方もいますが、コンパニやイヴァノヴィッチ、ケーヒル、コシールニーはバイエルンのCBにも引けはとらないでしょうし、ファン・ペルシ、ルーニー、アグエロ、SASはマンジュキッチとリベリー、ロッベンに十分対抗できるでしょう。重要なのは、選手のポテンシャルを引き出して伸ばせる戦略・戦術だと思います。これを考えると、ついつい期待してしまうのが、DFとMFをさらに強化した来季モデルのリヴァプールです。
モドリッチに、現役時代の自分のようなプレイをされて、勝利を持っていかれたグアルディオラは悔しいでしょうね。長くなりましたが、チェルシーVSアトレティコ・マドリードも、バイエルン・ミュンヘンVSレアル・マドリードも、第2戦が楽しみです。チャンピオンズリーグのファイナリストはどっちになるのか。次戦も、がんばってレポートしてまいりますので、よろしくお願いいたします。
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いつも楽しく拝見しています。
今季のスーパーカップでモウリーニョチェルシーとペップバイエルン戦っていますね。シーズン緒戦なのでお互いがチームを作り始めたばかりなので参考にならないかもしれませんが。
最後のワンプレイで追いつかれたチェルシー側の席から応援していたプラハの夜を思い出しました。
UKさん>
そうでしたね。すっかり忘れてました。ありがとうございます。あのときは、モウリーニョはいかにも興味なさそうにしてましたね。現地で観たのですか?
クラブメンバー末端までチケットがまわってきたのでプラハに行ってきました。
シーズン最初と最後が同じ対戦になると面白いですね。2nd Legも楽しみです。
これからも更新楽しみにしています^^