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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

戦ったリヴァプールと、怖れたマンチェスター・シティ~指揮官が生んだ欧州準決勝の明暗

レアル・マドリードにホームでスコアレスドローだったマンチェスター・シティ。敵地でビジャレアルと戦い、追加タイムに痛恨の決勝ゴールを奪われ、1-0でアンフィールドに戻ってきたリヴァプール。欧州で戦うプレミアリーグの2チームに共通していたのは2点。ひとつは、セカンドレグはゴールを奪わなければいけないゲームだったこと。もうひとつは、直前のプレミアリーグを落としてまでも、欧州のセミファイナルに賭けていたことです。マンチェスター・シティのペジェグリーニ監督は、ボニー、ナスリ、イヘアナチョ、デルフを起用してサウサンプトンに4-2と完敗。チリベジャ、オジョ、ブラッド・スミス、スチュワート、ウォードと5人も若手を投入したクロップ監督は、スウォンジーにいいようにやられて3-1で敗れました。

そして迎えた決戦。プレミアリーグで上位をキープして、来季の出場権を得るという実利よりも、欧州戴冠という本物の果実を獲りにいった2つのチームは、好対照の姿を披露。片やはファイナル進出、もう一方は準決勝敗退という結果に終わりました。それぞれの戦い方を振り返り、勝者はなぜ勝ち、敗者には何が足りなかったのかを紐解いてみたいと思います。

2012年4月19日に開催されたチャンピオンズリーグ準決勝、チェルシーとバルセロナのゲームを覚えている方はいらっしゃるでしょうか。この試合は、ディ・マッテオ監督のチェルシーが、本拠地スタンフォード・ブリッジにもかかわらず、最強バルサとまともにぶつかっては勝ち目がないと専守防衛で引きこもった一戦です。0-0と1-0の2通りしか成功は考えられなかったゲームで、チェルシーは思惑通り、前半終了間際にインターセプトに成功したランパードからラミレス、ドログバとつないで決勝点をもぎ取り、1-0と勝利。彼らのこの試合のシュート数は4、枠内は決勝ゴールのみです。翻って、サンティアゴ・ベルナベウでのマンチェスター・シティは、同じ4本で枠内はゼロ。ベタ引きで醜いサッカーと非難されながらも決勝進出という結果を手に入れたチェルシーよりも、ペジェグリーニ監督のチームはひどい数字で終わっていたのです。

ゴールを決められたくないから、フェルナンドをフェルナンジーニョの横に置く。サウサンプトン戦で脆さを見せたコラロフは出せず、守備を安定させられるサニャとクリシー。ダヴィド・シルヴァがいないからヤヤ・トゥレをトップ下に入れる。理詰めで考えれば、ペジェグリーニ監督のスタメンは妥当に見えます。しかし、この日のヤヤ・トゥレは、モチベーションとコンディションのどちらか、あるいは両方に問題があるのがはっきりわかるひどい出来でした。歩く姿ばかりが目立つトップ下を見て、この状態なら試合前に外すジャッジはできたのではないかと思いました。先にゴールを奪えば相手は2点必要となり、先制されても追いつければ決勝にいけるという試合なら、最初の失点を怖れず、勝負を賭けてもよかったのではないでしょうか。始まって数分の間に見られた、速い楔のパスを最前線のアグエロに通す攻撃を、イヘアナチョを横に並べて2つの拠点で徹底していれば、昨季プレミアリーグ得点王のエースが爪痕すら残せず終わることはなかったと思います。

ペジェグリーニ監督は、「コンパニ、ヤヤ・トゥレ、アグエロ、ダヴィド・シルヴァの四天王から、誰かが欠けると目に見えてクオリティが落ちる」チームを改善することができませんでした。いくらヘスス・ナバスやスターリングがスピードがあるといっても、MFやSBのサポートがないまま、ひとりで仕掛けて勝てというのは酷な話です。コンパニのアクシデントは仕方がないとして、ヤヤを代えてゴールを狙いにいくならスターリングより先に最近好調なイヘアナチョ。スターリングを入れるならナンドかジーニョを外して勝負し、デブライネとスターリング、イヘアナチョとヘスス・ナバスと両サイドを2つのユニットのコンビネーションで崩すぐらいの工夫は見せてほしいところでした。ヘスス・ナバスが単独でこじ開けられなかったサイドを、スターリングに同じことをやらせてうまくいくと考えるのは虫がよすぎるでしょう。

指揮官は、0-0か1-0でぎりぎりまで望みをつなぎ、最後にラッシュをかけて…と目論んでいたのでしょうか。80分という長い時間で何もできなかったチームが、秘策なきまま残り10分で何かを起こせるはずがありません。かくして、ほめてあげられるのはジョー・ハートだけという不甲斐ないゲームで、マンチェスター・シティは悲願のチャンピオンズリーグを諦めることになりました。ペジェグリーニ監督は、戦術家としても勝負師としてもモチベーターとしても足りなかったといわざるをえません。レアル・マドリードは、決していい状態ではありませんでした。4年前のチェルシーのリアリティか、今日のリヴァプールの徹底度のいずれかがあれば、違う結果を手に入れられていたかもしれません。

一方、ビジャレアルに勝ったリヴァプールは、最高の試合をしました。こちらは、マンチェスター・シティよりも失点が怖い状況。先に獲られれば3点が必要となり、1-0から追いつかれても2点を積まなければ上にいけません。しかし、ユルゲン・クロップ監督と選手たちは、ドルトムントから奇跡的な勝利をゲットした自分たちを信じていたのか、前線からの強烈なプレッシングと徹底したサイド攻撃を繰り返し、3-0という最高の勝利を手に入れました。マン・シティと相手関係が違うのは重々承知ながら、シュート25本、枠内12本は勝者の数字です。

彼らがいかにコンセプチュアルに戦っていたかを象徴したのは2-0とした直後、65分のシーンです。相手のCKをクリアした瞬間、6人がダッシュした重厚なカウンター。フィルミーノが鮮やかなターンでひとり抜き去って折り返したボールをコウチーニョは打てず、アルベルト・モレノが左足のミドルを右に外すと、クロップ監督は激怒していました。「これは決めろ」といいたかったのでしょうか。こちらの指揮官は、明確に「このメンツでいける。3点めを獲って終わらせる」と考えていました。最初の交代カードは、ララナがとどめを刺した直後です。リードしても守りに入らず、ララナとミルナーが化け物のように走りまくったチームは、アルベルト・モレノの判断力とコロ・トゥレのスピードというアキレス腱を相手に触らせないまま、3-0で幕を下ろしました。「アンフィールドの雰囲気はわれわれにとってもプラス」とうそぶいていたマルセリーノ・ガルシア・トラル監督に、このスタジアムが簡単な場所ではないことを突きつけた快勝。いいサッカーと、いい試合運びが両立した会心の一戦だったと思います。

プレミアリーグでチャンピオンズリーグ出場権圏内から落ちそうなチームと、ヨーロッパリーグ出場権を失うかもしれないチームは、かように明暗が分かれました。今もマンチェスター・シティの敗戦が残念です。結果がついてこないまでも、とにかくチャレンジしてほしかった…。ショックを引きずりそうな負け方でしたが、週末のプレミアリーグはアーセナルとの大一番です。早く気持ちを入れ替えて、今度こそは攻めの姿勢を失わずに勝ち切るしかありません。

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“戦ったリヴァプールと、怖れたマンチェスター・シティ~指揮官が生んだ欧州準決勝の明暗” への5件のフィードバック

  1. グッチ より:

    更新お疲れ様です!昨日とは打って変わってハイテンポな試合を観られ、結果をもぎ取れたことにまずは幸福です。アンフィールドはやはり赤の選手を声で後押しし、恐ろしくアグレッシブに走っていました。
    カップ戦に強いリヴァプール、大いに叫ぶサポーター、選手のみならずその空間を煽り盛り上げるクロップの相乗効果は無限ですね

  2. Davinci より:

    リヴァプールがEL優勝してCL出場権を得た場合、
    プレミア4位のチームはEL行きなのでしょうか?

  3. プレミアリーグ大好き! より:

    CLは5チームまで出れますよ

  4. ヤンガナ大好き より:

    レッズは素晴らしかったですね!アンフィールドの観客と、選手、監督、ベンチが一体となって闘っていました!是非ともヨーロッパリーグを制して、チャンピオンリーグの出場権を手にして欲しいです。

    一方、シティは本当に残念な試合と結果でした。何よりキャプテン コンパニが早々ピッチを去ったことが大きかったと思います。ヤヤトゥレに物申せる彼がいなくなったことでチームにファイティングスピリットが無くなったような気がします。

    ただ、シーズン半ばに来期からペップへの監督交代を宣告された難しい舵取りの中、プレミアで唯一、チームをCLベスト4に導いたペジグリーニさんには拍手を送りたいと思います。また、シティにおけるプレミアでの功績も素晴らしかったです。出来れば来期は別のプレミアチームで思う存分、采配されることを願っています。

    週末のガナーズとの3位の座をかけた大一番は、監督同士、互いのチームスタイルも含めレスペクトしているチームの闘いです!外野の言うこと等一切気にせず、プレミア最後のガチンコ勝負でのベストゲームを期待したいと思います!サポーターが観たいのは熱い熱い闘いです!!

  5. makoto より:

    グッチさん>
    まさに相乗効果でしたね。クロップ監督は、お人柄的にもレッズにぴったりでしょう。

    Davinciさん プレミアリーグ大好き!さん>
    プレミアリーグ大好き!さんのおっしゃるとおり、今季から最大5枠です。スペインが最初の5枠適用国で、バルサ、レアル・マドリード、アトレティコ・マドリード、バレンシアとEL優勝のセビージャでした。

    ヤンガナ大好きさん>
    今季のマン・シティは、試合によって好不調の波というか、気力の差が激しいですね。コンパニがいなくなったのは大きいとは思いつつ、選手たちには「最も勝ちたかった大会じゃないですか!」といいたいです。

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