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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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教訓を活かし切ったユルゲン・クロップ~リヴァプール、CL制覇の軌跡(1)悪戦苦闘のGS

チャンピオンズリーグを初めて制覇した監督は、ビールを片手に試合後のカンファレンスが行われるプレスルームに現れました。「We’ll celebrate together, we’ll have a sensational night(一緒に祝おう。センセーショナルな夜じゃないか)」。プレミアリーグで勝ち点97を積み上げながら2位に終わったユルゲン・クロップは、カップ戦ファイナルで6連敗中でした。

リヴァプールに来てからは、2015-16シーズンのキャピタルワンカップとヨーロッパリーグで敗れ、1年前のCLもレアル・マドリードに1-3で完敗。スパーズを下してビッグイヤーを獲得した後、「The last six times we flew on holiday with only a silver medal it didn’t feel too cool(過去6回は、銀メダルしか持たずにホリデーに向かった。ちっともクールじゃないね)」と不名誉なレコードを笑いに変えた指揮官は、誰よりも激しく勝利を求めていたのだと思います。2年連続となる決勝戦で披露したのは、これまでの教訓をすべて活かし切ってやると宣言するような鬼気迫る采配でした。

今季のチャンピオンズリーグを振り返る前に、1年前の大会を思い起こしてみましょう。プレミアリーグで早々に優勝争いから離脱したリヴァプールは、「勢いと運に恵まれたチャレンジャー」でした。セヴィージャ、マリボル、スパルタク・モスクワというラクなグループを引き当て、無敗でノックアウトラウンドに進出すると、決勝までの3つのホーム&アウェイはすべてファーストレグで3点差以上の勝利を挙げる文句なしの勝ち抜け。守備は不安定ながら、サラー、フィルミーノ、マネという強力な3トップを軸とした攻撃力で勝ち進んだチームは、未だ欧州で勝てるレベルではないことをファイナルで思い知らされます。攻守ともに1枚上手だった、レアル・マドリード。前年王者に不安定なGKと最終ラインを突かれ、失意のうちにキエフを去ることになりました。

「守備が計算できなければ、ビッグタイトルを得られない」という教訓を得たクロップ監督と経営ボードは、アリソン・ベッカーとファビーニョという即戦力を獲得し、勝負のシーズンに臨みました。目標はプレミアリーグのTOP4とCL上位進出ではなく、2つのタイトルを手に入れることです。明らかに強くなったリヴァプールですが、2018-19シーズンのCLは前年と打って変わって試練の連続でした。最初の誤算は、死のグループに入ってしまったこと。パリ・サンジェルマン、ナポリ、ツルベナ・ズベズダと戦ったグループステージは、敗退を意識しながら最後の2試合を戦う薄氷を踏むような勝ち抜けでした。

アンフィールドで戦った緒戦は、追加タイムのフィルミーノの一撃でパリを3-2で振り切る辛勝。ナポリとのアウェイゲームは、スコアレスドローに持ち込めるかと思われた90分にインシーニェに決められてしまいます。前半戦のレッズの課題は、中盤の層の薄さとオプションの脆弱さでした。チェンバレンが長期離脱を余儀なくされ、ララナもコンディションが上がらず、新戦力のシャキリとファビーニョはフィットするのに時間がかかりました。期待のナビ・ケイタも、ライプツィヒ時代のアグレッシブなプレイをコンスタントに披露できず、計算できる選手とはいえませんでした。

ツルベナ・ズベズダとのホームゲームを4-0で勝ったものの、スタリッジとララナを起用したアウェイゲームで0-2と完敗し、レッズは敗退危機に追い込まれます。フィルミーノ、サラー、マネが揃えば無類の強さを発揮するのですが、スタリッジはチームの質を変えてしまう諸刃の剣。この頃のレッズは、ベストメンバーが揃わなければ攻撃のクオリティが落ちてしまい、選手交代で劣勢を打開することができないチームでした。マンチェスター・シティとの一騎打ちとなったプレミアリーグを優先しながらの戦いは依然として苦しく、パリとのアウェイゲームですべての弱点を曝け出します。

直線的な速攻に弱い守備陣。ファン・ダイクがいないサイドを縦に突破されると一気にピンチとなり、ベルナト、ムバッペ、ネイマールを止められませんでした。スコアは2-1ですが、ミルナーのPKしかオンターゲットがなかった完敗。最終節のナポリ戦は、1-0か2点差以上の勝利という条件を突き付けられた緊張感の高い一戦でしたが、ベストメンバーを揃えたクロップ監督のチームは、サラーの1発を守り切って何とか決勝トーナメントに進出しました。

中盤を強化しなければ、マン・シティとプレミアリーグを争いながらCLまで戦えない。前線にオプションがなければ、強豪相手に勝ち切ることはできない。直線的な速いアタックに対応できなければ、大事な試合で失点を喫することになる…。難敵揃いのグループステージで、今のレベルではCLを制覇できないと思い知らされたクロップ監督は、苦闘のなかで得た教訓を後のファイナルですべて活かし切ったのでした。

この稿、長くなりますので「教訓を活かし切ったユルゲン・クロップ~リヴァプール、CL制覇の軌跡(2)ファイナルアンサー」に続きます。

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