2025.05.23 チャンピオンズリーグ2024-25チャンピオンズリーグ
必然に感じられた敗戦。ルーベン・アモリムの限界とマンチェスター・ユナイテッドが失ったもの。

プレミアリーグ16位という最悪のシーズンに学んだことのひとつは、「プレッシャーなき監督はタチが悪い」ということです。1年め、2年めの監督が不振に陥ると、「時間を与える必要がある」とよくいわれます。これを聞くたびにうなずいていたのですが、「結果を出せなければクビになる」という危機感がない監督は、マネジメントも発言も乱暴になるのだと思い知りました。
「われわれはマンチェスター・ユナイテッド史上、最悪のチームなのかもしれない」。1月のブライトンとのホームゲームを1-3で落とした後、ルーベン・アモリムはこう言い放ちました。「変わらなければならないから、あえていっている」と続くのですが、ボスに最悪といわれた選手たちのモチベーションは上がらないでしょう。
地に堕ちたチームを甦らせる救世主のような発言が多かった新監督は、自らが就任したときの状況を冷静に把握していなかったのでしょうか。テン・ハフの下で4勝3分4敗だったマンチェスター・ユナイテッドは、13位という冴えないポジションにいたものの、4位アーセナルとの差は4ポイントしかなかったのです。
シーズンの最中に3-4-2-1の指揮官を招聘し、巻き返しを図るというハードランディングは、FAカップを制した監督を留任させた経営ボードの責任です。なかなか結果が出なかったこと自体を責める気はありません。しかし新監督は、あまりにもネガティブな発言や懲罰的なマネジメントが多すぎました。
ラシュフォードとガルナチョのトレーニングに向き合う姿勢に問題があったとしても、マンチェスターダービーのベンチから外すというショック療法は妥当だったのでしょうか。10番との関係は修復せず、戦力をダウンさせるとともに、移籍金の額を下げてしまいました。負け続けた指揮官が「最悪」と繰り返すたびに、記者の目線は選手たちに向かいます。
「チャンピオンズリーグに出るとなると、予算が必要」「出場できなければ、チームを強化する時間が増える」といった本末転倒なコメントも、現場とサポーターをモヤモヤさせるだけです。ELで敗れた後、「来季もこの監督でいいのか?」という疑念が生じました。ガルナチョを先発から外したのは、準決勝のセカンドレグのミスが理由だったという言葉があったからです。
オールド・トラフォードのビルバオ戦で2ゴールのメイソン・マウントと、調子を上げてきたアマド・ディアロを起用するという判断にケチをつけるつもりはありません。しかしわざわざミス云々といえば、ゴシップが大好物のメディアに書かれるのは当たり前で、「コンディションが良好な選手を優先した」といえばいいだけです。
本人にも「勝負どころで頼む」といっておけば、「今まですべてのラウンドで先発だったのに、今日は20分しかプレイできなかった…理由はわからない」と落胆させずに済んだはずです。20歳のウインガーの言葉は「指揮官に反論」と報道されてしまい、「BBC」も「マンチェスター・ユナイテッドにおける将来に疑問」という見出しを立てています。
ELを制覇できなかったクラブが失ったものを並べてみましょう。欧州制覇というクラブの歴史と栄誉。来季チャンピオンズリーグで手に入る8000万ポンドからの収入。夏の補強予算。CLに出たがっているギョケレス。CL出場を逃したらアディダスに減額される1000万ポンド。サウジから声がかかっているブルーノと傷心のガルナチョやメイヌーは、移籍に傾く可能性があります。
「経営ボードとファンが適任ではないというなら、補償に関する話し合いなどせずに翌日にでも辞任する。しかし私は、辞めるつもりはない。自分の仕事にとても自信がある。仕事のやり方を変えるつもりはない」。いや、フットボールは変えずとも、やり方は見直してください。スパーズに感じられた一体感とコミットメントこそが、今のチームに最も足りないものでしょう。
「戦術に合う選手が足りない」「スケジュールがタイトで強化が進まない」「負傷者が多い」…どんな理由を並べても、今のスカッドでプレミアリーグ16位はあってはならないポジションです。ブライトンの負傷者数や、エヴァートンの補強予算をご確認いただき、持てる戦力を最大限に活かして勝ち続けてください。そう、くれぐれも若手は大事にしてくださいね。(ルーベン・アモリム 写真著作者/Agência Lusa)
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