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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

見えないヴィジョン、約束違反…チェルシーサポーターの激しい抗議にオーナーはどう対応するのか?

そのチャントが聞こえてきたのは3月2日。ジーテック・スタジアムに乗り込んだチェルシーが、先制しながら逆転されて2-2のドローに終わった一戦です。ロマン・アブラモヴィッチとジョゼ・モウリーニョを称えたアウェイサポーターは、返す刀でトッド・ベーリーオーナーとポチェッティーノ監督を罵倒し、今のクラブに対する不満をアピールしました。

「BBC」「テレグラフ」「アスレティック」など、現地メディアが一斉に報じたレターが送られたのは、この試合の6日後です。差出人は、チェルシーのサポーターズ・トラスト(CST)。共同オーナーのトッド・ベーリーとベハダ・エグバリに届いた1500ワードは、「多くのサポーターが、1980年の初頭以来、最低の気分になっている」と書かれた抗議文でした。

CSTが問題として指摘したことを列挙しましょう。「経営ボードに対する信頼の欠如の広がり」「クラブが笑いものにされているという感覚」「チケットの価格に関する約束違反」「サポーターが参加できるメカニズムがないこと」「急速に増えている抗議行動の脅威」。これに対応したのは、サポーターを「カスタマー」と表現して非難されたクリス・ジュラセクCEOです。

「私たちの目標は、みなさんと同じです。チェルシー・フットボール・クラブが輝き、成功する未来が保証されること。そのためには、ライバルクラブと肩を並べ、プレミアリーグと女子スーパーリーグ、国内とヨーロッパのコンペティションで戦えるように収入を増やす必要があります。すでにいくつかの策を講じており、さらに検討するつもりです」

この返信は、火に油を注いだだけでしょう。CSTは、来季からのチケットの値上げにも抗議しているからです。「あなたたちがチェルシーFCを運営することになったとき、すべてのコマーシャルの収入源を使い果たしてから、サポーターの懐に入ってくると聞いた。公約が破られたことに不満と怒りを感じている」。これに対する説明がなければ、「収入を増やす」は着火剤です。

CEOの返信に対して、「回答してくれたことに感謝している」と応じたCSTのマイク・ミーハン会長は、「ただし私たちが提起した問題には触れていない。困難でチャレンジングなこの時期こそ、ファングループを安心させるための幅広いドアが必要だろう。オーナー、経営ボード、チームと監督に感じる断絶に深刻な懸念を抱いている」と不信感を表明しています。

元のレターを読むと、サポーターの不満の根源にあるのは「新オーナーからオフィシャルに発信されるヴィジョンの欠如」です。10億ポンドという莫大な投資の向こうに、何があると考えているのか。2シーズン連続の停滞は想定外だったのか、長期的な成功のための必要悪なのか。経営からの強いメッセージなくして、ともに苦境を乗り越えることはできないといっています。

チェルシーの大型補強は、強化のための策より金策が目立っています。若手シフトはサラリーを抑制するため。7年の長期契約は、単年の減価償却費を下げてPSRのルールをクリアしやすくするため。メイソン・マウントやルイス・ホールなど、ユース上がりの選手を数多く手離したのは、移籍金が存在しないので売った金額がそのまま利益になるからでしょう。

つまり、新戦力にも放出した選手のチョイスにも、益や会計という強化とは別の観点が加わっているように感じられるのです。若手シフトはリスキーで、伸びずに終わる選手もいるので、成功させるには相当な目利きが必要です。マイケル・エドワーズやチキ・ベギリスタイン、エドゥ・ガスパールが常に行ってきた入念なリサーチは、なされているのでしょうか。

2-0から追いつかれたFAカップのレスター戦でも、トッド・ベーリーオーナーに対する激しい非難の声が聞こえていました。ポチェッティーノ監督は「自分がやっていることがわかっていない」と非難され、PKと1対1を外したスターリングは、FKをミスした瞬間、「Get him off! Get him off! Get him off!」と連呼されていました。

「チェルシー・サポーターズトラストは、ピッチ上の結果とは無関係に、サポーターの意見の変化によって取り返しのつかない事態を招きかねないと考えている。現状が改善されなければ、とりわけテレビ中継される試合で、より的を絞ったチャントや、組織的かつあからさまでインパクトのある抗議行動が出現する可能性が高まる」(CSTのレターより抜粋)

ジュラセクCEOの回答に反論したミーハン会長の言葉のなかに、こんなひとことがあります。「We are supporters, not customers」。オーナーとCEOが「スタンフォード・ブリッジは盛況だから、チケットを値上げしたら売上が伸びて利益率が上がる」と考えたのなら、プレミアリーグにおけるサポーターのカルチャーを軽視した報いを受けることになるでしょう。

チェルシーを愛するサポーターたちの叫びは彼らに届くのか。オーナーサイドは、勝っている試合でもブーイングが聞こえるスタジアムに危機感を抱いているのか。PSRの基準をクリアするための最適な赤字解消の策は、コナー・ギャラガー、リース・ジェームズ、レヴィ・コルウィルの売却ですが…。立て直すなら、今です。経営ボードのリアクションに注目しています。


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