2025.07.24 チェルシーの話題
予測不能の大型補強、波乱の世界制覇…ファンタジー満喫のチェルシーサポーターがうらやましい件。

10年前までは、マンチェスター・ユナイテッドを応援しているというと、日本のプロ野球の巨人ファン扱いだったのですが、1980年代の最強はリヴァプールで、われわれは「いわゆる阪神ファン」だったのです。サー・アレックス・ファーガソンの降臨によって勝ち始めた当初は、喜びより戸惑いのほうが強かったと記憶しています。
元来がチャンピオンよりチャレンジャーに肩入れするほうなので、生まれてくるのが20年遅かったら、既に頂点に立っていた「赤い悪魔」には吸い寄せられなかったでしょう。今でも、思います。アブラモヴィッチとジョゼ・モウリーニョの登場から、チェルシーのサポーターになっていたら、ハイテンションなフットボールライフを満喫できたのではないか、と。
ロシアの石油王がオーナーになったのは2003年。1年後、ポルトでビッグイヤーを獲得した新進気鋭の監督を招聘し、リーグ連覇を果たしました。彼らが袂を分かつと、その後しばらくは、日本のフットボールファンの間で「金満」とディスられました。当時はファーガソンとヴェンゲルが正統派で、長期的な視座に立ったチーム作りで勝ち続けるのがカッコいい時代でした。
正直に白状しましょう。あの頃は私も「トロフィーを金で買うのか」と憤り、いわばヒール役のクラブを倒すのが快感でした。彼らを見直したのは、「偏愛的プレミアリーグ見聞録」を始めてからです。アカデミーの整備と、優秀な人材を他クラブに送り込む「ウェストロンドン人材派遣会社」のような取り組みを見て、オーナーの戦略、クラブ愛、本気度に感銘を受けたのです。
2022年のロシアのウクライナ侵攻で、プーチン大統領との密接な関係を非難されたオーナーは、クラブを手離すことになりました。買収したトッド・ベーリーとクリアレイク・キャピタルは、2000年代の金満時代が健気に見える巨額の投資を敢行し、カオスの時代に突入しました。ドレッシングルームに選手が入りきらないなどという話を聞いたら、グーナーは卒倒するでしょう。
近年の大型補強が、アブラモヴィッチの試行錯誤時代のように批判されないのは、長期政権を築いていたクラブの苦戦やバルセロナの赤字化によって「正義」が崩壊したからでしょう。今のチェルシーがビッグネームをかき集めているわけではなく、ビジネスの観点もふまえたコンセプチュアルな補強を進めているのも、「非難ではなく興味」となっている理由なのかもしれません。
「若手シフト」「超長期契約」「サラリーの固定額の抑制」の3点セットで、決算対策と売却時のリスクヘッジをするという考え方は斬新です。とはいえ、オールドファンにしてみれば、「金満」「乱獲」「刹那的」「選手を大事にしていない」ように見えるので、「クビがまわらなくなってチャンピオンシップに落ちてしまえ」と秘かに思っている人もいるでしょう。
それでも私が「生まれ変われるなら、2004年からサポーターになってみたい」と思ったのは、チェルシー推しの目線でこれまでと今を捉えると、楽しいコトだらけだと感じたからです。そもそも、強いですよね。モウリーニョの就任から21年の間に、プレミアリーグ優勝とFAカップ制覇が5回ずつで、リーグカップのチャンピオンは3回。ビッグイヤー、EL、世界一が2回ずつです。
2年連続で大会のファイナルに進出しなかったことがなく、無冠の翌シーズンにトロフィーを獲り逃したのはポチェッティーノの2023-24シーズンのみ。マンチェスター・ユナイテッドやアーセナルより、盛り上がれる瞬間が多いクラブです。監督選びを失敗してコケても引きずらない生命力があり、最近のジェットコースターのようなトランスファーマーケットは極上のエンタメです。
無借金経営時代のマンチェスター・ユナイテッドが誇らしかった私のなかには、「スカッドの一体感を大事にして、長期的な展望をもって若い人材の成長を促すと同時に、適材適所で即戦力を獲得して無敵の集団であり続ける」といった「正しいチーム作り」が潜在的にあるのだと思われます。その固定観念を解き放って、違う感覚で付き合えれば、新たな楽しみが生まれてきそうです。
何というか…「毎年オーディションと総選挙とセンター争いを繰り広げるAKB48的チームビルディング(ロンドンだからLNDで、今どきは46でしょうか)」とドライに捉えれば、リアム・デラップとニコラス・ジャクソンのポジション争いや、マレスカ監督の「2年めなのに不確実性が高いチーム作り」もポジティブに見えてくるのではないでしょうか。
こんなことを考えたのは、「シャビ・シモンズとジョエル・ハトにアプローチ」という獰猛なアクションを伝える記事を読んだからです。FFPで叱られ、PSRも危ういクラブが余剰戦力を売る前に補強するって…!エンクンク、デューズバリー=ホール、トレヴォ・チャロバーはその気になれば売れると自信をもっているのだとすれば、天晴れというしかありません。
オーナーが変わってもマリーナ・グラノフスカヤが去っても、指揮官が入れ替わっても彼らが強者たりえるのは、アカデミーによるタレント育成とリクルーティングのノウハウを引き継いでいるからでしょう。マン・ユナイテッドのサポーターとして培ってきた感覚を、今からスイッチするのは難しいので、「生まれ変わったら」と思った次第であります。
最後に、ひとつだけ。クラブワールドカップ制覇、おめでとうございます。ディ・マッテオとトゥヘルのビッグイヤーは指揮官解任の後釜の快挙で、今回も新任監督が勢いでつかみ取った果実でした。本命じゃないのに欧州や世界を制してしまうのも、チェルシーならではのファンタジー。ELでコケて新戦力獲得に苦労しているクラブのサポーターからすると、「眩しすぎる」のひとことです。
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ケン・ベイツ時代後期からのチェルシーファンですが、毎日の更新、楽しみに見ています。
私だけかもしれませんが、今は長らく愛してきたチームがビジネスの道具に成り下がっていく感じが強く、
羨ましい…と仰られても。。。というのが実感です。
ケン・ベイツ時代は多国籍と言われながら金がなくて、
それでもやりくりしてCLやUEFAカップに出れるのは喜びでした。
でもマッカビ・ハイファあたりに敗れるようなチームでしたが。。。
そこにアブラモビッチが来て一気に強豪になっていく過程はタイトルに飢えた身としては
仰るとおり歓喜という言葉だったと思います。
ただそれでもユースから上がってくる選手はおらず、ファーギーベイブスが羨ましかったのも事実です。
年月は立ち、レジェンドのランプスがユースの選手たちを起用した時は、新たな興奮を覚えました。
チームへの愛が以前より強くなったのを感じました。
ボーリー、エグバリが出てきてからは、愛が深まった分だけ幻滅を味わっています。
「スカッドの一体感を大事にして、長期的な展望をもって若い人材の成長を促すと同時に、適材適所で即戦力を獲得して無敵の集団であり続ける」という感覚は一切ありません。
トゥヘルへのリスペクトのなさ、ユース育ちの選手<外部の選手という扱いの違い、選手年齢層の偏りと長期契約、、、ビジネスの道具としての動きは枚挙に暇がありません。
それでもポチェッティーノがいた時はパーマー、ギャラガー、ペトロヴィッチ、マドゥエケ、コルウィルが
伸びてきてまだ喜びはありましたが、ギャラガー、ペトロヴィッチを評価せず放出したマレスカには
失望感の方が強いです。
マレスカになってから伸びた選手が居ないという感覚もあり、
ギャラガーの放出の経緯とかを見ているとチーム経営陣とマレスカに嫌悪感を感じることもあるくらいです。
(メイソン・マウントの放出まではなんとか我慢しましたが。。。)
当面はチームを愛することができずに横目で応援する感じなんだろうな…という変な寂しさという方が率直な感想ですね。