イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

30歳まで無冠のハリー・ケインと19歳のメイヌー。それぞれの「ユーロで決勝ゴール」を妄想すると…!

イングランドの人々が、あるいはマンチェスター・ユナイテッドのサポーターたちがデヴィッド・ベッカムを思い出すとき、美しいFKの弾道が脳裏をよぎるでしょう。スティーヴン・ジェラードは、ミランとのCLファイナルの絶妙なヘッダーか、ハマーズとのFAカップ決勝でダイレクトで叩き込んだロングシュートか。彼らの忘れえぬ瞬間は、栄光とともに記憶に残されています。

マイケル・オーウェンといえば、1998年のワールドカップフランス大会でアルゼンチンの最終ラインを切り裂いたファインゴール。ウェイン・ルーニーが2010-11シーズンのマンチェスターダービーで決めたバイシクルを、今でもプレミアリーグ史上最高のスーパーショットという人もいるでしょう。では、ハリー・ケインは?

「ケインのキャリアで不思議なのは、そんな瞬間が存在しないことだ。ワールドクラスのストライカーとして10年近くを過ごし、クラブと国の両方で頂点に立った今も、彼は特別な記憶やイメージより、数字によって定義される選手である」(「Harry Kane seeks his defining moment to secure a place in England’s national psyche」ジャック・ピット・ブルック/アスレティック)

彼ほど輝かしい記録を数多く携えるイングランド人は、存在しないでしょう。プレミアリーグ320試合で積み上げた213ゴールは歴代2位。バイエルンに移籍していなければ、2024-25シーズンはアラン・シアラーを抜き去るためのステージだったかもしれません。プレミアリーグ得点王3回、アシスト王1回。2020-21シーズンの得点王とアシスト王のダブルは、史上初の快挙でした。

イングランド代表における66ゴールは、ルーニーの53を大きく引き離すNo.1。ユーロ2024で得点王になれば、ワールドカップとユーロで大会最多ゴールを記録した唯一のイングランド人になります。大舞台にも強く、ワールドカップとユーロのノックアウトステージでゲットした9ゴールは、キリアン・ムバッペら4人を上回る現役最多の数字です。

2023-24シーズンはブンデスリーガ32試合36ゴール、公式戦45試合44ゴールで、自身初となる欧州のゴールデンブーツ。これほどの選手に記憶に残るゴールがないのは、タイトルに縁がなかったからでしょう。トッテナムでは、プレミアリーグ2位とCL準優勝が1回、リーグカップ準優勝が2回。リーグ戦11連覇だったバイエルンに移籍したのに、無冠どころか2位すらないとは…!

ユーロでも前回決勝のイタリア戦で敗れ、クラブと代表で2位は通算5回。このままでは、ハリー・ケインの最も記憶に残るシーンは、ワールドカップカタール大会のフランス戦で打ち上げた無念のPKになってしまいそうです。明日のユーロ2024ファイナルは、チームメイトと喜びを分かち合えなかったストライカーが、国民の記憶に自らの像を残す絶好のチャンスです。

たとえば1-0で勝ち、唯一のゴールが9番ならOKでしょうか。いや、空いているエリアを当然のように見つけ出し、フリーでドスンとやっても「殊勲のハリー・ケインは通算67ゴール」と数字で語られてしまいそうです。ここは2発、3発と積み上げ「ジョフ・ハーストのハットトリック」路線でいくか、ベリンガムやルーニーのようなスーパーショットを決めるしかないでしょう。

欧州戴冠となれば、もうひとり、脚光を浴びそうな選手がいます。19歳のコビー・メイヌー。2023-24シーズンは負傷で出遅れ、昨年11月のエヴァートン戦が通算2試合めのプレミアリーグ出場でした。代表デビューは2024年3月。ブラジル、ベルギー、アイスランドとのフレンドリーマッチで179分プレイしただけで、1分2敗と勝利なきまま、本番のメンバーに抜擢されました。

開幕からの2戦でアーノルドが活躍していれば、メイヌーはユーロのピッチの感触を確認しただけで終わっていたでしょう。彼の不振により、チャンスが巡ってきました。スロヴェニア戦で先発したコナー・ギャラガーが機能せず、ハーフタイムにピッチに送り出されると、チェルシーのキャプテンの2倍に迫る33本のパスを通し、ノックアウトラウンドでレギュラーに定着しました。

オランダ戦の前半は、イングランドが今大会で唯一、強さを感じさせた時間といっていいでしょう。メイヌーの攻め上がりは、右サイドが活性化した要因のひとつです。フォーデンへの素晴らしいスルーパス、2本のロングフィード、インターセプト2回、デュエル3戦全勝。スペイン戦のメンバーにも、彼の名前があるはずです。

たとえば1-0で勝ち、唯一のゴールが26番なら…!それがどんなプロセスでも、泥くさい決まり方でも、「4ヵ月前に代表デビューを果たしたばかりの19歳のシンデレラストーリー」というインパクトとともに、母国のファンの記憶に残るのではないでしょうか。そして10数年度、彼がスパイクを脱ぐとき、こんなふうに語られるかもしれません。

「コビー・メイヌーのベストゴールは、ペップ率いるマンチェスター・シティを倒したFAカップ決勝の美しいフィニッシュか、あるいはユーロ2024を制した忘れえぬ1発か」

悲願のタイトルにリーチをかけた30歳のストライカーと、20歳になる前にFAカップを制したセントラルMFは、まったく違う思いを胸に秘めているはずです。彼らは勝てるのか。記憶に残るパフォーマンスを見せられるのか。穏健派で八方美人のプレミアリーグマニアとしては、ヤングスターのシンデレラストーリーと初優勝を遂げたストライカーのバロンドールの両立を願うばかりであります。


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