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2016.06.13 ユーロ2016

【ユーロ2016】イングランドにはできなかった「正しいゲームの畳み方」で苦戦のドイツが勝利!

ウェストハムのスラヴェン・ビリッチ監督が「特に強いとは思わない。予選を通じて説得力がなかった。プラン通りに動くだけで、悪いときのバイエルン・ミュンヘンのようだ。彼らの守備は不安定で、シュヴァインシュタイガーら数人は、いい状態ではない。サプライズがあるかもね」と警告したドイツ代表は、誰もが納得するパフォーマンスを見せられるでしょうか。プレミアリーグファンとしては、メスト・エジルやシュヴァインシュタイガーを観たいという気分に加えて、リヴァプール移籍の噂があるヨナス・ヘクターやマリオ・ゲッツェのプレイも「視察」したいところです。絶対的守護神ノイアーの前には、ヘヴェデス、ボアテング、ムスタフィ、ヘクターの4人。トニ・クロースとケディラの2センターに、ドラクスラー、エジル、トマス・ミュラーが2列め。最前線にいるのはゲッツェです。フランスやイングランドが苦戦するなか、ドイツの初戦も簡単なゲームではないことは、始まって10分もしないうちに明らかになります。

ゲッツェが中に斬り込みシュートしたこぼれ球を、ドラクスラーが左足で狙ったドイツが立ち上がりは攻勢。ところが5分、最初の決定機はウクライナでした。右からの速いグラウンダーに、コノプリャンカが走り込んでボレー。タイミングはぴったりでしたが、コースがやや甘く、ノイアーが余裕をもって左に弾きます。これを合図に、ドイツに火が着きました。ゲッツェとドラクスラーを中心にサイドを攻め立てるドイツのチャンスは12分。左からドラクスラーが丁寧に上げたクロスをトマス・ミュラーが頭で折り返すと、フリーだったヘクターのボレーはミートしません。しかし、そのまま押し続けたドイツは、19分にあっさり先制します。右サイドからのFK、キッカーはトニ・クロース。ファーへのボールは、相手は触れずムスタフィがヘッドで叩ける絶妙な弾道でした。左隅に突き刺さったシュートは、GKピアトフに打つ手なし。リードしたドイツがペースをつかむと思いきや、ここからウクライナの直線的な攻撃がピッチを支配します。

27分、右からのCKがカチュリディの頭にぴったり合い、同点かと腰が浮きましたが、さすがはノイアー!至近距離からの一撃を上に弾き出したビッグセーブでドイツは救われました。2分後、自陣からトニ・クロースがロングフィード。最前線にいたゲッツェの裏から飛び出し、GKと1対1に持ち込んだのはケディラ。左足のシュートは速度は申し分なかったものの、ピアトフが触りやすいコースにいってしまい、追加点はなりません。ウクライナのCKは脅威で、30分にもクリアをシェフチュクに叩かれ、鋭い球足のシュートが左ポストの脇を抜けていきます。

すると37分、ウクライナが最大の決定機を迎えます。左からのサイドチェンジを受けたヤルモレンコが、切り返してファーの裏に浮かすと、フリーで走り込んだコノプリャンカの一撃はボアテングに当たって無人のゴールへ。ドイツサポーターが半ば諦めたであろう大ピンチは、ボアテングが驚異的な身体能力で戻りながら足を出してクリア。ゴールラインテクノロジーが入っているのはわかっていたウクライナ攻撃陣が、ラインを越えたと主張したのは、目の前で起こったことを信じられなかったからでしょう。この後も、効果的な攻撃を展開していたのはウクライナのほうでした。ヘヴェデスのサイドをコノプリャンカに蹂躙された世界王者は、自分たちのペースに持ち込めません。前半は1-0ながら、次のゴールがどちらに入るかまったくわからないゲーム。ドイツはサイドの守り方を修正しないといけません。

48分、後半最初のシュートは左45度からのドラクスラー。強烈な一撃でしたが、コースを読んで左に飛んだピアトフは落ち着いています。51分のトニ・クロースのミドルはバーの上。エジルは前を向かせてもらえず、プレミアリーグで見せる前線への鋭いパスは封じられています。56分、距離があったラキツキのFKが鋭くニアを襲い、ノイアーがぎりぎりでセーブ。61分にはケディラのロングシュートが枠を捉え、GKが交互に攻守を見せる一進一退の攻防が続きます。

67分、フォメンコ監督はゾズリャに代えてセレスニフ。前線に厚みを築いて点を奪いにいきます。直後、右からのクロスをヘッドで叩いたのはドラクスラー。勢いがつき過ぎて打ち上げてしまったものの、チーム全体がウクライナの粘り強い守備に手を焼くなか、いちばんコンディションがよさそうなのは笑顔を見せる11番です。74分にコヴァレンコに代わったジンチェンコは19歳。期待のトップ下は、ゴールに迫ることができるでしょうか。75分、カウンターからゲッツェの落としを狙ったトマス・ミュラーの右足ダイレクトも、ピアトフが冷静にさばきます。

守備が緩くなったドラクスラーに代わってシュールレが登場したのは78分。4分後、左から上がったゲッツェのパスを受けたシュールレは、フリーのチャンスにシュートがうまく当たらず、右に外してしまいます。83分、縦パスに抜け出しかけたシュールレはピアトフに先着され、87分にGKと1対1になったエジルは、やはりピアトフに角度を狭められて右足のシュートをキャッチされてしまいます。ムスタファのバックパスがノイアーの頭上を越えてしまう危ないシーンはあったものの、ドイツの守備陣は落ち着いており、ウクライナには苦しいミドルしか反撃の手段がありません。

ゲッツェをシュヴァインシュタイガーという2枚めのカードは「このまま終わるぞ」というメッセージでしたが、イングランドがロシアに追いつかれた92分に、ドイツはウクライナを突き放しました。ヒーローは、入ったばかりのバスティです。5対3のカウンター。左から縦に抜けたのはメスト・エジル。ファーサイドから上がってきた背番号7に、プレミアリーグのアシスト王が気づかないわけがありません。クロスもボレーも完璧、2-0!最後はプレミアリーグコンビでダメ押しを決めたドイツが、イングランドにはできなかった「正しいゲームの畳み方」で、苦しいゲームをものにしました。

再三のチャンスを活かせず、相手の守備陣を崩してゴールを陥れることなく、セットプレーからの1-0で最終盤を迎えたのは昨日のイングランドと同じ。大きく違ったのは、守備に不安があった選手から的確に代えていった指揮官の采配、クロスを上げさせないことを徹底した守り方、そしてCBとGKのクオリティでしょう。長短のキックをすべて味方につなげてくれたノイアーに、フィールドプレイヤーはずいぶん助けられました。ボアテングとムスタフィは危険なエリアを必ずカバーしており、ロシアより明らかに強かったウクライナにイーブンの勝負をさせませんでした。最後のゴールは、ウクライナがリスクを取ったために決められたプラスアルファではありましたが、そこに至ったのは、中盤がプレスをさぼらず、サイドの選手はしっかり相手との距離を詰め、CBがポジションを間違えない徹底した守備があったからだと思います。苦しみながらも、ビリッチさんの言葉に抗議するかのような見事な勝利。やはりドイツは優勝候補です。(メスト・エジル 写真著作者/Steindy)

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“【ユーロ2016】イングランドにはできなかった「正しいゲームの畳み方」で苦戦のドイツが勝利!” への2件のフィードバック

  1. Gööner より:

    ムスタフィはフンメルスの代役の代役なのに先制点を決めてしまうというドイツの層の厚さにも驚かされました。
    緊張感がある初戦の入り方としてはお手本のような手堅い試合運びだったと思います。

  2. makoto より:

    Göönerさん>
    そうでしたね。早い時間にゴールを奪えたからこそではありましたが、パスコースを塞ぐ、ゴール前でスペースを空けないなど、徹底度の高さでなした勝利だったと思います。

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