【ユーロ2016】工夫がなかったベルギーは、イタリアの堅守と巧みな試合運びに完敗!
10分、ヴィツェルが上げたクロスからルカク、フェライニとつながりナインゴランが放ったミドルは、ブッフォンが確実にセーブ。クロスを急ぐベルギーの攻撃が単調になりがちなのに対して、縦への楔をことごとく通して、そこからジャッケリーニ、カンドレーヴァ、ダルミアンに展開するイタリアの攻撃は迫力があります。ベルギーの両SB、シマンとフェルトンゲンがアザールやデブライネを追い抜くシーンはなく、サイドで持っても孤立しがちなベルギーは、22分にナインゴランが2つめのミドルを放つも左にアウト。ラインの統率がとれ、パスコ―スを切るのがうまいイタリア守備陣を崩すには、サイドに数を足し、ルカクやフェライニがスペースを作る動きが必要でしょう。プレミアリーグでは精彩を欠いていた左サイドのダルミアンとジャッケリーニがうまくデブライネを封じており、アザールがいい形で前を向くシーンはほとんどありません。
29分、サウサンプトンのグラツィアーノ・ペッレが左45度からシュート。その3分後、エデルとペッレが引いた脇から最終ラインの裏に走ったジャッケリーニに、ボヌッチが完璧なロングボールを通しました。昨季プレミアリーグでトッテナムの堅守を支えたアルデルヴァイレルトが、背後で簡単にGKと1対1を許すのを観たことがありません。ジャッケリーニは対峙したクルトワの脇を落ち着いて抜き、イタリア先制。36分には、クロスのクリアが高く浮いたところをパローロがヘッドで流し、最後はペッレが得意のヘディングシュート。左隅を意識しすぎてボールはポストの脇に逸れましたが、これも決定的なシーンでした。
崩せないベルギーにはミドルしかなく、39分のヴィツェルの右足は左に外れます。41分、ようやくベルギーにいい攻撃が見られました。引いてきたルカクがポストになってフェライニに落とすと、右サイドから流れてきたデブライネに縦パス。左足のシュートは、しっかりついてきたジャッケリーニにブロックされるものの、流動性のある攻撃ができれば、なかなかフリーにさせてくれないイタリアの堅守を揺さぶることができるでしょう。それにしても、厳しい1-0です。単調なベルギー、巧みなイタリア。ヴィルモッツ監督のチームが、残り45分でこのビハインドをひっくり返すイメージは持てません。
53分、ペッレのパスからカンドレーヴァが右サイドを突破したチャンスは、フェルトンゲンが必死に戻ってクロスをブロック。ベルギー最大の決定機は、この直後にダルミアンのミスパスを拾ったカウンターでした。右のデブライネが、中でフリーになったルカクに出したラストパスは完璧。ブッフォンと1対1になったルカクが右隅を狙ったループシュートはクロスバーを越えてしまい、エヴァートンのエースは天を仰ぎます。イタリアの反撃は、カンドレーヴァのクロスに合わせたペッレのヘッド。これはクルトワが右に飛んで弾き、1-0のスコアは変わりません。
ナインゴランが下がり、メルテンスが入ったのは62分。ルカクのまわりをアザールとデブライネが自由に動くようになったベルギーは、今度は強引な中央突破が増え、シュートが打てない状況は変わりません。ルカクがオリギに後を譲ったのは、73分。エデルがイエローカードをもらったイタリアは、すかさずインモービレにスイッチし、ヴィルモッツ監督はシマンをヤニック・カラスコに代えて勝負です。78分、今度はコンテ監督がデ・ロッシをモッタ。イタリアは逃げ切りを図り、ベルギーはとにかく同点が目標です。
82分、デブライネが右から入れたクロスがオリギの頭にぴったり合いますが、浮いたシュートはブッフォンの頭上。84分にはイタリアが2対2のカウンターに入り、ジャッケリーニの一撃はクルトワが素晴らしい反応を見せ、右手を伸ばしてCKに逃れます。89分にデブライネが見事なクロスをフェライニに通したのが、ベルギーの最後のチャンスでした。アフロをゴールドに染めたトップ下がトラップをミスした瞬間、勝利への道は潰えます。92分、イタリアのカウンター。左から中に持ち込んだインモービレがフリーのカンドレーヴァに流すと、クルトワを引きつけた6番が逆サイドにラストパスを浮かし、グラツィアーノ・ペッレが容赦ないボレーをズドン。2点めが決まった瞬間、イタリアベンチから控えの選手がピッチになだれ込み、ブッフォンまでゴールセレブレーションに加わるサヨナラ勝ちのような光景が繰り広げられます。注目のカードは、イタリアの完勝でした。
MVPを選ぶなら、ジャッケローニです。レギュラーで働ける場を求めてユヴェントスからサンダーランドに入団したものの、プレミアリーグの激しさになじめないまま終わった小柄なMFは、ボローニャで復活。運動量豊富な彼の空いたスペースを探す動きに、ベルギー守備陣は翻弄されました。プレミアリーグで厳しいシーズンを過ごしたアザールはここでも孤立。何本か決定的なパスを出したデブライネも個人力を発揮しただけに終わり、SBの攻撃参加も中盤の連携も弱かったベルギーの敗戦は必然だったと思います。今日の試合を観る限りでは、フェライニを中央に置く布陣はスピードに欠け、厳しそうです。メルテンス、アザール、デブライネを2列めに置き、めまぐるしくポジションチェンジしながら崩す攻め方にスイッチしたほうがいいのではないでしょうか。次のアイルランド戦で勝利を逃せば、個々の能力は申し分ないダークホースはたった3試合で大会に別れを告げるかもしれません。ヴィルモッツ監督の、巻き返し策に注目したいと思います。
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更新ご苦労様です。
楽しみにしていたカードでしたが、監督の差が出たゲームと言う一面を見せたゲームかもしれません。ベルギーのSBは何故?と思わずに入られませんが、このゲームはイタリアを讃えたいと思います。ボヌッチのパスはピルロを彷彿させるパスで、決勝ゴールのカウンターはこれぞイタリアと言わせる攻撃でした。さてベルギーこの敗戦を次のゲームにどう活かすかは監督の腕の見せ所かと思います。
イタリア人と観戦してましたが、感動していました!
組織的でディフェンスが美しいと、組織でサッカーをしたイタリアとは、対照的に
ベルギーは各選手が自分が目立とうとばかり、チームとしてサッカーではなく、個人種目のサッカーをしてました。
各大会ごとに期待される、イングランドとベルギー、毎回期待を裏切ってきたが、今回も裏切りそうですね。。。
Mackiさん>
代弁していただいてありがとうございます。以前よりヴィルモッツ監督についてはあまりほめていなかったこともあり、厳しいトーンになるのを避けて、「監督力の差」とははっきりいいませんでしたが、そういう試合だったと思います。
おハムさん>
おっしゃるとおりでしたね。持ち過ぎ、ダイレクトプレイの少なさなど、そこかしこに現在のベルギーの限界が出てしまってました。