ロシツキ無念、パイェ&デブライネ完璧…偏愛的プレミアリーグ目線のユーロ2016中間レポート
スタッフの努力によって、中断時間を長引かせずにゲームがリスタートすると、次の悲劇が数分後に発生しました。中盤をドリブルで進んだロシツキがハムストリングを押さえてピッチに転倒。負傷続きで昨季プレミアリーグを棒に振ったチェコの主将は、アーセナルを退団することが既に決まっておりますが、金曜日の悲しい試合がキャリア最後の勇姿となってしまうのでしょうか。早く元気になってもう一度、素晴らしいプレイを見せてほしいとしか今はいえませんが、シーズンの大半を治療に費やすような重傷でないことを祈るばかりです。
優勝候補といわれるチームの多くが苦戦しているユーロ2016は、注目選手たちも明暗が分かれています。プレミアリーグ得点王のハリー・ケインは彼らしいシュートをまったく打てず。ポルトガルのクリスティアーノ・ロナウド、スウェーデンのズラタン・イブラヒモヴィッチもゴールが決められずにグループステージ敗退の危機に立っている一方、ディミトリ・パイェ、アルバロ・モラタ、ロメウ・ルカク、ガレス・ベイルといった新星がそれぞれ2ゴールを挙げて得点王争いのトップに並んでいます。本ブログは、何しろ「偏愛的プレミアリーグ見聞録」ですので、ここまでのゲームについて、プレミアリーグの選手を中心に振り返ってまいりたいと思います。
最も素晴らしい選手をひとり挙げろといわれれば、フランスのディミトリ・パイェでしょう。ウェストハムでリーグ戦9ゴール12アシストという記録を残したMFは、目の肥えたプレミアリーグファンをうならせたクオリティをそのまま大会に持ち込み、2ゴール1アシスト。スペインとフランスの4ゴールが最多というシブい大会のなかで、3ゴール以上に絡んだ選手は彼だけです。FKやクロスのほとんどを味方に確実に届けるキックの正確さは、ここまでの2試合に関しては、エジルやイニエスタをしのぐのではないでしょうか。今や、開催国の司令塔にのし上がったパイェは、後ろで中盤を仕切るレスターのカンテとともに、さらに大会を盛り上げてくれるのではないかと思います。
初戦はチェフとの駆け引きに敗れ、味方のチャンスメイクをことごとく台なしにしたモラタは、2戦めで本領発揮。2ゴールとも完璧なシュートで、特にノリートのクロスをヘッドで流し込んだ一撃は、簡単に決められないゴールでした。同じく最初のゲームではイタリアに完封されたロメウ・ルカクもまた、アイルランド戦で2本決めて得点王争いに名乗りを上げましたが、彼のゴールはプレミアリーグでライバルとして戦うアザールとデブライネに感謝しなければなりません。エヴァートンのマッカーシーとアストン・ヴィラのクラークが一発で当たりにいって抜かれたアイルランドの左サイドが弱かったのは確かですが、ベルギー代表のアタッカーたちの的確なドリブルとラストパスは、いずれも完璧でした。
ユーヴェからプレミアリーグに来るのではないかと噂のモラタと、プレミアリーグからユーヴェにいくのではないかといわれているルカクは、ベルギーの結果次第では決勝トーナメントの初戦で直接対決となるかもしれません。デブライネは、パイェと甲乙つけがたいクオリティを発揮しており、優勝候補を叩くような活躍を見せれば、大会MVPに選ばれてもおかしくないと思います。
印象的な選手といえば、GKを忘れてはいけません。スペイン代表の公式戦でプレイした450分で一度もゴールを許していないデ・ヘアは今や不動のレギュラー。そのスペインをビッグセーブ連発で苦しめたチェフもまた素晴らしい出来で、味方の致命的なミス2本で奪われたクロアチア戦の失点はノーチャンスでした。ポーランドの「元アーセナルコンビ」、シュチェスニーとファビアンスキは、ドイツ、スペイン、イタリアと並んで未だ無失点です。フランスのロリス、ベルギーのクルトワもまずまずのプレイを見せており、ワールドクラス揃いのプレミアリーグのGKは、軒並みいいスタートを切ったのではないでしょうか。「うまく左に動けずに失敗したのは、労働党党首とイングランド代表GKの共通点」と揶揄されたジョー・ハートは別として…。
ウェールズ戦の後半に登場し、18歳228日でイングランド史上最年少のユーロ出場選手となったラシュフォードは、次はゴールを決めたいところ。片や遅咲きの選手ふたりが、貴重なゴールを決めています。ウェールズ戦で同点ゴールを決め、イングランドの逆転劇を演出した29歳のジェイミー・ヴァーディと、素晴らしいボレーでベルギーにとどめを刺した30歳のグラツィアーノ・ぺッレ。イタリアといえば、サンダーランドで苦しみながらボローニャ移籍後に復活し、ベルギー戦でMVP級の活躍をしたジャッケリーニも印象深い選手です。こうして挙げていると、キリがありませんね。プレミアリーグ所属選手は100人以上いるのですから。最後に、決勝トーナメント以降にさらなる活躍を期待している選手、注目の選手を挙げさせていただき、この稿を締めたいと思います。
アントニー・マルシアル(フランス)、シェルダン・シャキリ(スイス)、ジョーダン・ヘンダーソン(イングランド)、アーロン・ラムジー(ウェールズ)、スティーブン・デイヴィス(北アイルランド)、ヘクター・ベジェリン(スペイン)、ジョナサン・ウォルターズ(アイルランド)、クリスティアン・フクス(オーストリア)、エムレ・ジャン(ドイツ)、マッテオ・ダルミアン(イタリア)。現在プレミアリーグに所属している選手をバランスよく選んでみましたが、最後にひとりだけ、プレミアリーグ以外から名前を入れることをお許しください。本ブログを読んでいる多くの方が、ご存じの選手です。
エイドゥル・グジョンセン、アイスランド、37歳。
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各国代表にプレミアリーグ勢がいて楽しいですね。
ベルギーvsアイルランドは馴染みの選手ばかりでしたし、グジョンセンが出てきたときは何故だか嬉しくなりました。
今大会はキーパーが良く、ピリッと締まった試合が多いように感じます。
守備も組織されているチームが多く、疲労が蓄積する終盤までなかなか崩れないため劇的な決着が多くて試合が終わっても直ぐに寝付けません。
ところでデ・ヘアはユーロ直前のジョージア戦で失点しましたが、他のニュースサイト等でも無失点と書かれていますね。
親善試合はカウントされてないのかな?
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COYSさん>
グジョンセンは、ぜひゴール決めて大会を終えてほしいです。ベルギーVSアイルランドは、盛り上がりました。
今大会はキーパーが良く、ピリッと締まった試合が多い
→ほんとうにそうですね。スイスのゾマーがいちばんのサプライズでした。
デ・ヘアは親善試合除くカウントですね。すみません。「公式戦」の3文字が抜けていましたので、訂正させていただきました。ご指摘ありがとうございました。