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2016.06.17 ユーロ2016

【ユーロ2016】ヴァーディ&スタリッジ!途中出場のストライカーが、窮地のホジソン監督を救う!

ロシア戦と同じスターティングメンバーを見て不安を覚え、ガレス・ベイルのFKが決まったときにはイングランドが負けるだろうと思いました。ユーロ2016グループステージ第2節、イングランドVSウェールズ。私は、ホジソン監督に半分謝らないといけません。以前に、戦術的に秀でたところがなく、大試合で勝負を賭ける大胆な采配ができないと書きましたが、ウェールズ戦では戦術はともかく思い切った選手交代が当たりました。ワールドカップブラジル大会での無難すぎる采配と惨敗、楽勝続きで勝負する場がなかったユーロ予選を見続けていたため、時が経つにつれ評価が萎んでしまっていたのでしょう。2-1の勝利は、後がなくなった指揮官が腹をくくって送り出した2人のストライカーが真価を発揮した逆転劇でした。

キックオフからアグレッシブに攻めるイングランドと、相手の出方を確かめながら長いボールを前線に送るウェールズ。7分、ハリー・ケインの縦パスから始まったカウンターは、右サイドを疾走したララナが完璧なラストパスをゴール前にフィード。フリーで放ったスターリングのボレーが決まると思いきや、左足のシュートは明らかなミスタッチでクロスバーの上に外れてしまいます。エースのハリー・ケインは、プレミアリーグフル出場の疲れが残っていたとしても軽々に代えられないのはわかるものの、スターリングのポジションにはミルナーやヴァーディを入れられるはずです。イングランドは、今日もチャンスを活かせずに時間を浪費するのでしょうか。10分、ガレス・ベイルが左からペナルティエリアに侵入してシュートを放ちますが、対応したケーヒルは落ち着いています。

ルーニーのミドル、ハリー・ケインのFKはいずれも打ち上げてしまいました。プレミアリーグでは自信たっぷりにプレイしていたハリー・ケインは、ロシア戦に続いて元気がありません。26分、左からのFKをルーニーが中に入れると、ケーヒルのバックヘッドはGKヘネシーの正面。決まらなかったものの、ボールの質はよく、今日のセットプレーはキャプテンにまかせたほうがいいでしょう。32分、またもイングランドにチャンス。右のカイル・ウォーカーが仕掛け、グラウンダーをもらったララナがファーサイドに上げると、クリアを拾ったスターリングが再度中央へ。チェスターのヘッドが後ろに流れたところをプッシュしたハリー・ケインのヘッドは、明らかにベン・デイヴィスの手に当たりましたが、レフェリーの笛は鳴らず。36分にルーニーが蹴ったCKはスモーリングの頭にぴったりでしたが、外にドライブがかかったシュートはわずかに左に逸れてしまいました。0-0のゲームは、42分にガレス・ベイルが放った一撃で均衡が崩れます。

中央やや右からのFKは、30メートルほどあったのではないでしょうか。笑みを浮かべて壁を作っていたジョー・ハートは、無回転で沈んでくるボールを弾き出すことができませんでした。マン・シティの守護神については、キックと守備範囲には難があるものの、世界的なGKが揃ったプレミアリーグのなかでもショットストッパーとしては高水準と評価していたのですが、両手で触れるシュートは確実に外に出さないといけません。0-1とされたハーフタイムに、ホジソン監督が勝負に出ます。ハリー・ケインとスターリングを下げ、プレミアリーグ24ゴールのジェイミー・ヴァーディとリヴァプールのエース、ダニエル・スタリッジ。終盤ではなく、早い時間に代えたのがよかったのではないでしょうか。攻撃に緩急がなく、サイドを崩すイメージがなかったイングランドには明確な変化が必要でした。

ルーニーのパスを右サイドで受けたカイル・ウォーカーのシュートでエンジンがかかった後半。54分、デル・アリとスタリッジのワンツーからルーニーにボールが渡ると、右隅を狙ったコントロールショットはヘネシーが横っ飛びで外に押し出します。攻勢だったイングランドの同点ゴールはこの直後でした。56分、右からふわりと上がったロングクロスの処理にウェールズ守備陣が手間取り、ボールはファーにいたスタリッジへ。15番が中に入れると、アシュリー・ウィリアムズがクリアミスしてしまい、ゴールの真ん前、オフサイドポジションにいたストライカーの足元にボールが出てしまいます。右足ボレーを容赦なく叩き込んだのはジェイミー・ヴァーディ!プレミアリーグ優勝の立役者は、やはり持っています。

59分にはスタリッジが流したボールをララナがミドル。ベン・デイヴィスの手に当たったシーンは2度めも見逃され、混戦からのエリック・ダイアーの左足シュートはDFがブロック。62分に左からえぐったダニー・ローズの素晴らしいクロスは、スタリッジのボレーがうまくミートしません。完全なるイングランドペースは、64分にスタリッジと接触して足を痛めたレドリーの治療時間にクールダウンを強いられました。どうしても勝ちたいホジソン監督は、73分にララナを下げてラシュフォード投入。ヴァーディ同様、昨季のプレミアリーグでブレイクした選手の勢いに勝負を託します。75分、左からのクロスをベイルとダニー・ローズが競ったシーンは、ロシアに決められた同点ゴールを思い出させる嫌な形でしたが、ウェールズのエースのヘディングは枠にいかず、1-1のスコアは動きません。

ジョナサン・ウイリアムズのミドルはジョー・ハートの頭上。ベイルが抑えられ、ラムジーやジョー・アレンが守備に追われているウェールズは、同点で畳めれば充分でしょう。89分のカイル・ウォーカーのミドルはベン・デイヴィスに遮られ、やがて追加タイムへ。ドロー濃厚だったゲームを動かしたのは、レッズのエースでした。左足アウトでジェイミー・ヴァーディをポストに使い、左からペナルティエリアに侵入したスタリッジは、デル・アリを経由したボールを受けると、GKヘネシーの読みを外す右足のシュート!狭いスペースでプレイでき、駆け引きがうまいスタリッジならではの一撃は、ニアのわずかなすき間を抜けてゴールに吸い込まれます。得意のクネクネダンスは、歓喜のダニー・ローズに抱きつかれて2秒しかできませんでした。ホジソン監督の勝負采配が的中し、イングランドが大会初勝利を飾りました。

3ゴールを決めたチームがひとつもなく、優勝候補のフランス、スペインでさえも最後の最後まで勝利を決められない「完勝なきユーロ」。イングランドもまた、追加タイムに決められてドローに持ち込まれた初戦の苦さを、追加タイムの決勝点で忘れることができました。この試合は、ベイルを自由にさせなかった最終ラインと、攻撃に前への推進力をもたらしたスタリッジをリスペクトしたいと思います。ウェールズはよく守ったものの、思い切りよく戦っていたスロバキアとの試合に比べると不安定なプレイが多く、「英国対決」を意識し過ぎていたのかもしれません。イングランドは、次のスロバキア戦に勝てばグループ首位通過が決まりますが、ここは「勢い重視」のメンバリングでいいのではないでしょうか。いちばんゴールの匂いがするスタリッジと、幸運を身に纏ったジェイミー・ヴァーディを使わない手はないでしょう。6月20日のゲームは、ホジソン監督の前線のチョイスに注目したいと思います。

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“【ユーロ2016】ヴァーディ&スタリッジ!途中出場のストライカーが、窮地のホジソン監督を救う!” への7件のフィードバック

  1. リバサポ より:

    アリとスターリッジが相性良さそうなことが驚きでした。クラブでは見れない組み合わせが見れるのもいいですね。

  2. nyonsuke より:

    更新お疲れ様です。
    久しぶりのコメントです。
    またよろしくお願いします。

    なんか勝ってもモヤモヤする試合でした。
    やはり私はホジソンの選手起用と戦術に疑問があります。
    ロシア戦からの修正が全くされないスタメンと前半にはがっかりしました。
    この召集メンバーであれば、1トップでなく2トップのほうがいいのは後半で証明されたと思いますが、なぜスタメンがロシアと同じなのか。
    後半はいい動きもありましたが、結局はヴァーディーとスタリッジの個の力に救われただけに感じます。
    少し厳しいかもしれませんが、ケインしかいないのに外から放り込むだけのロシア戦とそれから改善しない今回の前半はホジソンのチーム作りに疑問を感じざるおえません。
    後半の戦いができればいいですが、できない場合のBプランがないと思います。
    やはりキャロル、ノーブル、ドリンクウォーターは必要なのではと改めて思いました。
    キャラクターの違う選手が控え、効果的な交代をしたフランスを見た後だけにホジソンの無策がかなり気になりました。
    ま、レッズファンとしてはスタリッジの神業ゴールがみれたのはよかったですが…

  3. ホタ より:

    珍しくホジソン監督の思い切った采配が的中した試合でしたね。スパーズファンの僕としては、キックオフの笛が鳴った時にスパーズの選手が6人と、そしてベイルがピッチにいた事に感動しました。ベイルとウォーカーの競り合いは忘れられないシーンです。

    ローズとウォーカーは頻繁にオーバーラップして前線に顔をだしクロスを上げていて、非常にいい働きをしていたと思います。両SBが駆け上がることが少なかったベルギーとは対照的でした。

  4. えじ より:

    スターティングメンバーの不安定さを最後の劇的勝利で頭から吹っ飛んでないことを祈ります。

  5. グローリーグローリー より:

    見えざる手に首を絞められてるようなホジソン監督の表情が印象的でした。プレッシャーに押しつぶされそうになりながらもハーフタイムの2枚替えを成功させて、チームを勝利に導く姿はリバプール時代のホジソン監督とはまるで別物でしたね。チーム全体に勢いが出たと思うのでこのまま行けるとこまで行って欲しいです

  6. queen より:

    前回と比べると、監督の意図が見えたことが良かったです(それでも、あの選手の並べ方はどうなんだろうとも思いましたが、とりあえず勝てましたしね)。
    ウェールズは守備は悪くない(ウィリアムズのミスは別として)ですが攻撃が厳しいですね。コールマンは個人的にかなり良い監督と思うのですが、ベイル以外が今のレベルではさすがに厳しいかと思いました。

  7. makoto より:

    リバサポさん>
    よかったですね。両者とも、周囲に合わせるのがうまい選手ですよね。

    nyonsukeさん>
    ララナとスターリングを外に張らせようとしているのに、FWが多くて左サイドのオプションが薄いメンバリングになってますね。メンバー選考は4-3-1-2をやろうとしているみたいなのに、実際は4-2-3-1もしくは4-3-3となっているあたりが既に疑問です。

    ホタさん>
    SBはいい動きをしていますね。好調時のカイル・ウォーカーはこの国のNo.1だなとあらためて実感しました。

    えじさん>
    そうですね。3戦めのスタメンに注目です。

    グローリーグローリーさん>
    勝ち方はよかっただすよね。短期決戦は勢いも大事なので、ラッキーボーイ的存在を大事にして進めればいいのではないでしょうか。

    queenさん>
    逆にいえば、あのメンバーしかいないウェールズは、守ってカウンターに徹するというのは正しいですね。顔ぶれを見れば、イングランドにとっては負けてはいけない相手なのだと思います。

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