イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

2016.07.11 ユーロ2016

【ユーロ2016】決めきれなかったフランス…エデルの1発で、CR7を失ったポルトガルが優勝!

ユーロ2016は、いよいよファイナル。ロリス、サニャ、コシールニー、パイェ、シソコ、ジルーと、フランスのスタメンにはいつものプレミアリーグ勢が6人です。現在得点王のグリーズマンは、ジルーとの2トップでしょうか。ポグバ、マチュイディのセントラルMFコンビは健在です。厳かな雰囲気で始まったゲームは、開始早々からフランスがイニシアティブを取ろうとしています。最前線の2人が厳しいプレスをかけ、縦へのパスを出させないようにする開催国に対し、ポルトガルは最終ラインで奪ったボールをシンプルに前線に送る速攻で応戦。クリスティアーノ・ロナウド、レナト・サンチェス、ナニをペナルティエリアでフリーにすれば、簡単にゴールを割られてしまうでしょう。最初のシュートは5分、セドリックのロングフィードに反応したナニ。右から持ち込んで放った一撃は、ロリスの頭上を越えていきます。1分後、フランスはシソコが左から中に入ってシュート。馬車馬のようなドリブルを持ち味に、代表に必要な人材であることを証明した18番は、プレミアリーグ残留を果たせなかったニューカッスルに残るのでしょうか。

10分にはパイェが絶妙なクロスをゴール前に入れ、グリーズマンのヘディングシュートはGKルイ・パトリシオがビッグセーブ。直後のCKも、ジルーのヘッドを守護神ががっちりキャッチします。フランスの中盤でのチェックは厳しく、ショートカウンターで再三ゴール前に迫りますが、ペペとフォンテが構えるポルトガルの中央に崩れる兆しはありません。パイェと接触したクリスティアーノ・ロナウドは大丈夫でしょうか。左足をひねったエースは治療を受け、1度は戻ってきたものの、18分、ピッチに座り込んで泣いています。これは、ダメでしょう。22分にハーフラインから単独でペナルティエリアまで進んだシソコが強烈な左足ミドルを放った後、クアレスマの準備が整い、担架で運ばれたクリスティアーノ・ロナウドの夏が終わりました。素晴らしいゲームを期待していたファンとしては、残念無念。フランスサポーターが温かい拍手を送っていたのが、せめてもの救いです。

30分、またもシソコが右から3人をぶっちぎって折り返し。中盤で囲まれ、ボールを奪われるシーンが多いパイェに対して、ひとたびエンジンがかかると手がつけられない18番は好調です。34分にも、左サイドでひとりかわしたシソコが右足で強烈なシュート。左に弾き出したGKルイ・パトリシオは集中しており、ここまでの対応はパーフェクトです。ポグバとマチュイディがことごとく縦のボールをカットしていたフランスは、時間が経つにつれて、ポルトガル攻撃陣のサイドからの侵入を許すようになりました。47分、左サイドから上がったジョアン・マリオがゴール前に浮かしたクロスはきわどいボールでしたが、味方に合わず、ロリスの前を横切ります。前半は0-0。徐々に押し返したポルトガルペースといっていいのではないでしょうか。

後半が始まってしばらくは、中盤でのせめぎ合いが続き、両者ともシュートに持ち込めない展開。パイェのクロスははね返され、53分のポグバのミドルは大きく上に外れます。昨季プレミアリーグ最大のサプライズ、ディミトリ・パイェは、57分という早いタイミングでコマンに代えられてしまいました。60分に左から突破を図ったグリーズマンの左足は、ルイ・パトリシオの正面。65分、コマンのクロスに飛び込んだグリーズマンはどフリーでしたが、決定的だったヘディングはバーをかすめ、先制はなりません。バイエルンのサイドアタッカーが入ってからは、フランスがフィニッシュに持ち込めるようになってきました。

75分、最前線で止められ、体勢を崩しかけたコマンが持ち直してジルーに縦パスを通すと、渾身の左足はGKがセーブ。78分にジルーを下げたデシャン監督のチョイスは、ジニャクです。ポルトガルの2枚めは、レナト・サンチェスをエデル。すると80分にはポルトガルに久しぶりの決定機が到来します。ループシュート気味にゴールに向かったナニのクロスをロリスがかろうじて掻き出すと、リバウンドをクアレスマがバイシクルで狙いますが、プレミアリーグ屈指のGKが冷静にキャッチ。82分、右から上がったシソコの強烈なミドルをルイ・パトリシオが右に弾くと、拾ったコマンの浮き球はシソコのヘッドがうまく当たりません。

追加タイムに入った92分、コマンのグラウンダーをニアで受けたジニャクがペペを切り返しで外して右足を振り抜くと、初めてルイ・パトリシオの脇を抜いたボールは惜しくもポスト!0-0の試合は、延長戦に突入です。ポゼッションはフランス、ポルトガルは速攻とセットプレー。100分のフランスの波状攻撃はシュートを打ちきれず、113分のポルトガルのCKは、エデルが叩きつけたヘッドをロリスが手に当てて難を逃れます。後半最初の見せ場は、107分のラファエウ・ゲレイロのFKでした。左足の柔らかいキックは、ロリスがぎりぎりで触ってバーを直撃。その直後、ついにゲームの均衡が破れます。この試合で初めてコシールニーを振り切ったのは、途中出場のエデル。思い切りよくニアに打ち込んだ右足のシュートが、ロリスの指先を抜けていきます。1-0、デシャン監督は最後のカードを切りました。昨季プレミアリーグでその才能を存分に見せつけた、20歳のアントニー・マルシアル。アウェイチームリードのまま、残り時間は5分を切りました。

フェルナンド・サントス監督のすぐそばで、クリスティアーノ・ロナウドがチームを鼓舞しています。もう時間はありません。焦りから、強引な突破が増えていたフランスは、122分に最後の決定機を迎えました。コマンのクロスをポグバが頭で落とすと、落下点にはマルシアル。ボレーがDFの間を抜ければ、フランスは追いついていたでしょう。ところが、シュートの正確さには定評がある11番は相手に当ててしまいました。やがて、タイムアップの笛。グループステージを3位で通過し、90分では1回しか勝てなかったポルトガルが開催国を屠り、12年前に自国でギリシャに敗れた悔しさをようやく晴らしました。

決めきれなかったフランス、わずかな「自分たちの時間」を決勝点に結びつけたポルトガル。数多くの「たられば」が埋め込まれた123分は、勝者が薄皮1枚上回ったとしかいえません。おめでとう、ポルトガル、そしてクリスティアーノ・ロナウド。長きにわたってポルトガルを牽引してきた背番号7のキャプテンは、力が入らない左足を引きずり、メダルを受け取るための階段を重々しく上っています。プレミアリーグファンとして、レスターのエンゴロ・カンテがリーグとユーロの2冠を獲得する奇跡的な瞬間を観たかったのですが、クラブと代表で「欧州2冠」を達成したCR7とペペに拍手を送りたいと思います。ボールを支配したスペイン、イングランド、ベルギーが早期に大会を去り、堅守速攻型のアイスランドやポーランドが話題となったユーロ2016は、つい3時間前までドイツVSフランスが事実上の決勝戦だとばかり思っていました。しかし実は、準決勝の逆サイドにいた速攻対決のポルトガルVSウェールズこそが、この大会を象徴する優勝国を決める一戦だったのかもしれません。開幕戦と最後の試合で苦しんだ優勝候補筆頭の開催国を見て、ふとそんな考えが頭をよぎりました。

おもしろいと思っていただけた方は、お時間あれば、下のブログランキングバナーをクリックしていただけると大変うれしいです。所要時間は5秒です。何とぞよろしくお願いいたします!


“【ユーロ2016】決めきれなかったフランス…エデルの1発で、CR7を失ったポルトガルが優勝!” への7件のフィードバック

  1. queen より:

    三位での突破。恵まれたトーナメント。誰も育たない前線に、華のない顔ぶれ。40年勝ててない相手。
    どう考えても、フランスでしたが、ユーロって不思議な大会ですね。12年前泣いてた青年がナショナルチームでタイトルを獲るなんて。
    ロナウド、おめでとう、ありがとう。

  2. おハム より:

    ロナウド キャプテンでしたが、誰も彼と喜びを分かち合おうとせず…
    はたや、ロナウドも歓喜のサークルの中に入らず。
    うーん…

  3. スパーズ推し より:

    ポルトガル、おめでとうございます!
    絶対的エースが早々に居なくなった中、よく最後まで戦いました
    フランスは自国開催のプレッシャーもあったのでしょうか
    数あった決定機を生かすことができれば、試合の結果は逆になっていたはずです

    ポルトガルへの賞賛をする上で、の話ですが
    何だかすっきりとはいかなかった試合、という印象は強いです

    例のハンドでないハンドでのイエロー、さすがはクラッテンバーグと思ってしまいました
    あの誤審が試合を決したとまで言うつもりはありません、前述した通り、フランスの敗因は決定機を決めきれなかったことだと考えます
    ですが、誤審と失点との因果関係は全くの0では無かったとだけは言い切れます
    決勝点はどちらが決めるにせよ、出来ることならもっとすっきりと、この大きな大会にふさわしい形で決まって欲しかった、というのが正直な感想です

    なので、個人的には今大会のベストゲームはドイツvsイタリアでした

  4. ジウベルト より:

    ポーランド代表を選ばなかったコシエルニーやフランス出身のゲレイロとアドリエン、いろんな出自の選手がいて、まさにEURO決勝でした。
    一枚貰っていたコシエルニーが厳しく行けず、スワンズで1得点もできなかったギニアピサウ出身のエデルに決められましたが、クラッテンバーグの誤審が原因なのか?

  5. yuto より:

    EURO2016を振り返ると優勝は逃しましたがMVPがグリーズマンなのも納得ですね。
    ウェールズやイタリアなど闘争心が目に見てもわかるような熱いチームが躍進するような大会だった印象です。
    私にとってのベストゲームはイタリア対スペインでしたが皆さんはいかがでしょうかね?

  6. mufc7 より:

    ポルトガル優勝おめでとう!
    色々とケチつけてくる人はいるだろうけど、チームで戦ってきたこのチームの優勝には個人的には文句なしです。
    ロナウドも負傷退場は残念だったけど、延長入るときに一人一人に声をかけ、最後には監督と並んで声を張り上げる様子には、代表を背負うキャプテンにふさわしい熱さが見られました。
    こういった姿もそうだし、試合中要所では自陣まで戻って守備をしたりしている姿を見てると、ファーガソンの下で指導を受けた経験は大きかったのかなと思います。
    足を怪我して試合終了直後に皆のところに駆けつけて歓喜の輪に加わる姿は見れませんでしたが、クラブでも一緒のぺぺ、キャプテンを引き継いだナニ、殊勲のエデルと、ゆっくりと順に抱き合って喜びを分かち合う姿は感涙ものでした。
    ロナウドは次のW杯が代表では最後になるかもしれませんが、今大会活躍した若い選手とともにいいところまでいってほしいですね。
    本当におめでとう!

    —–
    心からおめでとうと言いたいです。ロナウドとファーガソンの熱い包容を見ていて少しウルッときました。ロナウド離脱アクシデントを乗り越え、堪えて堪えてのFWエデルの右足素晴らしかったです。ポルトガルは決して最高のチームではありませんでした、しかしハンガリー戦での勝利、クロアチアでの死闘を重ねて徐々にチームとして出来上がり、決勝では大会のベストチームであったと思います。 守備的だつまらないと評されながらも勝ちに徹してチーム一丸となって掴みとってきた美しく強いチームの最高のフィニッシュになったと思います。ユナイテッドにもこういった粘り強いチームになってほしいです。勝利に勝る感動なしです。

  7. makoto より:

    queenさん>
    守備がよかったですね。フォンテに惚れ直しました。堅守、カウンター、飛び道具。番狂わせを起こすのはこういうチームだな、とあらためて思いました。

    おハムさん>
    みなさんとハグはしていたので、ケガを気にしていたキャプテン、おもんばかったメンバーというだけではないでしょうか。

    スパーズ推しさん>
    後半に先制していればフランスでしたね。コシールニーのハンドについては、「イエローとエデルのゴールは別なプレイである」「影響があったとしても、密着マークしていた相手は止めねばならぬ」と思ってます。おっしゃるとおり、ドイツとイタリアはいい試合でした。

    ジウベルトさん>
    コシールニーは、しつこく体を当てにいったうえで振り切られ、意識的にマークを受け渡しているので、イエローもらったから強くいけなかったというプレイではありません。エデルをほめるべきシーンでしょう。

    yutoさん>
    私はドイツとイタリアですね。スペインVSイタリアもまた、イタリアの強さを思い知らされた素晴らしいゲームだったと思います。

    プレミアリーグ大好き!さん>
    ロナウド、キャプテンでしたね。勝ちたい勝ちたい、どうしても勝ちたいという気持ちが伝わってきました。

    mufc7さん>
    同感です。決勝戦は、ポルトガルが大会を通じて熟成が進んだのを見せてもらった一戦でした。よく耐えましたね。ルイ・パトリシオ、完璧でした。

コメントを残す