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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

遅かった最後の猛攻…正確性を欠いたアーセナルは、ワトフォードに敗れてFAカップ3連覇はならず!

キックオフの6時間前にこの文章を書いているのですが、本日のFAカップ準々決勝のワトフォード戦には、「アーセナルが危ない」という一抹の不安があります。どうも最近、気になっているのが「CLシンドローム」あるいは「バルサショック」という欧州から感染する症状の存在です。昨季のマンチェスター・シティは、バルセロナ戦の後のプレミアリーグでアウェイ4連敗を喫して2勝4敗。今季のアーセナルは、同じくバルサにやられた後の5試合を1勝2分2敗、プレミアリーグでは3試合で勝ち点1という不振に陥っています。

これは、「チャンピオンズリーグで欧州の強豪にやられると、選手たちが自信を失ってパフォーマンスを落とす」という症例なのではないかと疑うわけです。ちなみに、アーセナルは11月にバイエルンの本拠地アリアンツ・アレナで5-1と惨敗した後も、エミレーツのザグレブ戦こそ後がないという一心で乗り切ったものの、プレミアリーグではホームのノースロンドンダービーを含む3試合を2分1敗。ひとたび不振に陥ると1~2ヵ月は平気で引きずるペジェグリーニさんのチームよりも、ヴェンゲル監督のほうが立ち直りは早そうですが、先日のハル・シティとのFAカップ5回戦再試合での勝利を、ウィルス駆除完了とみるのか、相手が弱かっただけで完治はまだ先とみるのか。マンチェスター・ユナイテッドも、「ラスト2試合のどちらかを勝てば突破決定」にまで漕ぎ付けていたCLで、ヴォルフスブルクにやられて敗退したショックからか、直後のプレミアリーグで3連敗しています。この論でいけば、ドルトムントにやられたトッテナムも、ヴィラ戦は危険なのかもしれません。ターンオーバーに長けたスパーズは、顔ぶれを入れ替えれば引きずらない気もしますが…。サー・アレックス・ファーガソンがスランプが少なかったのは、主力に「謎のスタメン落ち(スコールズ談)」を喰らわせてチームをリフレッシュし、窮地を乗り切るのがうまかったからでもあると思います。

前置きが長くなりましたが、ここからは試合開始直前のレポートです。今日のFAカップは、そうはいってもエミレーツ。最近のプレミアリーグ3試合でノーゴールのワトフォードに負けるわけにはまいりません。ガナーズのスタメンは、ラムジーがリタイアしたセントラルMFにエルネニーとコクラン。エジル、アレクシス・サンチェス、ジョエル・キャンベルの2列めとジルー。コシールニーのいないCBはガブリエウとメルテザッカーで、SBにチャンバースとギブス、GKオスピナというオーダーです。開始から攻勢のアーセナルは、9分の中央突破でゴールを陥れますが、ジルーはオフサイドをわかっていたようです。直後のワトフォードは、右からペナルティエリアに入ったベーラミがパスをもらって切り返すも、コクランに抑えられて打てず。18分にパスミスを拾ったジョエル・キャンベルは、すかさず逆サイドのアレクシス・サンチェスに展開しますが、トラップがうまく収まらず、シュートに持ち込めません。

23分にジョエル・キャンベルのスルーパスをもらって右サイドを突破したチャンバースは、ニアが間に合っていなかっただけに、アーリークロスにこだわらずにもうひとつ持ってもよかったのではないかと思います。アーセナルはアレクシスにミスが目立ち、ワトフォードはディーニーとイガロのホットラインがつながりません。29分、CKの流れからアレクシス・サンチェスの高速パスを受け、ペナルティエリア右でフリーになったエルネニーはシュートをミートできず、大きく右にふかしてしまいます。カウンターの態勢に入り、カプェから縦パスをもらったイガロは、ディーニーがフリーになるタイミングを捉えられずにボールをロスト。プレミアリーグ14ゴールのストライカーは、視野が狭いプレイに終始しています。

ガナーズの最大の決定機は41分。右サイドから2人かわしてゴールライン際をすり抜けたエジルがジョエル・キャンベルに渡すと、中央に落とした絶好のチャンスをまたもエルネニーが打ち上げてしまいました。1分後、エジルの素晴らしいスルーパスで裏に飛び出したジョエル・キャンベルのボレーはバーの上。どちらのサポーターも、前半はもどかしかったのではないでしょうか。0-0の後半、アーセナルはセットプレーやカウンターからやられる負けパターンに入りました。49分、ナタン・アケのロングスローのこぼれ球に、ガブリエウがイガロに競り負け、右隅にプッシュされてしまいました。53分のエルネニーのミドルはGKパンティリモンの正面。アーセナルの最大の敵は、自らの焦りでしょう。60分、たった2人のカウンターを許したガナーズは、イガロがつま先に当てただけで済んで助かりました。

63分、左から上がったジョエル・キャンベルの高速クロスに飛び込んだジルーの一撃はポスト。その直後、速攻を仕掛けたワトフォードに追加点が入ります。最前線でDFを背負ったイガロが後ろに落とすと、走り込んできたグェディウラの渾身のミドルがニアの右上に突き刺さります。イガロに通ってから時間があったにも関わらず、ガナーズの左サイドはぽっかり空いており、17番を誰も見ていませんでした。ヴェンゲル監督は、68分から次々と3枚投入。下がるのがエルネニーとジルー、入るのがウェルベックとイオビまではわかるものの、ジョエル・キャンベルのアウトとウォルコット起用には疑問が残ります。

130年間、誰もなしえなかったFAカップ3連覇という偉業が難易度が高いのはわかっていたものの、エミレーツでプレミアリーグ14位を相手に、しかもクリーンシートで終わってしまうのでしょうか。81分、混戦からの浮き球を叩いたギブスのヘッドはGKの正面。アレクシス・サンチェスを右サイドにスイッチしたのはよかったと思いますが、83分、17番からのパスをフリーで受けたチャンバースのボレーも左に外してしまいます。クリアを直接叩いたイオビのミドルはDFがブロック。もう時間がありません。88分、ついにきたウェルベック!エジルのヒールパスに左から抜け出し、冷静に右隅を捉えたシュートは見事でした。さらに1分後、イオビのミドルがポストを直撃。リバウンドを振り向きざまに放ったウェルベックのシュートは、今度は右に逸れてしまいました。

思い出したように猛攻を仕掛けたホームチームにとって、4分の追加タイムは短すぎました。始めるのが遅すぎた夏休みの宿題は、あと数分あれば埋められたかもしれませんが、アンドレ・マリナーさんに数年前の人違いレッドカードの借りを返す気はなかったようです。敗因は、焦りでしょう。ペナルティエリア付近で、いつも通りにプレイしていたのはエジルとジョエル・キャンベルぐらいで、力んだシュートや正確性を欠いたパスが目立ちました。2失点めのグェディウラのシュートは素晴らしかったと思いますが、その前からカウンターの際にギブスもジョエル・キャンベルも彼についておらず、どこかでフリーのシュートを許すのは想像できたことでした。左右の選手をスイッチするときは、カバーエリアにおける危険を確認しておかないと、ときどきこういうことが起こります。

必然の敗退。私の嫌な予感は、当たってしまいました。アーセナルに残されたチャンスは、勝ち点8差に離されたプレミアリーグと、バルセロナから3点獲らなければならないチャンピオンズリーグだけとなりました。攻撃が単調なワトフォードは、負けてはいけない相手だっただけに、この終わり方は残念です。

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“遅かった最後の猛攻…正確性を欠いたアーセナルは、ワトフォードに敗れてFAカップ3連覇はならず!” への8件のフィードバック

  1. セオ より:

    ハルとの再試合を除けば、バルサ戦以降、全て2失点以上していれば、勝てないですよね。最近の試合はいつも一緒のパターンです。ユナイテッドがやったガナーズDFラインへ猛プレッシャー作戦をあの試合以降みんなにやられ、ぽっかり空いたスペースをあっさり使われて失点、攻撃もみんなサイドで持ちすぎてクロスを入れても誰もおらず、持ちすぎるとカットされてカウンターで失点…。相手チームはアーセナルを倒すための戦術を確実に実行するのに対し、こちらは戦術とゆうより個人技のみにしか見えないとゆう…。チームとしての手詰まり感が半端ないと感じずにはいられません。

  2. グローリーグローリー より:

    GL敗退か2位通過かという違いはありますが、悲惨に悲惨を重ねてるユナイテッドとあまり変わらないシーズンに気づけばなってますねアーセナル。コクラン、サンチェス、カソルラ不在時をキャンベルなどの台頭で力強く乗り切ったアーセナルに待っているのは素晴らしい未来だけかと思ってましたが。おそらくジルーかウォルコットがまた得点量産モードに入って今季は4位以内でフィニッシュすると思いますが、バルサに歴史的な大敗でもくらったらチームが壊れてしまうのではという不安があるのも事実だと思います。ベンゲル解任は毎年のように噂されてますが、今回ばかりは実際に起こりそうで怖いですね

  3. makoto より:

    セオさん>
    個別的にいえば、カソルラ、チェフ、コシールニーの不在が大きいのだとは思いますが、そうはいってもこのメンバーでスワンズやワトフォードに負けてはいけません。アレクシスとガブリエウの不振が気になりますね。開幕当初のガブリエウはあんなにマークが緩い選手ではなく、今季は期待していたのですが…。

    グローリーグローリーさん>
    私も、アーセナルはいけるのではないかと思ってました。チーム全体に、自信と余裕のなさ、焦りが感じられます。とはいえ、まだプレミアリーグ優勝の可能性を残しているわけですから、サポーターのみなさんは監督退任要求の横断幕などはやめて、ポジティブに応援すべきではないかと思います。苦境に陥っているチームのホームグラウンドにネガティブな雰囲気を蔓延させるのは、自殺行為以外の何物でもないでしょう。

  4. だしまる より:

    いつもながら分析&実況楽しみにしております。プレミアリーグ、欧州の強豪に対して戦術的な遅れがあるのではと気になります。バイエルン・パリSG・ドルトムント・バルセロナなどに対して完敗&不調を引きずる原因は深いような。選手の能力だけであれば資金力のあるプレミアリーグは決して負けていません。マンUを出されたディ・マリア、チチャリート(失礼(-_-;))の活躍を見てもリーグ全体の質量はナンバーワンかと。サッキ革命と同じくペップ世代によるサッカー戦術革命がプレミアには届いていないのではと偏向思考になってしまいます(T_T)

  5. queen より:

    細かいところを言えばチェンバースのクロスが良くないとか、エルネニーのシュートが良くないとか、ガブリエルのマークが緩いとかありますが、
    負けてる時のチーム全体のムードが明らかに良くないですね。
    ひっくりかえしてやる!という気持ちがあまり感じられません。
    ご指摘の通り、どのチームにも多かれ少なかれそういう傾向はありますが、
    アーセナルは特にそれが強いと感じます。

  6. makoto より:

    だしまるさん>
    「ペップ世代によるサッカー戦術革命がプレミアには届いていないのでは」
    →これは根が深そうですね。先週末発売の「フットボリスタ」に、「ペップ戦術はマン・シティのどこを変える?」という記事を書かせていただくことになったとき、ここ3年のバイエルンの試合を10日ほど見まくったのですが、フォーメーションが4~5種類あり、しかも試合中にコロコロ変わるなどプレミアリーグとのギャップをあらためて感じました。よく、選手について「プレミアリーグに合わない」という表現を目にしますが、これは合わないというよりは、「単純な役割に押し込められて力を発揮する余地が少ない」状態であることのほうが多いのではないかとすら思います。来季、ペップがワトフォードのようなシンプルなチームにどう勝つのか…革命が起こる予感があり楽しみです。

    queenさん>
    そうなんですよね。ムードがよくないです。エジルはイライラ、アレクシスとガブリエウは気負い過ぎで、ジルーは自信なさげ。エルネニーはネガティブな雰囲気が伝染して余裕なし、といった印象です。

  7. ヤンガナ大好き より:

    FA敗退、本当に残念な結果でした!敗因、挙げたら切りがないですが一番はピッチ上の真のキャプテン不在が一番だと思います!メンバーに渇を入れ、吠えるリーダーが不在で、何かバラバラに綺麗なサッカーをしている印象でした。

    メルテザッカーは優しすぎです。そう考えると来シーズンからキャプテン予定のチェフ不在は計り知れないほど大きいのかも知れません。

    バルサには玉砕覚悟で戦い、週末はホーム連敗を阻止すべく意地をみせて欲しいです!

  8. makoto より:

    FA杯に続きCLも敗退濃厚そしてリーグも優勝レースから弾かれる可能性、と悪夢のような1週間…
    カーリングカップ決勝でバーミンガムに負けて以降ズルズルと調子を落としていった10-11シーズンを思い出しました。あの当時の面子はロシツキー以外?いないと思いますが、チーム状況はあまり変わってない気がします。

    同じ轍を踏むか、もしくはここから奇跡の逆転劇か…後者を信じるハートの強さはありませんが
    まずは明朝のベニテスの初陣に期待です(他力本願)

    —–
    ヤンガナ大好きさん
    チェフ、コシールニー、カソルラと外せない選手がいないのが厳しいのは間違いないですね。特に、チェフです。

    FDNさん>
    岡崎がやってくれちゃいましたね…。エヴァートン戦、必勝です。

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