プレミアリーグ2年間の苦悩。香川真司、秒読みのドルトムント復帰は考えうる最高の移籍!
プレミアリーグ開幕前、インターナショナルチャンピオンズカップでマンチェスター・ユナイテッドが優勝し、香川真司がチチャリートへのアシストを決めるなど、それなりの貢献をしていたときは、多くのマスコミが「香川残留」と報じておりました。スタメンで試合に出る機会はなく、セントラルMFでは使われないのは明らかでしたが、日本代表の10番はマタの控えのトップ下として、国内カップ戦を中心にピッチに立つものと思われておりました。
本人がマンチェスター・ユナイテッドでチャレンジする意向を示していたこともあって、8月中旬以降は獲得を希望する具体的なクラブ名もまったく出なくなりました。日本では「香川真司は移籍したほうがよい」という声は根強くありましたが、獲りたいクラブがなければ移籍は実現しません。そして、プレミアリーグ開幕。状況が変わったのは、第2節のサンダーランド戦に引き分け、香川真司を使わなかった理由を記者に問われたファン・ハール監督のこのコメントからでしょう。「香川はアメリカ遠征で、私の思いや哲学を満たせなかった」。この言葉の裏にあったのは、「6番・8番のポジション=セントラルMF」としては守備での貢献が不足しているということであり、香川真司もまた、トップ下で試合に出たいと要望したのだと思われます。
サンダーランド戦後に本人と監督の間にどんな会話があったのかはわかりませんが、セントラルMFに限った話とはいえ、監督が公然と「使わない理由」を語ったことが、香川真司に移籍を決断させるトリガーとなったのではないでしょうか。おそらく、ここから代理人は動き始めたはずです。「ユヴェントスのビダル獲得、スポルティング・リスボンのカルバーリョ獲得のためのトレード要員」というイギリス紙単独報道のゴシップは、それぞれ「インディペンデント」「テレグラフ」の創作を色濃く感じますが、バレンシアとドルトムントが香川真司に興味を持っているという話は、イギリス紙だけでなく、スペインやドイツのメディアも報じた有力な情報。両クラブとも、「残留と聞いてたから黙ってたけれど、本人に出る気があるなら獲得を考えますよ」といったところだったのでしょう。
かくして、クロップ監督が高く評価し、クラブを離れて2年を経た現在もサポーターが復帰を熱望しているという香川真司は、自身がプレイする場を古巣ドルトムントに決めたようです。プレミアリーグ参入時は、サー・アレックス・ファーガソンとギルCEOが1600万ユーロ(約21億9000万円)を投資したトップ下も、プレミアリーグ2年めとワールドカップでの不調、控え選手というポジションが相まって、1000万ユーロ(約13億7000万円)まで目減りしたといわれています。
私は以前から、「移籍するなら、欲しがってくれているチームにいってほしい」「出場機会を求めて安易に主要リーグ以外のクラブにいってしまうと、欧州の第一線にリトライするチャンスはなくなってしまう」と書かせていただいておりました。2012-13シーズンにチャンピオンズリーグ準優勝を遂げ、今季も欧州ナンバーワンを争うドルトムントは、今となってはキャリアアップといってもおかしくない移籍先です。復帰したら、さっそくムヒタリアンとのポジション争いが待っていますが、マンチェスター・ユナイテッドに残るよりも格段に活躍の機会は増えるはずです。いや、よかったですね。
最後に、「香川真司にとってのプレミアリーグとマンチェスター・ユナイテッド」を私なりに総括してみたいと思います。当時のサー・アレックス・ファーガソン監督に直々に口説かれ、前途洋々だった香川真司にとっての最初の誤算は、「ファン・ペルシの電撃移籍」でした。これは、サー・アレックス・ファーガソンの衝動買い。伝統的な4-4-2に限界を感じ、欧州で勝てるスタイルを模索していたファーガソン監督は、香川獲得時はルーニーと縦に並べて、レヴァンドフスキとのコンビの再現を考えていたはずです。しかし、オランダ人ストライカーの加入で2トップのほうが魅力がある状況となり、プレミアリーグが始まるとファン・ペルシの左足が次々と負け試合をひっくり返し、香川真司は負傷でチームを離脱。計画は、完全に頓挫します。
それでも、ファーガソン監督は最後まで、「ファン・ペルシ、ルーニー、香川真司の共存」の形を追求していました。奥の手は、ルーニーのセントラルMFコンバートでしたが、これをエースが拒絶して移籍志願報道まで出ると、直後にファーガソン監督は引退。後任がモイーズ氏に決まると、話はゼロに戻ります。プレミアリーグ1年めには2ヵ月の離脱期間がありながら、20試合6ゴールというまずまずの成績を挙げた香川真司は、「今季は躍進の年となる」とファーガソン氏から太鼓判を押されていたにも関わらず、モイーズサッカーではサイドに追いやられ、冬市場でのマタ加入で完全にレギュラー奪取の望みを失いました。今季になってやってきたファン・ハール監督は、当初からマタありきで、香川真司のレギュラー起用など頭をかすめたことすらないでしょう。
香川真司を必要としたのは、あくまでもサー・アレックス・ファーガソン個人であって、過渡期を迎えたマンチェスター・ユナイテッドではありませんでした。サッカー関連の掲示板などをみると、「香川真司はプレミアリーグには向いていないのでは?」などとよくいわれておりましたが、私はそうは思いません。もし、プレミアリーグでの1年めが終わったとき、香川が「国内で移籍したい」といったとすれば、複数のクラブが欲しがったと思います。ヘンダーソンがブレイクする前のリヴァプール、「FCベイル状態」からの脱却を図ろうとしていたトッテナム、エジル獲得前のアーセナル…。彼らが実際に動いたかどうかはわかりませんが、ここでいいたいのは、「香川真司のような才能に対するニーズは、プレミアリーグのトップクラブのなかにも存在する」ということです。
私の結論は、「香川真司には上司運がなく、自ら逆境を変える気概も不足していた」。欧州でポジションを獲るなら、自ら周囲に要求し、ときにはエゴイスティックにプレイをアピールする強さが必要でしょう。「不要報道」から一転、ACミランで再評価され始めている本田圭祐や、「おじぎパフォーマンス」「相撲パフォーマンス」で日本と自身のキャラをアピールして、今やインテルの顔となった長友佑都、チームメイトの信頼と理解を完全に手の内に入れた岡崎慎司らを見ていると、マンチェスターにおいて香川真司に足りなかったものがそこにあるような気がします。
とはいえ、すべてはもう過ぎた話。マンチェスター・ユナイテッドサポーターとしては、自分の応援するクラブで、日本代表選手が主軸として活躍して欧州制覇を果たすかもしれない、という最高の夢をみせてもらったかけがえのない2年間でした。いちばん上の写真は、プレミアリーグ1年めに、負傷した香川真司の復帰戦をオールド・トラフォードで観たときのものです。ありがとう。ドルトムントに戻ったら、自分の力でトップ下のポジションを勝ち取ってください。冬のマンチェスターの、刺すような寒さと降りやまない雨を思い出しながら、香川真司の復活を心から願っています。
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年末のWBA戦ですね。僕も見に行っていました^^
贔屓目かもしれませんが、スタメン発表の時の香川への歓声が、ほかの選手の時よりも大きく、誇らしい気持ちになったことを覚えています。
これからが正念場ですが、ドルトムントでもう一度輝く姿がみたいですね。
ファーガソン元監督に誘われ、控え要員ではありましたがレアル時代にモウリーニョ監督も誘ったと言っていましたし、いい選手に間違いないと思います。ただファーガソン元監督が辞められてから監督運が無かったですね。日本人の良さでもある控えめな性格であの状況は厳しかったと思います。ぜひドルトムントで真の香川が見れることを祈ってます。
UKさん>
おお、そうでしたか!そう、あの試合の香川真司への歓声は凄かった。よく覚えてます。寂しいですが、早く香川ゴールのニュースを聞きたいですね。
香川古巣復帰ですかー。できればスペインのほうに挑戦してほしかったですが今の状況では厳しいですよね。
ドルで昔の輝き取り戻してほしいですね。
CLでうちとやるときはお手柔らかにお願いします・・・。
香川はソロではなくアンサンブルで輝くタイプだっただけに「上司運」のなさは決定的なファクターでした。
それにしても、「薬も過ぎれば毒となる」という言葉があるように、今後のManchester Unitedの歩みの如何で、Van Persieという存在が「カンフル剤ではなく毒まんじゅうだった」と語られる日が来るやもしれません。
個人的に香川にプレミアトップクラブでやる実力があったかどうかはわかりませんが移籍するならプレミア内にして欲しかったなと。
香川自身にとっては暖かく迎えてくれるドルトムントに出戻りで間違いなく出場機会も増えますが彼の更なる成長を考えればプレミアで頑張って欲しかったですね
ブンデスでは2強以外がやはり実力差がありますし(レヴァークーゼンもいますが…)ブンデスでやれる実力は証明済みな訳ですから…
最大の不運はガム爺さんが引退したことだったなぁ…
ガナさん ASAPさん 明日エコトさん>
スペイン、プレミアリーグ内、古巣とあるなか、私も自分の希望だけでいえば、「マンチェスター・ユナイテッドを離れる時は、プレミアリーグのチームへ」でした。とはいえ、今はとにかくドルトムントで結果を出してください!ですね。みなさんのおっしゃるとおり、理解者ファーガソン氏の離脱が最大のターニングポイントだったと思います。
こんにちは。私はレッズファンですが、香川は同じ日本人としてPlayを追いかけておりました。プレミアでは残念な結果でしたが、いつの日かCLの舞台で、ドルトムントの主力としてオールドトラッフォードへ行き、強烈な恩返しをすることを期待してます!
ドルトムントも怪我人続出の状態にあって、現在の嫌な空気を二連覇の立役者に変えてほしいという思惑もあるのかもしれませんね。
適正の無いポジションで使い続けたモイーズよりは意思表示がはっきりとしたファンハールのほうがビッグクラブ向きの監督だと感じます。とりあえず選手の入れ替えが済んだ辺りからユナイテッドの成績も上向いてほしいものです。
香川についていえばフィジカルを鍛えるだけでなく、別の武器も磨いていく必要があったと思います。フィジカルを鍛えただけではプレミアの当たりには勝てません。マタが守備しないのはフィジカルが弱いことを意識してのことだと思いますが、香川はその辺をどう考えていたんでしょうか…。
Mackiさん>
そうですね。CLの決勝トーナメントで活躍する香川真司が観たいです。ただし、その舞台は、オールドトラフォード以外を希望いたします。
Uボマーさん>
ファン・ハールさんは、選手の適性を見極めてうまく使うというよりは、自分のサッカーに適性のある選手を持ってきたい監督だと思われますので、あと3日で獲るべき選手をきちんと獲ってほしいですね。香川真司については、コントロールのきいたミドルシュートを磨けばよかったのではないかと思いました。連携からゴール前に飛び出すしかないトップ下では、センターを固めてプレミアリーグの下位チーム相手には限界もありますので。
奇しくもドルトムントはヌリ・シャヒン、香川と2年連続で出戻り選手を
迎えることになりますね。
昨季散々だった代表のライバル本田も復活の手応えを掴みつつあるようですし
香川も輝きを取り戻すべく頑張って欲しいです。