香川真司のプレミアリーグ1年め (4)モイーズは香川をどう使う?
エヴァートンを上位に押し上げたモイーズサッカーで注目したいのは、「前線の選手の連係」「中に切れ込んでくるサイドMF」です。ファーガソン監督のチームは、ディフェンスラインと中盤からサイドへの展開には約束事があり、システマティックなのですが、中盤でボールを持った時の前線の動きに関しては、ファン・ペルシやルーニー、香川に自由にさせていたように感じます。それは、基本的にはサイドで数的優位を作って崩し、クロスから決めることを基本としており、前線をうまく絡めて中央から崩す形はあくまでもオプションのひとつだったからなのでしょう。前線の選手にいちばん徹底させていたのは、サイドから突破した時、ニアとファーサイド、中央に最低3人の選手が入ってくること。中央においては、ルーニーの創造性やファン・ペルシの足技にまかせており、そのことがまだ信頼性が高くなかった香川に有効なボールがなかなか出ない理由になっていたのではないかと思います。
エヴァートンでは、前線にボールがフィードされたとき、アニチェベ、イェラヴィッチとフェライニが程よい距離を保ち、フェライニの落としやアニチェベのポストプレーに他の攻撃的選手がうまく絡むようにコンビネーションを構築していたように見受けられます。だとすればモイーズ監督は、香川とファン・ペルシ、ルーニーの関係にも明確な戦術を築き、香川がFWとより近くでプレイできるようにするのではないでしょうか。そうなると、今までなかった「マンチェスター・ユナイテッドのセンターアタック」の形が頻繁に観られることになります。香川真司の強みである「プレイの選択肢、パスのバリエーションが多いこと」が最大限に活かされるフォーメーション。これにチチャリートやウェルベックが絡むのもおもしろいですね。考えているだけでワクワクします。
そして、モイーズサッカーのもうひとつの特徴は、ミララやピーナール、ナイスミスなどのテクニカルなMFを中へ切れ込ませるなど、サイドにおいた選手に多彩なプレイを求めることです。香川真司がいちばん輝くポジションはトップ下であるのは間違いありませんが、サイドでも得点にダイレクトに絡むプレイはできますし、チャンスの匂いをかぎ分けてゴール前にタイミングよく入ってくるセンスは抜群です。トップを2枚並べてアタックを強化したいとき、香川とトップの関係やサイドバックとのコンビネーションを熟成させれば、今季よりもさらに有効なフォーメーションになるかもしれません。エヴァートンファンのみなさんには申し訳ありませんが、エヴラの後継者として、レイトン・べインズが来てくれたらうれしいのですが…。
決して一流揃いとはいえないDF陣で、マンチェスター・ユナイテッドやトッテナムよりも少ない失点でシーズンを終えたモイーズ監督のことです。香川に対する守備の要求も厳しくなるでしょう。しかしそれも、成長のためのいい機会。むしろ、約束事が明確にあるなかで個性の発揮を求められる状況は、ドルトムント時代にクロップ監督に鍛えられた香川にとっては望むところでしょう。今から、シーズン開幕が楽しみです。
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