【番外編その2】チチャリートと香川真司…コンフェデレーションズカップにみる彼我の差
対して香川真司はどうでしょうか。ドルトムント時代にも、マンチェスター・ユナイテッドでも彼がよくみせる「ゴール前でスペースを見つけて入り込み、ボールを呼び込む」「DFラインの裏に抜ける」といったプレイがほとんど見られず、本田圭祐ともども、相手のDFの前でボールを受けてパスをまわすプレイに終始してしまっているように見えます。ワントップで戦うチームは、2列めの選手がいかにゴール前に入っていけるかが点を獲るための重要なポイントになりますが、岡崎以外にその動きが少ないため、サイドから可能性の低いクロスを送ってカットされたり、ペナルティエリアの外から何とかシュートを打って終わるぐらいしか攻撃の芽がありません。チームが違えば役割やポジションが違うのは当然ですが、それとは別に、香川真司が自身の持ち味を発揮できていないのが気になりました。
本田が連呼したためか、「個」とか「格」といった言葉がメディアをにぎわす昨今ですが、結局のところ、相手のレベルが上がっても自らが得意とするプレイができるかどうか、有利な形に持ち込めるかどうかが重要なのだと思います。メキシコ戦で目についたのは、「トップと2列目に執拗にプレッシャーをかけられると日本のパスワークは機能しない」「相手のミスを一発でマイボールにできない」といったシーン。すなわち、相手のプレッシャーがあるとパスやトラップが不正確になり、普段通りにプレイできなくなるということです。ひとりひとりのレベルが上がることをただ期待するのでは、「あと1年」はあまりに時間がありません。やろうとしているサッカーが複雑になってきているので、2010年ワールドカップでサイドからの攻撃を志向したように、狙いをシンプルにして、チームの徹底度を上げるのも手かもしれません。
最後にひとつだけ。「ザッケローニ監督解任を議論すべき」などという意見も出ているようですが、勝ちにいった大会ならともかく、そうでないなかで、勝ち点が奪えなかったからいきなりクビ、という後出しジャンケンはいかがなものかと思います。日本サッカー協会の強化担当技術委員長である原さんは、「収穫も課題もあった。この経験は大きい。今勝つことではなく、1年後の本番のことを考えてやっている」と語っています。ザッケローニ監督の選手交代がやり玉にあがることが多いですが、イタリア戦などで、逆にプランデッリ監督の選手交代を批判しないのはなぜでしょう。「ピンチと見るや、的確に交代」などといいますが、スタメンを失敗したから前半で前の選手を代え、後半、右SBを補強せざるをえなくなったわけです。ザッケローニ監督はチェンジオブペースがうまいとはいえず、選手交代も疑問が残ることが多いですが、チーム作りやスタメン選定、試合ごとの戦術を含めて、トータルに評価すべきです。交代だけをとっていえば、ベニテス監督やヴェンゲル監督など、プレミアリーグでもうまいとはいえない監督は多いと思います。しかし彼らのチーム作りには、それぞれ素晴らしい哲学や技術があり、結果としてチームを上位に押し上げているわけです。くれぐれも、熱くなりすぎて部分的かつ近視眼的な評価にならないようにしたいものです。自戒を込めて。
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