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2014.02.15 香川真司

大丈夫か、本田圭祐…ACミランで機能しない背番号10にみる、香川真司との共通項

ソチオリンピック、羽生結弦くんの金メダルとインタビューを見届けると、4時45分。今週末はプレミアリーグはないけれど、FAカップの中継はあるのだろうかとJスポーツの番組リストを確認していると、ちょうどACミランVSボローニャのキックオフでした。ACミランは、ただでさえ4位と勝ち点18差の9位と低迷しているチーム。フロントが現場に口出ししてくるクラブが好きじゃないこともあり、普段なら間違いなくスルーですが、本田圭祐がどういうプレイをするのかが気になって、ついつい観てしまいました。

試合自体は極めて凡庸な試合で、運動量と連携の足りないホーム・ACミランが拙攻を繰り返し、ボローニャに大苦戦。カウンターからきわどいシュートを再三打たれながら、残り5分に昨季までプレミアリーグのお騒がせ男だったバロテッリが超絶無回転ロングシュートをぶち込み、1-0で何とか勝利を手に入れました。しかし、バロテッリはこれだけの身体能力とシュート力がありながら、なぜどこにいっても移籍の噂が絶えないのでしょうね。やはり相当、扱いづらいのでしょうか。最近、アーセナルが獲得するという報道がありましたが、若き日のナーバスなアネルカやアデバヨル、ベントナーを手なずけた、プレミアリーグNo.1の猛獣使い・ヴェンゲル監督なら、彼を開花させてあげられるかもしれません。

それはそうと、今回は本田圭祐の話です。この日の彼は、結論からいえば「機能せず」でした。シュートは1本、彼らしい決定的なパスもこれといった見せ場もなく、66分に点取り屋パッツィーニと交代となってピッチを後にしています。この日は、ワントップを張るバロテッリの下に、フラムから新加入のターラブト、カカ、本田と並ぶ布陣でしたが、ターラブトが積極的にボールに絡み、ドリブルでチャンスメイクをしていたので、日本のメディアはこぞって「ライバルにポジションを奪われるピンチ」と書くでしょう。そんな話じゃないのに…と反論したくなるところではありますが、本田圭祐がよくなかったのは事実。こういうゲームでは何を書かれても仕方がないとも思います。

この日の本田を観ていて、ひとつ気になることがありました。「前線に入り込んでもパスが出てこない」「シュートが打てない」「バックパス・横パスが多い」…そう、こうして並べてみると、マンチェスター・ユナイテッドで苦しんでいる香川真司の話をしているようです。セカンドストライカータイプで、キレのいい飛び出しとシュートセンスが魅力の香川真司と、フィジカルが強くて中盤でポイントが創れ、パサータイプの本田圭祐は強みが違う選手なのですが、なぜ、これだけ共通項があるのでしょうか?

これは、「日本人選手が機能しなくなるときの共通項」といっても過言ではないと思われますが、端的にいえば「チャレンジしてこない攻撃的MFは、敵にとっては怖くないし、味方にしてみれば頼れない」ということではないでしょうか。本田圭祐も香川真司も、よほど有利な態勢にならない限りは、縦にドリブルで突破を図ることがなく、強引に中に斬り込むシーンも稀です。彼らの基本姿勢は、パスワークでの崩しであり、「確率の高いプレイ」「リスクの小さい選択」をすることが多いのです。ドルトムントでの香川真司や、CSKAモスクワでの本田圭祐のように、他の選手の信頼が得られており、彼らにボールを集めて彼らのために周囲が動くような状況であれば活躍できるのですが、連携が取れないとあっけなく消えてしまうわけです。

これを「周囲が使ってくれない」とぼやくのは簡単ですが、プレミアリーグやセリエAの強豪クラブであれば、自ら状況を打開できないとスタメンから外され、あっという間に構想外の烙印を押されてしまうこともあります。こういうことをいうと、「ドリブル突破がウリじゃないんだからしょうがない」「抜けないのにチャレンジしたらチャンスをつぶすのではないか」という反論もあるかもしれません。総論でいえば、それはそれで正しいと思います。しかし、イーブンの体勢なら、つぶされるのを覚悟で何回かはチャレンジしなくてはいけません。縦に抜くのが難しければ、横に出して強引に打つのです。そうしないと、「縦を切って、パスを出す瞬間に足を出せば済む、楽に守れる選手」「パスを出しても弱気に戻してくるだけで、点がほしいときに預けたくない選手」になってしまうではありませんか。

プレミアリーグで彼らの模範となる選手、すなわち「ボールがなかなかもらえないゲームでも攻撃に関与できる選手」「悪いときでも消えにくい選手」は、エディン・アザール、ダヴィド・シルヴァ、サンティ・カソルラあたりでしょう。それぞれドリブルがうまい選手ではありますが、アザールはともかく、シルヴァやカソルラはドリブルで完全に相手を抜き去るシーンはさほどありません。それでもときに、強引に持ち込んでシュートを打って敵の脅威になるから、味方からボールも集まり、裏が空いてチャンスを創れたりするのです。

これは、決して本田や香川に出来ないプレイではないと思います。香川真司はヤヌザイやA.ヤングよりプレイの幅が広く、本田はターラブトよりは明らかにクオリティが高い選手です。2012年のドイツカップ、DFBポカールでバイエルン・ミュンヘンから5点を奪って優勝したとき、香川真司は強敵を翻弄して1ゴール1アシストを決めており、間違いなく「チャレンジする選手」でした。日本代表のダブルエースには、リスクを恐れずもっともっと強引に仕掛けることで、敵のDFラインはもちろん、自らの未来をも切り開いてほしい。そんなことを想った久しぶりのセリエA観戦でした。

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“大丈夫か、本田圭祐…ACミランで機能しない背番号10にみる、香川真司との共通項” への3件のフィードバック

  1. プレミア大好き! より:

    なるほどー。

    これからも是非気が向いたら本田の記事お願い致します!

  2. ウィルシェア より:

    更新お疲れさまです

    前節のアーセナルといいやはりゴールへの意識、縦への意識は選手、チームに関わらず多少強引でも恐さは生まれませんよね。自分もサッカーやってたんで足元はなくてもとにかく突破してくる選手はこねる選手より嫌なものでした。

  3. makoto より:

    ウィルシェアさん プレミア大好きさん>
    そうなんです。アタックしてこない選手は多少持たせても大丈夫という守り方をされるので、相手にスキもスペースも与えてもらえなくなると思います。本田圭祐も、折にふれて観ますので、また何らか書くと思います。よろしくお願いします。

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