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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

招聘から4ヵ月。現地メディアがまとめた「クロップ政権の評価と課題」がおもしろい!

イギリスメディア「スカイスポーツ」が、おもしろいレポートを掲載していました。「Jurgen Klopp so far: Assessing his impact as Liverpool manager(これまでのユルゲン・クロップ~リヴァプールマネージャーとして彼が及ぼす影響を評価する)」。この記事は、10月からプレミアリーグに初参入したユルゲン・クロップ監督とリヴァプールに関して、さまざまな角度からデータを検証し、もたらした効果と今後解決すべき課題を提示しています。

主将のジョーダン・ヘンダーソンが「a real positive impact(真にポジティブな影響を与えている)」「just keep getting better and better(どんどんよくなり続けている)」と表現した新しいボスは、その勝敗を見ると、決していいとはいえません。最初の10試合を6勝3分1敗、勝率60%で通過したときは、リヴァプールファンは「短期間でチームをこんなに変えられるのか」と驚嘆し、バラ色の未来を夢想したことでしょう。プレミアリーグでは、チェルシーに1-3、マンチェスター・シティに1-4と、昨季優勝クラブと2位相手にアウェイで完勝。11戦めにあたるキャピタルワンカップ準々決勝のサウサンプトン戦では、敵地セント・メアリーズでオリギがハットトリック、スタリッジも2ゴールと畳みかけて1-6と圧勝しています。クロップレッズのベストバウトといえるこのゲームで活躍した2人のストライカーが、その後負傷で戦列を離脱したことも、新指揮官の戦い方を難しくした大きな理由でしょう。セインツ戦以降、ハムストリングを痛める選手が続出し、年末までの6試合を2勝2分2敗と停滞。1月の戦績も冴えずに最近5試合は勝利なし。公式戦29試合で12勝9分8敗は勝率41%、プレミアリーグ17試合を6勝5分6敗は35%で、下位クラブに対する取りこぼしや、減らない失点に困惑するサポーターも多いと思われます。

マンチェスター・シティ戦での輝かしい勝利の裏には、ニューカッスル、ワトフォードに対するふがいない敗戦。キャピタルワンカップ決勝進出と、プレミアリーグの苦戦。「スカイスポーツ」は、前任者ブレンダン・ロジャースの勝率52%、その前のケニー・ダルグリッシュの43%という数字を挙げ、クロップ政権はホジソン時代の35%と同等で結果は出ておらず、光と影のコントラストがはっきりしていると評しています。それでは、新指揮官の不安定な戦いぶりは、ロジャース時代より劣ると判断すべきなのか?この問いに対して、記事では興味深いデータを2つ紹介し、リヴァプールはよりアグレッシブに戦うようになっており、勝敗だけで否定するべきではないと主張しています。ひとつは、「チャンスメイクの数」。そして今ひとつは、「運動量とスプリントの回数」です。

クロップ監督就任以降、プレミアリーグで創ったチャンスは236回。この数字は、得失点差でリーグTOPに立つトッテナムの220回を上回り、レスターと並ぶ最多得点のマンチェスター・シティが残した208回を凌駕しています。ロジャース監督時代には1試合あたり108kmだった総走行距離は、クロップ監督以降は112.7kmまで伸びており、474回だった試合あたりのスプリント回数は557回と激増。「フルスロットル」というマニフェストに嘘偽りはないことを証明しています。当面の課題は、2つでしょう。守備におけるミスの多さと、フィニッシュの精度です。

「シュートにつながるミスの多さ」を数えると、リヴァプールは25回。エヴァートンとアストン・ヴィラの22回、アーセナルの23回を上回り、プレミアリーグNo.1です。多くのチャンスを創りながらもプレミアリーグ17試合で24ゴールしか決められていない詰めの甘さを解消し、最終ラインとGKのミスを減らすことができれば、このチームは上位進出が狙えるのです。

クロップ監督就任後の多くの時間をスタリッジ、オリギ、ダニー・イングスなしで過ごしたことを思い出せば、前線にはさほど新戦力は要らないでしょう。得点力のあるトップ下、ジョーダン・アイブと同じ仕事ができるスピード系のサイドアタッカーがひとりずついればなおよしで、今の延長線上に若手の成長とエースの復調があれば、上位と戦える攻撃陣を創れるのだと思われます。補強で解決したいのは、やはり守備陣です。CBは、デヤン・ロブレンとジョー・ゴメスを残して、2~3人を市場に求めるぐらいの改革に着手してもいいのではないでしょうか。GKは、デ・ヘアやクルトワとはいわずとも、ベゴヴィッチ並みの安定感、フレイザー・フォースターのような強靭さがあれば及第点。現地メディアのレポートを見ていくと、課題が明確であることが、レッズの未来を明るいものにしているのではないかと思います。

テイシェイラ獲得合戦から降りてしまったのは残念でしたが、夏に後ろを強化して、トレーニングとターンオーバーによって負傷者の数を抑えることができれば、2016-17シーズンのリヴァプールは現在のトッテナムのようなポジションにステップアップすることができるでしょう。おもしろいレポートでした。英語ではありますが、興味がある方はこちらからどうぞ。

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“招聘から4ヵ月。現地メディアがまとめた「クロップ政権の評価と課題」がおもしろい!” への3件のフィードバック

  1. Macki より:

    更新ご苦労様です。
    順位は9位と今ひとつですが、来季は明るいシーズンだと期待して待っております。しかし、英国のスポーツ記事はいつもながら切り口が面白くためになります。このような形で配信していただきありがとうございます。

  2. リバサポ より:

    更新お疲れ様です。

    最近の不調で意気消沈しておりますが、このような記事はありがたいです。
    後ろの改革が第一なのは周知の事実ですが、キャラガーのようなキャラクターのCBがいればとよく思います。
    また、プレースキッカーもほしいとあげればキリがないですが、クロップ率いるレッズはまだまだ若いチーム、成長を楽しんで見ていきたいです。

    —–
    そろそろ夏の補強に向けて、誰を放出して、どこを獲得するのかをクロップは見極めているんじゃないでしょうか?
    一度、ブラナガンやオジョなどアカデミーをリーグ戦で使ってみてもらいたいですね。彼らがダメだったら、アカデミーは、まだ実力不足になってしまいますが…

  3. makoto より:

    Mackiさん>
    そうなんです、おもしろいんですよね。「タブロイド紙はガセネタばかり」と捨ててしまう論調には、そんなこともないですよと諭したくなります。

    nyonsukeさん>
    「闘将」と呼ばれるようなタイプと判断力がいいGKを獲得できればベストですね。

    リバサポさん>
    「勝ちながら試す」難しさをどうクリアするかですね。昨日のヒディンク監督のように、「4-0から若手登場」とできるゲームを増やせればいいのですが。

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