2024.09.03 リヴァプールの話題
3つのショートカウンターは狙い通り!スロット監督が語る「マン・ユナイテッドの弱点と崩し方」
「彼らのスタイルもまた…昨シーズンだったかな、よく覚えていないんだけど、10回中9回はフルバックの位置がかなり高く、その間にカゼミーロが入る。だからボールを奪ったとき、サラーとルイス・ディアスを高い位置に留めておければ、常に1対1の状況を作れる。そのためには、走れるMFが必要。彼らはアグレッシブにデュエルを制してくれた」(アルネ・スロット)
敵地オールド・トラフォードでマンチェスター・ユナイテッドを撃破した指揮官は、プレスルームに集まった記者たちに勝因を問われると、自らの戦術についてオープンに語り続けました。「中盤はマンマーク。7番と11番がプレスをかけ、ストライカーとどちらかのウイングが一緒にジャンプする」。3つのショートカウンターは、テン・ハフ戦術の研究の成果だったようです。
今振り返れば、オフサイドで取り消しとなった10分のゴールシーンは、「こうすれば、あなたたちは崩れるでしょう」とあざ笑うような爆破予告でした。ファン・ダイクの速いパスを右で受けたフラーフェンベルフが、トラップでメイヌーを抜き去り中央に進路を取ったとき、サラーとダロト、ルイス・ディアスとマズラフィは1対1になっていました。
右サイドを見ると、ラシュフォードの戻りが遅れており、アーノルドがフリーです。ホームチームの最終ラインは中央に集まり、4対6という厳しい状況に追い込まれました。フラーフェンベルフは左に流れ、マズラウィを1対2の劣勢にしてから、ルイス・ディアスの足元に丁寧なパス。SBを簡単にかわした7番がグラウンダーを入れると、ファーで空いていたアーノルドが押し込みました。
中央にいたサラーが触らなければゴールは認められ、メイヌーが敗因にされていたでしょう。このシーンの注目ポイントは、マック・アリスターのポジションです。フラーフェンベルフがドリブルで仕掛けると、10番は後方をケアしており、ゴール前に殺到した6人のなかにはいませんでした。2センターが連携して上下の関係になるのは、スロット戦術の特徴のひとつです。
対してマン・ユナイテッドのカゼミーロとメイヌーは連携がなく、CBの前にスペースが空くシーンが目立っていました。予告をもらったのに修正できず、ついに失点を喫したのは35分。カゼミーロが左に出したボールをフラーフェンベルフがインターセプトすると、一気に5対3になり、左サイドのルイス・ディアスはマズラウィの裏のスペースにスプリントしています。
フラーフェンベルフを外から追い越したサラーがフリーになったのは、リサンドロ・マルティネスが2人をケアしなければならなかったからです。ボックスに入ったサラーにパスが出ると、6番は必死に追ったのですが、クロスを止めるには至らず。ファーで完璧なヘッダーを決めたのは、マズラウィを置き去りにしていたルイス・ディアスでした。
42分の2点めは、敵陣中央でカゼミーロをつぶしたルイス・ディアスの守備がきっかけです。こぼれ球を拾ったマック・アリスターが7番に戻すと、右サイドのサラーが高いポジションをキープしています。ダロトとブルーノの間を通した左足アウトのラストパスと、リサンドロ・マルティネスのマークを瞬時に外して打ったルイス・ディアスのダイレクトショットは、いずれも完璧でした。
このシーンも、6人が集まってカゼミーロ包囲網を敷いていたアウェイチームに対して、もらえる位置に動いたのはザークツィーのみ。パスが通ったとしても、速いアタックはないと見切られていたのでしょう。勝負を決めた56分の3点めは、スロットの狙いとテン・ハフの欠陥が最も鮮明になったシーンでした。自陣の右でメイヌーがキープ、しかしパスコースは見当たりません。
ザークツィー、ブルーノ、ガルナチョが最終ラインに張り付いてマーカーを背負っているのに、リサンドロ・マルティネスとデ・リフトは自陣ボックスの手前に引いており、中央には巨大なスペースが生じています。前後が分断されているのを見たマック・アリスターが37番に体を当てて奪い、中央のショボスライにパスが通ると、あっという間に4対2になってしまいました。
左のルイス・ディアスはマズラウィと1対1で、逆サイドのサラーはダロトの裏にいます。ファーのウインガーがSBの裏にポジションを取っているのを見て、先制されたシーンと同じだと思いました。ショボスライからラストパスを受けたサラーは、オナナがニアを空けているのを打つ前に確認しており、ダイレクトで右ポスト際を抜いています。
ここでもスロットの中盤の連携が機能しており、マック・アリスターが奪いにいくと、フラーフェンベルフはコリヤーをケアしてアンカーの位置に下がっています。2人のセントラルMFが交互に上下動を繰り返す布陣は、プレスが空回りしても速攻を喰らいにくい構造になっています。ゲーゲンプレスのクロップと、2センターのスロットの違いが見えたシーンともいえそうです。
4つのゴールシーンを確認したうえで、スロット監督の言葉に触れると、リヴァプールは狙い通りの戦い方で会心の勝利を得たのだということがわかります。ブレントフォード戦の後、「守備意識が低いサラーを外すという選択肢を検討すべき」という微妙なレポートが出回っておりましたが、これは新指揮官の策略です。どこかで前言撤回をされたほうがいいのではないでしょうか。
視点を変えると、テン・ハフ監督はハーフタイムに交代カードを切りながら、自陣の弱点を修正できなかったということになります。ブルーノをセンターに下げてバランスを取ってもらうという選択肢もあったのではないか…。ウガルテが加わっただけでは、前線と後方の分断や中盤の連携不足は解決しないでしょう。既に厳しいシーズンになりそうな予感が漂っています。
終わってみれば、必然の0-3。この短期間でフラーフェンベルフとマック・アリスターの連携を強化し、それぞれのストロングポイントを活かしたスロット監督を称えたいと思います。Aプランが確立したら、エリオット、遠藤航、ダルウィン・ヌニェスをうまく機能させる術も見せてくれるでしょう。結論は、ひとこと。「今季のリヴァプールもおもしろい!」
敵地オールド・トラフォードでマンチェスター・ユナイテッドを撃破した指揮官は、プレスルームに集まった記者たちに勝因を問われると、自らの戦術についてオープンに語り続けました。「中盤はマンマーク。7番と11番がプレスをかけ、ストライカーとどちらかのウイングが一緒にジャンプする」。3つのショートカウンターは、テン・ハフ戦術の研究の成果だったようです。
今振り返れば、オフサイドで取り消しとなった10分のゴールシーンは、「こうすれば、あなたたちは崩れるでしょう」とあざ笑うような爆破予告でした。ファン・ダイクの速いパスを右で受けたフラーフェンベルフが、トラップでメイヌーを抜き去り中央に進路を取ったとき、サラーとダロト、ルイス・ディアスとマズラフィは1対1になっていました。
右サイドを見ると、ラシュフォードの戻りが遅れており、アーノルドがフリーです。ホームチームの最終ラインは中央に集まり、4対6という厳しい状況に追い込まれました。フラーフェンベルフは左に流れ、マズラウィを1対2の劣勢にしてから、ルイス・ディアスの足元に丁寧なパス。SBを簡単にかわした7番がグラウンダーを入れると、ファーで空いていたアーノルドが押し込みました。
中央にいたサラーが触らなければゴールは認められ、メイヌーが敗因にされていたでしょう。このシーンの注目ポイントは、マック・アリスターのポジションです。フラーフェンベルフがドリブルで仕掛けると、10番は後方をケアしており、ゴール前に殺到した6人のなかにはいませんでした。2センターが連携して上下の関係になるのは、スロット戦術の特徴のひとつです。
対してマン・ユナイテッドのカゼミーロとメイヌーは連携がなく、CBの前にスペースが空くシーンが目立っていました。予告をもらったのに修正できず、ついに失点を喫したのは35分。カゼミーロが左に出したボールをフラーフェンベルフがインターセプトすると、一気に5対3になり、左サイドのルイス・ディアスはマズラウィの裏のスペースにスプリントしています。
フラーフェンベルフを外から追い越したサラーがフリーになったのは、リサンドロ・マルティネスが2人をケアしなければならなかったからです。ボックスに入ったサラーにパスが出ると、6番は必死に追ったのですが、クロスを止めるには至らず。ファーで完璧なヘッダーを決めたのは、マズラウィを置き去りにしていたルイス・ディアスでした。
42分の2点めは、敵陣中央でカゼミーロをつぶしたルイス・ディアスの守備がきっかけです。こぼれ球を拾ったマック・アリスターが7番に戻すと、右サイドのサラーが高いポジションをキープしています。ダロトとブルーノの間を通した左足アウトのラストパスと、リサンドロ・マルティネスのマークを瞬時に外して打ったルイス・ディアスのダイレクトショットは、いずれも完璧でした。
このシーンも、6人が集まってカゼミーロ包囲網を敷いていたアウェイチームに対して、もらえる位置に動いたのはザークツィーのみ。パスが通ったとしても、速いアタックはないと見切られていたのでしょう。勝負を決めた56分の3点めは、スロットの狙いとテン・ハフの欠陥が最も鮮明になったシーンでした。自陣の右でメイヌーがキープ、しかしパスコースは見当たりません。
ザークツィー、ブルーノ、ガルナチョが最終ラインに張り付いてマーカーを背負っているのに、リサンドロ・マルティネスとデ・リフトは自陣ボックスの手前に引いており、中央には巨大なスペースが生じています。前後が分断されているのを見たマック・アリスターが37番に体を当てて奪い、中央のショボスライにパスが通ると、あっという間に4対2になってしまいました。
左のルイス・ディアスはマズラウィと1対1で、逆サイドのサラーはダロトの裏にいます。ファーのウインガーがSBの裏にポジションを取っているのを見て、先制されたシーンと同じだと思いました。ショボスライからラストパスを受けたサラーは、オナナがニアを空けているのを打つ前に確認しており、ダイレクトで右ポスト際を抜いています。
ここでもスロットの中盤の連携が機能しており、マック・アリスターが奪いにいくと、フラーフェンベルフはコリヤーをケアしてアンカーの位置に下がっています。2人のセントラルMFが交互に上下動を繰り返す布陣は、プレスが空回りしても速攻を喰らいにくい構造になっています。ゲーゲンプレスのクロップと、2センターのスロットの違いが見えたシーンともいえそうです。
4つのゴールシーンを確認したうえで、スロット監督の言葉に触れると、リヴァプールは狙い通りの戦い方で会心の勝利を得たのだということがわかります。ブレントフォード戦の後、「守備意識が低いサラーを外すという選択肢を検討すべき」という微妙なレポートが出回っておりましたが、これは新指揮官の策略です。どこかで前言撤回をされたほうがいいのではないでしょうか。
視点を変えると、テン・ハフ監督はハーフタイムに交代カードを切りながら、自陣の弱点を修正できなかったということになります。ブルーノをセンターに下げてバランスを取ってもらうという選択肢もあったのではないか…。ウガルテが加わっただけでは、前線と後方の分断や中盤の連携不足は解決しないでしょう。既に厳しいシーズンになりそうな予感が漂っています。
終わってみれば、必然の0-3。この短期間でフラーフェンベルフとマック・アリスターの連携を強化し、それぞれのストロングポイントを活かしたスロット監督を称えたいと思います。Aプランが確立したら、エリオット、遠藤航、ダルウィン・ヌニェスをうまく機能させる術も見せてくれるでしょう。結論は、ひとこと。「今季のリヴァプールもおもしろい!」
おもしろいと思っていただけた方は、お時間あれば、下のブログランキングバナーをクリックしていただけると大変うれしいです。所要時間は5秒です。何とぞよろしくお願いいたします!
コメントを残す