2025.11.22 リヴァプールの話題
モウリーニョ、ペップ…優勝の翌シーズンに連敗地獄にはまった6チームと今のリヴァプールの共通項。
2015-16シーズンのチェルシーも、指揮官と選手たちの確執によって崩壊したチームです。終わりの始まりは、ジョゼ・モウリーニョの要望に沿った補強ができなかったこと。ナーバスになった指揮官は、スウォンジーとの開幕戦でドクターのエヴァ・カルネイロさんに罵声を浴びせ、エデン・アザールをはじめとする複数の選手との関係にも亀裂が入ったと報じられました。
マイケル・エメナロTDは、クラブ史上最高の監督を解任した理由を問われ、「明確な不和があった」とコメントしています。2017-18シーズンのアントニオ・コンテのチームも、夏のマーケットでロス・バークリー、オックスレイド=チェンバレン、フェルナンド・ジョレンテを獲り逃したことが指揮官のストレスを生み、ロッカールームのモヤモヤへと伝播した感があります。
2020-21シーズンのリヴァプールが転落したきっかけは、マージーサイドダービーでピックフォードと激突したファン・ダイクの前十字靭帯損傷でした。それでも年末までは首位をキープしていたのですが、年明けからジョー・ゴメスとマティプも続々と離脱。CBの頭数が足りないという緊急事態に対処し終える前に、ごっそりポイントを落としてしまいました。
2016-17シーズンのレスターは、エンゴロ・カンテをチェルシーに引き抜かれた時点で終わっていたのかもしれません。代役として獲得したナンパリス・メンディとエンディディは穴を埋めたとはいえず、1月からの5連敗でクラウディオ・ラニエリは解任。後を継いだクレイグ・シェイクスピアの5連勝スタートは、直前までチームの雰囲気が悪化していたことを如実に物語っています。
こうして振り返ってみると、いくつかの共通項が浮かび上がってきます。ひとつは、夏の補強の失敗。モイーズはフェライニしか獲ってもらえず、ジョン・ストーンズをほしがっていたモウリーニョはジロポジを冷遇したまま解任となりました。補強に不満を抱えていたコンテも、デッドラインデーに引き入れたザッパコスタとドリンクウォーターをうまく活かせませんでした。
ユルゲン・クロップのチームは、チアゴ・アルカンタラ、ツィミカス、ジョッタというマイナーチェンジ。レスターはカンテの代役もさることながら、最終ラインを強化できなかったのが最大の敗因でしょう。そしてもうひとつ、前シーズンの優勝の立役者となったキーマンのリタイアや指揮官との確執も、停滞の要因となっています。
モイーズはリオ・ファーディナンドのグループに叩かれ、モウリーニョはアザールの態度やマティッチ、イヴァノヴィッチ、ケーヒルの不振に悩まされました。カンテを失ったレスターはマフレズのテンションが下がってしまい、コンテのチームからはマティッチとジョン・テリーが退団しています。クロップにとって、ファン・ダイクのシーズンアウトはやはり致命的でした。
優勝した直後ゆえの緩い補強、主力の不振やリタイア、ロッカールームにおける不安や不満の蔓延。昨シーズンのマンチェスター・シティも、これらのワードを使って説明できそうです。最終ラインを強化しなかった夏、即戦力の獲得はサヴィーニョとギュンドアンのみ。ロドリが激痛のシーズンアウト、デブライネは負傷離脱、フォーデンは絶不調、最終ラインはミス連発…!
さて、今季はリヴァプールが、直近の公式戦で3勝7敗と苦しんでいます。彼らにも、先人たちと同じ要因がありそうです。ダルウィン・ヌニェス、ルイス・ディアス、アレクサンダー=アーノルド、エリオット、クアンサー、そしてディオゴ・ジョッタと主軸が続々といなくなりました。彼らの前シーズンのプレミアリーグにおけるゴールを足し込むと、28発です。
代わって入ったヴィルツ、ケルケズ、フリンポン、エキティケ、レオーニ、ママルダシヴィリ、イサクの成否は、まだ語るべきタイミングではありませんが、短期的には空回りと評するのが妥当でしょう。まずまずといえるのは、エキティケとママルダシヴィリぐらいです。これまでの主力に目を移すと、サラー、コナテ、マック・アリスターは昨シーズンのレベルではありません。
スロット監督は、移籍騒動の渦中でトレーニングをボイコットしたイサクについて、「今でも30km/hを超えるスプリントを繰り返すのは難しい」とこぼしています。フリンポンに続いてブラッドリーまでリタイアとなった右のフルバックは、ジョー・ゴメスや遠藤航でカバーしなければなりません。マーク・グエイより、ユーティリティーがあるDFが必要だったのかもしれません。
「BBC」で戦術を担当するウミール・イルファン記者は、「アリソンの離脱によってビルドアップが不安定になった」と指摘しています。右利きのアリソンは、ファン・ダイクに預けるのを基本としていたのですが、レフティのママルダシヴィリは体を開かないと左に蹴れないため、コナテやブラッドリーへのボールが増えているようです。
「リヴァプールはショートビルドアップの際に、右サイドで苦戦している」。ファン・ダイクがキープしてくれれば、サラーは最終ラインの裏を狙えるのですが、自分のサイドの後方でパスまわしに苦心していると下がらざるを得ません。小さな変化の積み重ねが大きな課題につながり、現状の不振があるといえそうです。
ジェットコースターのような天国と地獄を味わったチームと、今季のリヴァプールにはいくつかの共通項がありますが、結果論だけで夏の補強を断罪しようとは思いません。ファン・ダイクとコナテが絶好調で、ブラッドリーとロバートソンが元気なら、新戦力がフィットするのに時間を要する状況でも上位にいられた可能性があります。
だからこそ、「フットボールはどうなるかわからない」という言葉があるのでしょう。今、大事なことは、指揮官と選手たちがポジティブなマインドで試合に向かえるかどうかです。負傷離脱はコントロールできなくても、ロッカールームは自分たちでマネジメントできます。スパーズ戦までの5試合は、ボトム10と昇格クラブのみ。昨季王者にとって、今こそが正念場です。
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