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偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

「ここが僕の居場所だ」…移籍騒動について語ったコウチーニョに思うこと。

裏切りだと憤っていた人も、信じたくないと肩を落としていた人も、ただひたすら残留を祈っていた人も、リヴァプールサポーターなら10番の生の声を聞きたい気持ちは同じだったのではないでしょうか。5節のバーンリー戦で、今季プレミアリーグ初先発となったフィリペ・コウチーニョが、「ESPN BRASIL」のインタビューに応えて夏の移籍騒動の顛末について語りました。バルセロナの正式なオファーは4回に及び、最後は1億1400万ポンド(約171億円)まで高騰したといわれています。リヴァプールはその都度断り、バルサ移籍を熱望していると報じられたコウチーニョは沈黙。背中の痛みを理由に10番が戦列を離れているうちに、プレミアリーグは3試合も消化されてしまいました。

8月31日、リヴァプール残留が決まっていたコウチーニョは、エクアドルとのワールドカップ予選にブラジルの11番として途中出場。76分に勝負を決める2点めをゲットした後、気持ちが昂って涙を流したというニュースを聞いて、落胆したサポーターも多かったでしょう。「そんなにバルサに行きたかったのか」「プレミアリーグに顔を出さずに、代表のゲームに出るのか」…。私も、自分が応援しているクラブの愛してやまない選手の話なら、同じような気持ちを抱いてしまうかもしれません。しかし、コウチーニョにとっては、ブラジル代表でのプレイはもう一度レッズで働くための気持ちの整理として、必要なプロセスだったのかもしれません。率直に語った彼の言葉に、耳を傾けてみましょう。

「世界中が、何が起こっていたかを知っているよね。僕がここ(=リヴァプール)でプレイした最初の瞬間から最後のゲームまで、4~5年にわたってよくしてもらっていた。僕とサポーターがお互いに抱いているリスペクトは、今も続いている。やらなければならないのは、チームを助けるためにハードワークし、ベストを尽くすことだ」
「オファーがあったのは確かだ。人生においては、興味のある仕事とそうでないものがある。今回はみなさんがご存知のとおり、僕にとっては興味あるオファーだった。家族もね。あれほど偉大なクラブからオファーをもらえるのはすごく名誉なことだね。ただし、いつもいっていたように、ここでプレイするのもすごく光栄なことだ。リヴァプールは最高のクラブ。今、僕はここにいて、これまでと同じようにベストを尽くそうとしている」

9月13日の夜、チャンピオンズリーグのセヴィージャ戦の76分にピッチに立った10番は、既に気持ちを入れ替えていたはずです。ここで出場したら、冬にスペインに渡ってビッグイヤー獲得をめざすことはできなくなります。アンフィールドで仲間とともに勝利をめざしたコウチーニョは、力みがあったのかボールが足につかず、サポーターを熱狂させてきた今までの彼ではありませんでした。2戦めとなった週末のプレミアリーグでは、インサイドMFとして78分までプレイ。タイミングのいいパスワークは戻っていたものの、ミドルシュートはことごとくクロスバーの上を越えてしまいました。それでも、コウチーニョは再びサポーターを狂喜させるでしょう。セヴィージャ戦でタッチライン際に姿を現した時、盛大な拍手で迎えたホームのサポーターを忘れることはないはずです。

「この1か月はとても複雑だった。でも今はここにいる。オファーを受けたのは光栄だったけど、ここにいることも同じように感じられる。4~5年の間に居場所を得て、誰とも問題を起こしていない。チームメイト、監督、テクニカルスタッフ…常にチームのサポートをリスペクトしてきた。何も変わってなどいない。どんな仕事を得ていたとしても、他の仕事に興味を持つことも持たないこともあるだろう」
「すべては終わった。仕事しないとね。できる限りいい年にしようと集中してハードワークしている。最終的にはチームを助けなければならない」

スアレスに説得されていたのではないかと問われ、「そんな話は初めて聞いた。僕はみんなにリスペクトされ、彼らをリスペクトしている。ここが僕の居場所だ」と語ったコウチーニョは、チャンピオンズリーグとプレミアリーグを戦うレッズのために、春まで全力を尽くすでしょう。コウチーニョ、ファン・ダイク、アレクシス・サンチェスといった「移籍志願しながら破談」の話に触れると、自分が応援していたクラブで最も心を動かされた破談の主役、ダヴィド・デ・ヘアをどうしても思い出します。

レアル・マドリードとの移籍話が書類遅延で白紙に戻った後、どうせ次の夏には出ていくのだろうと諦めることなく、彼を応援し続けたことを自分のためによかったと思っています。早いタイミングでマンチェスター・ユナイテッドと契約を延長し、今もなおゴールマウスに君臨してくれている守護神が教えてくれたことは、移籍はすべからく縁とタイミングであるということです。1年経てば、前の年とはまた違った事情や思いがあり、クラブと選手は近づいたり離れたりします。あのとき、デ・ヘアにネガティブな感情を抱かなかったからこそ、今も曇りなき気分で声援を送ることができます。そして今年の夏、眩しすぎるゴールシーンと爆笑キャラで一気に好きになったズラタンの去就についても、「やり残したことがあるはず。きっと再契約してくれる」と落ち着いて待つことができました。

未来がどうなろうとも、コウチーニョはあの状況でバルサに行かなくてよかったのではないかと思います。年明けにレッズ愛を語りながら契約延長したエースが、その言葉を裏切るようなエスケープを敢行していれば、選手も本人も大きな傷を抱えたまま関係を絶っていたのではないでしょうか。サッカー選手が、バルサのような世界最高峰のクラブから声がかかって翻意するのは致し方なしでしょう。卑近な話で恐縮ですが、以前に勤めていた会社で新しいプロジェクトをがんばるといっていた部下が、その2週間後に「アマゾンに転職できることになって…すみません、行かせてください」といったときの表情を思い出します。私は、彼女の夢を止められませんでした。コウチーニョも、レッズが好きだと思いながらも千載一遇のチャンスを見送ることができなかったのでしょう。

しかし今、彼は踏みとどまりました。レッズサポーターと10番は、信頼関係を修復するチャンスを手に入れました。このうえは、コウチーニョにはタイトル獲得の立役者となってほしい。あのときは心が揺れたけど、今こうしてサポーターと喜びを共有できてよかったといえるようになってほしい。もしかしたら、デ・ヘアは今もそんなことを考えながらビッグセーブを連発しているのかもしれません。2015-16シーズンのFAカップ制覇よりも、もっと大きなタイトルを7年の長きに渡って自分を育ててくれたクラブにもたらしたい、と。今季それが実現したとき、デ・ヘアの置き土産になるのか、さらなる栄光への過程となるのかは、今はわかりません。

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“「ここが僕の居場所だ」…移籍騒動について語ったコウチーニョに思うこと。” への11件のフィードバック

  1. わたひと より:

    コウチーニョ不在の中でCL予選突破、ガナーズ戦の快勝、バルサの超巨額オファー、色々な事象がコウチーニョのバルサ行きを加速させる中、FSGがまさかの(笑)意地を張り通し残留。そしてブラジル代表出場&涙。レッズOB連同様、僕も放出すべきだったと思いました。
    しかしセビージャ戦の後半、ピッチサイドに現れたコウチーニョを見た瞬間、自分でも予想していなかった熱い思いがこみ上げてきました。空気が読めるわたひとは大声こそあげませんでしたが、心の中でコウチーニョに精一杯の声援を送っていました。
    何度もデヘアを引き合いに出してコウチーニョを最後まで信じるべきと繰り返していたmakotoさんの気持ちがわかった瞬間でした。散々、苦い思いをさせられたけど、あの感動はサッカークラブを応援し続けた人達に与えられた特別なボーナスですね。
    自分が何とかせねば、信頼を取り戻さねばという力みが見え本来の調子ではありませんが、僕も過ぎた事を忘れ、全力で我等の背番号10を応援したい、そんな気持ちです。

  2. Macki より:

    更新ご苦労様です。
    複雑な思いは多々ありましたが、CLセビージャ戦とバーンリー戦では彼の気持ちは感じました。
    管理人様が再三書かれていた、デ・ヘアの事が今更ながら大いにわかります。
    チームの重要なピースである事は紛れも無い事実ですから、過去は忘れこれから長いシーズン応援していきたいと思います。

  3. プレミアリーグ大好き! より:

    思いのこもった記事ありがとうございます。
    ライバルクラブのことであろうが、決して敬意を欠くことなく素晴らしい記事を書いてくれるのがこのブログの一番素敵なところです。

    少し冷めやすい私としては、口だけではなんとでも言えるとか、あんなことしといて白白いとか思ってしまうのですが、コウチーニョを応援しといてよかったとサポーターの方達が思えるような日が来ることを願っています。

  4. プレミアリーグ大好き! より:

    白白い→白白しいですね

  5. プレミアリーグ大好き! より:

    デヘアとコウチーニョは別件では?
    デヘアはレアル移籍失敗後、マンチェスターUから「契約延長にサインしないと干す」と『脅されて』今に至っているわけで、コウチーニョと同じように『脅迫を美化』するのはいかがなものかと思いますがね

  6. プレミアリーグ大好き! より:

    デヘアが脅されたから契約を延長したとは知りませんでした。海外のメディアを含めなるべく情報を拾うようには心がけてますが、初耳でした、勉強になります!
    脅されて契約延長してもあれだけのプレーを見せてくれるデヘアには脱帽ですね!

  7. アイク より:

    移籍失敗はデヘアにとって心底不本意な結果だったと思いますが、その不本意さがプレーに表れるところを見たことがありません。
    どれだけ強靭な意志とクラブ愛を秘めていれば、そんなことが可能なのか。本当に強い男です。
    一度揺れた後どう振る舞うのか。ジェラードを愛したサポーター達は、コウチーニョの人格的な部分を見つめていることでしょう。

  8. makoto より:

    わたひとさん>
    ありがとうございます。セヴィージャ戦のあのシーンは、サポーターの万雷の拍手に心を動かされました。素晴らしいミドルを早く観たいですね。

    Mackiさん>
    気持ちは見せてくれたので、後は結果ですね。10番がトップフォームに入ればレッズは脅威です。

    プレミアリーグ大好き!さん>
    ありがとうございます。長く見続けている選手なので、情が入っているのだと思います。クロップ監督とコウチーニョがタイトルを獲得するシーンを見てみたいです。

    プレミアリーグ大好き!さん>
    スペイン発のゴシップで、そんな話がありましたね。脅されてあれだけの契約延長に至った選手も、干すと本気で脅したクラブも私は聞いたことがありません。

    プレミアリーグ大好き!さん>
    前監督に脅されたのに、その後2年もそのクラブに留まる選手がいたとしたら、私も脱帽です。

    アイクさん>
    そうですね。デ・ヘアは変わらなかったですね。物腰も、プレイも。コウチーニョも気持ちを入れ替えていいプレイをし、レッズをリスペクトし続けるのではないかと期待しています。

  9. B より:

    誰かを応援している、していた気持ちは常に本物ですもんね

  10. プレミアリーグ大好き! より:

    トラリク出してまで出て行きたがったのに却下された、って事実はずーっと残るけどね
    移籍市場が閉まったからには口には出さないだろうけど、可哀想になあ…
    まあボイコットや裏工作みたいな汚いことしなかっただけ偉いわ
    当たり前っちゃ当たり前だが

  11. プレミアリーグ大好き! より:

    トラリク出してまで出て行きたがったのに却下された、って事実はずーっと残るけどね
    移籍市場が閉まったからには口には出さないだろうけど、可哀想になあ…
    まあボイコットや裏工作みたいな汚いことしなかっただけ偉いわ
    当たり前っちゃ当たり前だが

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