「モウリーニョの3年め」か、「アブラモヴィッチの3年め」か?チェルシーの記事に思うこと。
それぞれの辞め方を振り返ると、若かりし頃のアブラモヴィッチさんには「早く世界一に」という焦りがあってモウリーニョさんとぶつかってしまったのかもしれません。解任直前、3年めの成績は2位で、チェフ、アシュリー・コール、テリーが次々とケガに見舞われるという不運がなければ、プレミアリーグではマンチェスター・ユナイテッドしか達成していない三連覇に届いていた可能性は充分です。ペレスさんがこらえ性がないのは、12年で10人の監督という数字からも明らか。チャンピオンズリーグを制覇して悲願のデシマ(10回めの優勝)を持ち帰ってくれたアンチェロッティ監督を、翌シーズンの無冠で切ってしまうせっかちな方です。しかし、彼にとってモウリーニョ監督は特別だったはずです。ご本人が望めば、ワンマン会長は4年め突入に向けて調整に動いたのではないでしょうか。メディアや主力選手との対立が深刻化し、状況的にモウリーニョさんが針のむしろだったこともあり、最終的にはペレスさんは「泣く泣く諦めた」というニュアンスだったと思われます。
「ポルトでのチャンピオンズリーグ優勝という実績を見込まれて、世界一をめざすチェルシーへ」「インテルでの三冠という実績を見込まれて、世界一の座を取り返したいレアル・マドリードへ」を2サイクルまわしたのが、一流と呼ばれてからのモウリーニョさんの足跡です。競争環境が激しいプレミアリーグと、巨人が2人いるリーガ・エスパニョーラでは、3年続けてリーグ制覇するのがそもそも難しく、あのサー・アレックス・ファーガソン監督ですら最初の6年はFAカップとカーリングカップに1回ずつ勝っただけ。上昇気流に乗ってからも、ヴェンゲル監督とモウリーニョ監督の黄金時代とぶつかった2004年からの3年間は、やはりFAカップとカーリングカップのみに終わっています。スペインとプレミアリーグという厳しい場で、短期的な成果を求めるオーナーやクラブのカルチャーが、ポルトガル人指揮官の4年めを阻んだということでしょう。
つまり、監督が長期的にチームの指揮を執るためには、クラブの長期的な視点と、将来を見据えてチーム作りができる優秀なマネージャーが両方必要なのだと思います。ちなみに、マンチェスター・ユナイテッドは、1972年以降6人しか監督を雇っておらず、4年以上やらなかったのはデヴィッド・モイーズさんだけ。このクラブには、まかせたからにはじっくりやってもらうという文化が、長い間継承されていたわけです。過去、モウリーニョ監督が3年めを迎えたクラブには、少なくとも当時はクラブ側に長期的にまかせる意向はなかったと思われます。オリバー・ケイさんは、モウリーニョさんが「ひとつのクラブに長く腰を落ち着けてじっくり仕事をするタイプではない」といい切っておりますが、私は「わからない」としかいえません。その答えは、今回のチェルシーを見てから出せばいいのではないでしょうか。
今、興味があるのは、「モウリーニョさんに4年めがあるか」よりも、むしろ「チェルシーに遠い未来を見つめる視座があるか」のほうです。今季でモウリーニョ監督が去れば、チェルシーはマンチェスター・ユナイテッドが陥ったように、プレミアリーグ6位にも入れずに欧州への道を閉ざされるリスクがあるのだと思います。ファーガソン政権の最終年と今のチェルシーに共通しているのは、最終ラインが高齢化しており、世代交代をうまくやらないと一気に崩れる可能性があることです。ヴィディッチ、リオ・ファーディナンド、エヴラが次々といなくなったマン・ユナイテッドの守備力は、ファーガソン引退から2年経った今も立て直せていません。イヴァノヴィッチ、テリー、ケーヒルがこれから衰えを見せ始めるであろうチェルシーが、今の強さをキープしながら世代交代をやり切ろうと思えば、継続的に絵が描けるトップクラスの指導者は必須。加えて、新戦力への相当な投資も必要でしょう。
「10年前にロンドンに来た頃よりも賢くなった」と語るモウリーニョ監督は変われるのか。指揮官のチョイスで試行錯誤しながら、チャンピオンズリーグには手が届いたアブラモヴィッチさんは変わったのか。チェルシーが、今までとは違うステージで戦うのか、いつか歩いた険しい道を再び歩くのかは、おふたりの意向で決まるのでしょう。この稿でいいたいのは、モウリーニョ監督には医療スタッフやDF起用などの内部的な問題を穏便に解決していただき、アブラモヴィッチオーナーには数年先を見続けてもらって、能力と情熱があるコンビで長く強いチームを創ってください、ということです。強いライバルクラブが数多くあるのがプレミアリーグのおもしろさだと思いながら、毎週、複数のゲームを楽しみにしているひとりのファンの老婆心です。
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更新お疲れ様です。私もこの記事を読みましたが、ジョゼと言うよりはアブラモビッチの問題だと思います。ただ前回ジョゼを解任してから改めてジョゼの有難味が解ったんじゃ無いでしょうか?ジョゼがリーグ制覇したのが3回で他はアンチェロッティだけってんですからね・・・。実際前回は三年目の成績より四年目にオーナーとの意見の相違でクラブを去ったが正しい解釈だと思ってます。まぁアブラモビッチオーナーもモウリーニョ監督もチェルシーファンからしてみれば神様みたいなお二人なんで末長くお付き合いして頂きたいです。
素晴らしい記事でした。チェルシーでもマドリーでも他の就任監督との比較でいえば実はモウリーニョは長い方だというのはなかなか言われないなと思っていたのですが、この記事で指摘されていてさすがと思いました。
もちろん同時に内部トラブルを誘発しがちというのも否定できないので言われる通り長期にできるかはまだわからない。何とか長くやってほしいと願ってます。
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プレミアリーグファンとしては是非残って欲しい監督です。昨今のプレミアリーグは金だけ持ってて弱いという風潮をモウが先頭に立って覆していってほしいです。シティーが開幕から飛ばしているので来季のペップ招聘は見えなくなってきましたが彼ほどの監督ならユナイテッドも当然ウェルカムですしモウとペップとペジェグリーニとベンゲルがトップを争うリーグなんて絶対に魅力的ですよね。
ペドロさん>
おっしゃるとおり、一度離れたことで、お互いの価値がわかったところも多分にあると思うので、多少厳しい状況になっても冷静に切り抜けてもらえればと思います。
VOOさん>
ありがとうございます。頭のいいモウリーニョさんですので、現状ぐらいの問題についてはうまく改善してくれるものと思ってます。
グローリーグローリーさん>
そうですよね。がんばって人気リーグにして金持ってること自体はいいことじゃないか、という単純な思いもあります。グアルディオラさんが来たらさらにおもしろいことになりますね。
「10年前にロンドンに来た頃よりも賢くなった」というのが今の所いい感じの変化と思えないんですよね…。マドリーでのメディアや選手たちとの対立を経てモウリーニョも変化してしまったというか…。
昔はモウリーニョってメディアの前で自分の選手たちを批判することって無かったと思うんですよね。よく言われる自分を悪者にして選手を守るってやつで、選手がメディアを使って監督批判した場合のカウンター以外では基本選手批判とかはしなかった。なのに今は普通に名指しで誰々の調子が悪いのが敗戦の原因とか言うし、1年目にはウチにはストライカーがいないと発言したり、医師の件だってメディアの前で発言するようなことじゃないでしょう。
正直今のままだと選手の心が離れていってしまう危険性があるし、そうなればクラブだって長期政権を任せるなんて無理でしょう…。
だから昔のかっこいいモウリーニョに戻って、さっさと医師との件も解決して、世代交代を進めながらまた昔のように団結した強固なチェルシーを作り上げていってほしいなと思いますね。
パチさん>
わかります。とりわけエヴァさんの件は、直接コミュニケーション、広報、処遇、いろいろな意味で失敗があったのではないかと思います。モウリーニョさんが、早期に危機感をもって改善に動けるかどうかでしょうね。今、外に対して静かなのは悪くないサインなのではないかと期待しています。
医師への発言は別の視点から見るとクルトワ退場によっておこるだろうクルトワへの批判の話題そらしの側面もありましたからね。また選手のコンディションに不満というのは、その後誰よりも自分自身に不満だと続きます。前季ストライカー云々は誰よりもゴールのなかったトーレスを別の形で貢献しているとかばっている発言を何度も会見で見ています。
ぱちさんの挙げる例は、その結論を導くにはちょっと別の視点や反証もたくさんある事例という感じがしますね。
長期的には「育てる」ことが必要ですが、彼は結果を見る限りその能力は無い。
メンバーは固定でどうやって育つので?
バートランドを干してフェリペを取り、バンフォードを戻さずファルカオを取る。
ユースはUEFAユースリーグを制したけれど、おそらく引き揚げないか、使わない。
レンタルに出すか、去年のアケのように。
他の方も指摘しているように、女医の件も以前だったら起きなかった事。
もうね。。。彼の限界なんじゃないかなぁ。。。と思う。
マドリー時代ならモラタとヘセを引き上げ、ヴァランをスタメンにしてる。
彼ら自身がモウへの感謝を述べてますよね。
記事を読めば、育成能力は長期やらなければわからず、今まではモウはクラブからすれば比較的長期であり、それ以上にならなかったのはむしろ会長の要因が大きいとあります。
育成の能力がないとか限界とかはこのブログの記事読めば早計となるのでは。
ジョゼは引き上げるだけ、お試しで何度か使うだけ、てのはよくやります。
あとは若手でもある程度完成された選手は使う。
マドリー時代の事はよく知らないので少し追ってみましたが、ヴァランは確かに使ってる形ですが、ヘセとモラタはカスティージャが主戦場のように見えます。
この2人はアンチェロッティになってから本格的に使われたように見えるのですが、どうなんでしょう?
ラニエリがランパードをプティの横に置いて我慢強く使って育てたような形が無いんですよ、ジョゼは。唯一ジョーコールを干した後でレベルアップして帰って来た、使った・・・ぐらいしか記憶が無く。
チェルシー後のジョゼをよく知らないので、彼が育てた選手が居るならば教えてもらえると助かります。
ジョゼは引き上げるだけ、お試しで何度か使うだけ、てのはよくやります。
あとは若手でもある程度完成された選手は使う。
マドリー時代の事はよく知らないので少し追ってみましたが、ヴァランは確かに使ってる形ですが、ヘセとモラタはカスティージャが主戦場のように見えます。
この2人はアンチェロッティになってから本格的に使われたように見えるのですが、どうなんでしょう?
ラニエリがランパードをプティの横に置いて我慢強く使って育てたような形が無いんですよ、ジョゼは。唯一ジョーコールを干した後でレベルアップして帰って来た、使った・・・ぐらいしか記憶が無く。
チェルシー後のジョゼをよく知らないので、彼が育てた選手が居るならば教えてもらえると助かります。
ヘセとモラタにとっては世に出られるかどうか文字通り運命の分かれ目で、だからモラタはモウリーニョに一生感謝すると言っているようですね。的確な若手の抜擢は育成に必須の能力ですよね。
ズマもレンタルかなあって言われてたのがモウリーニョに戦術をしこまれて、スタメンレベルで起用できるようになりました。
移籍してくる前の彼は決して今のズマではなかった。もし最初からチェルシースタメンレベルならマンガラ並の値がついてたでしょうから。
アスピリクエタの左SBとしての覚醒もモウリーニョ以前にはなかったのも周知の通り。
2年で向こう10年できそうな若手CBをすでにスタメンレベルにしてるんで十分かなと。
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そうですね、インテル時代もサントンを抜擢した覚えがあります。その後の伸びはあれですが・・・。ラニエリ時代よりも我慢して使える環境じゃ無いのかも知れませんね、マドリーもペレスでしたし。最近ではチェルシーに限らずメガクラブでの育成は少なくなって来てるのは事実ですよね。