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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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1点差負けが7回…アストン・ヴィラのシャーウッド監督、打つ手なしの解任!

サンダーランドを率いていたアドフォカート監督、リヴァプールのブレンダン・ロジャース監督に続き、早々と今季プレミアリーグ第3号の解任監督が出てしまいました。25日にクラブより発表があったのは、アストン・ヴィラのティム・シャーウッド監督、46歳。ロジャースさんとエヴァートンのロベルト・マルティネス監督より4歳上で、ユルゲン・クロップ監督より2つ下の若き指揮官です。

2015年2月、貧攻を改善できなかったポール・ランバート監督の後を継いだシャーウッド監督は、降格ゾーンにいたチームをプレミアリーグ残留に導き、FAカップでは決勝に進出。立て直しに成功したものの、今シーズンに入ると状況は一変しました。アストン・ヴィラはプレミアリーグ10試合で1勝1分け8敗、直近は泥沼の6連敗。最近9試合を1勝8分けと勝利を奪えず苦しんでいるリヴァプールに唯一3ゴールを許して敗戦を喫し、先週は不振のチェルシーにも2-0と完敗してしまいました。この成績では、クラブも我慢するとはいいづらいでしょう。アストン・ヴィラは、前指揮官に感謝の意を表明しながらも、「結果は充分ではなく、変化が必要である」と理由を語っています。

シャーウッド監督の2015-16シーズンを振り返ってみましょう。今季プレミアリーグ開幕戦ではアウェイでボーンマスに勝利し、2戦めのマンチェスター・ユナイテッド戦に0-1で惜敗。ベンテケ、デルフ、クレヴァリーを失ったチームではありながら、ここまでは降格が危惧されるチームでなく、「新戦力のゲステデと出遅れているグリーリッシュがフィットすれば手強い」「左SBのジョルダン・アマヴィは素晴らしい補強」と、シャーウッド体制2年めに期待する声もありました。3節で敗れたクリスタル・パレスはアーセナルに善戦した好調クラブ。次のサンダーランドに引き分けたぐらいでは大騒ぎにはならなかったものの、アウェイながら2点リードしていた試合をひっくり返された5戦めのレスター戦が激痛でした。WBAにホームで敗れて1勝1分け4敗となると、シャーウッド監督から、解任報道を意識した発言が聞かれるようになります。

「プレミアリーグはまだ始まったばかり。多くの時間が残されており、パニックになることはない。(サポーターに対して)私は、我慢強くなってくれといってきたが、そろそろ我慢も限界にきているとは感じている。しかし、窮地に追い込まれた時こそ、ティム・シャーウッドは本領を発揮するのさ」

行間に、ベンテケなど主力が離脱した悔しさがにじみ出ていますが、彼らしい強気も残っています。さらにリヴァプールに3-2、ストークに0-1と競り負け。チェルシー戦ではレスコットがGKからのボールをトラップミスして先制点をプレゼントし、追加点もオウンゴールと守備陣を崩されることなく2-0。指揮官のコメントからは、「失点はプレゼント」「まぐれ当たりのようなもの」と、投げやりな空気も加わってきます。無理もありません。アストン・ヴィラはチェルシー戦以外に2点差以上の負けがなく、唯一の完敗もファインゴールはなかったのですから。

そして先週末。本拠地ヴィラパークでのスウォンジー戦は、後半に入ってからジョルダン・アイェウが先制したにも関わらず、シグルズソンに同点ゴールを喰らった後、ラスト3分にジョルダンの兄であるアンドレに「アイェウ返し」されて、またも1点差負け。シャーウッド監督は、観念したようです。解任されるのではと問われ、「それなら、携帯電話の電源を切っておこうかな」。粛々と今までの取り組みを続けていくといいながらも、「私たちは監督やコーチとして、これ以上のことはできない。選手もこれ以上の努力は無理だ」と語り、将棋でいえば投了状態でした。

力がない監督だとは思いません。2013-14シーズン、プレミアリーグで7勝3分6敗と不振に陥っていたトッテナムのアンドレ・ヴィラス・ボアス監督解任を受けて指揮官の座につくと、その後の22試合を14勝3分5敗と立て直しに成功。シンプルなサイド攻撃を徹底させ、選手をフェアに評価して競争意識と戦う姿勢を植え付けるなど、シーズン末に解任されたのが気の毒と思える采配を振るっています。最大の功績は、前任者に干されていたアデバヨルを復活させたこと。アストン・ヴィラでも、前半戦でわずか1ゴールだったベンテケにゴールを量産させており、燻っている選手の能力を引き出すのがうまい監督でした。

トッテナムでアデバヨル、ヴィラでベンテケを活かして巻き返しに成功した監督は、ベンテケを抜かれ、夏のアデバヨル獲得も叶わずプレミアリーグから姿を消すことになりました。ストライカーもさることながら、前線にパスを供給するデルフとクレヴァリーの後釜が定まらなかったのが痛かったのではないでしょうか。ヴェレトゥ、グイェなどのMFを獲得したもののパッとせず、彼らがチームになじむ前に時間切れとなってしまった感があります。チェルシーのセスクとマティッチ、リヴァプールのヘンダーソン、ストークのエンゾンジなど、中盤のエンジンの不調、負傷離脱、移籍は苦戦の原因となっています。セントラルMFを強化して上位につけているマンチェスター・ユナイテッドを見るまでもなく、チームの心臓となるポジションのクオリティは最重要です。

アストン・ヴィラは、当面はU-21を率いていたケヴィン・マクドナルドさんが暫定監督となるようです。ブレンダン・ロジャース、デヴィッド・モイーズ、リヨンの前監督レミ・ガルデなどの後任候補が取り沙汰されていますが、競り負けることが多く、膿がどこにたまっているのかの診断が難しいチームに、火中の栗を拾おうと手を挙げる有能な監督は現われるのでしょうか。ひと足早くサム・アラダイスさんを招聘したサンダーランドがタインウェアダービーを3-0で快勝し、プレミアリーグ最下位となってしまったヴィラの巻き返しの難易度は、さらに上がっているようにみえます。ビッグ・サムはうってつけの人材だったのですが…。(ティム・シャーウッド 写真著作者/Brian Minkoff-London Pixels)

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