偏愛的プレミアリーグ見聞録

2022年8月30日、ボーンマスがたった5試合でスコット・パーカーを解任。その8日後、チェルシーがトーマス・トゥヘル監督との契約を打ち切りました。両者ともに、これほど早くレッドカードを突き付けられるような戦績ではありませんでした。

スコット・パーカーは、プレミアリーグの開幕戦でアストン・ヴィラに2-0で快勝。その後の3連敗は、マンチェスター・シティ、アーセナル、リヴァプールで、カラバオカップ2回戦はノリッジとのPK戦を制しています。リヴァプール戦が9失点の惨敗とはいえ、プレミアリーグ昇格を果たした功労者が開幕から3週間でアウトはショッキングでした。

チェルシーのドイツ人指揮官は、プレミアリーグ3勝1分2敗で6位。チャンピオンズリーグのザグレブ戦で敗れた翌日というスピーディーな意思決定も、3日後のグレアム・ポッター就任も、予測不能の事件です。クラブに2度めのビッグイヤーをもたらした名将は、戦績を咎められたわけではないでしょう。2勝3分1敗から、ナポリに4-1で敗れたユルゲン・クロップに解任の噂はありません。

彼らが職を失った最大の理由は、補強に対する不満をメディアに対して漏らしたことでしょう。リヴァプールにゴールラッシュを許した後、スコット・パーカー監督は「われわれは少々、戦力が足りない。とてもクオリティが高い選手がいるけど、彼らにとっては初めて経験するレベルだ」とコメント。その3日後、ボーンマスのマキシム・デミンオーナーは、決別を報告するステートメントのなかで信頼関係を問題にしています。

「スコットと彼のチームには、在籍中の奮闘に対して感謝の意を表したい。彼の指揮によってプレミアリーグに復帰した昨シーズンは、われわれの歴史のなかで最も成功したシーズンのひとつとして、ずっと記憶され続けるだろう」

「しかし、われわれがチームそしてクラブ全体として進化していくためには、持続的に運営するための戦略における連携が無条件に必要だ。お互いを信じ、尊重し合わなければならない」

トゥヘル監督の発言は、よりストレートでした。レスター戦を控えたプレスカンファレンスで、「リーズに3-0で負けるには強すぎるチームだった」と直前の完敗を嘆いた後、「トランスファーマーケットに対する見解はさほど変わっていない。何を加えるのが理想なのか、何週間も前からわかっていた」と、補強の遅れを非難するような言葉を残しています。

2人のリタイアが舌禍だったとすると、昨季よりも明らかに弱くなったと嘆いたブレンダン・ロジャース監督も、自らピンチを招いたといえます。「ヨーロッパの主要リーグにおいて、すべてのクラブが新たな選手を獲得しているという事実があるにもかかわらず、われわれはそれを眺めるしかなかった」。ブックメーカーの解任監督予想で大本命となった指揮官は、最近になって、「何もなかったが、サポートはあった」とクラブをフォローし始めています。

カスパー・シュマイケルが去り、フォファナをチェルシーに抜かれたのに、獲得したのはGKスミスーズとヴォウト・ファエスのみ。マーケットにおける収支は5000万ポンドのプラスですが、選手のサラリー負担が財政難の理由となっているレスターは、冬のマーケットでさらに主力を放出するかもしれません。

間が悪いことに、昨日、「BBC」が「キングパワー・スタジアムを8000席増設する計画が、議会で承認されようとしている」と報道。スタジアムの周辺には、ホテル、ビジネスセンター、フラグシップとなるファンストア、イベントアリーナ、マンションも建設されるようです。お金の出どころが別だとしても、ロジャース監督にしてみれば、大いにモヤモヤするニュースです。

プレミアリーグ6戦で1分5敗の最下位。次節は、コンテ監督率いるスパーズ。その次は総勢22人を補強したノッティンガム・フォレストです。22対2…この試合が解任のトリガーとなるのは、あまりにもせつない。レスターの経営ボードには、こんな質問を投げかけてみたくなります。

「守護神と最終ラインの軸を抜かれて、補強は2400万ポンドという現状を知られているなかで、ジャーナリストに『戦力に不満はないか』と問われたら、どう切り返せばよいのでしょう？」

弱くなったと嘆きながらも、クラブの事情を慮って婉曲な表現を選んでいる指揮官を、早期に見限るのは回避していただければと切に願います。2019-20シーズンから2年連続でTOP4争いを繰り広げ、FAカップを制覇した功労者ではありませんか。とはいえ、昇格してきたばかりのノッティンガム・フォレストとボーンマスに連敗して8戦7敗となれば、諫める言葉はありませんが…。