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偏愛的プレミアリーグ見聞録

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アントニオ・コンテ退任。スパーズの経営トップと欧州屈指の名将がうまくいかなかった理由。

「アントニオ・コンテ監督が、双方合意の上で退団したことを発表します。最初のシーズンでチャンピオンズリーグの出場権を獲得。彼の貢献に感謝するとともに、今後の活躍を願っています。

今シーズンの残りの期間は、クリスティアン・ステリーニがヘッドコーチ代行として指揮を執り、ライアン・メイソンはアシスタントヘッドコーチとなります」

プレミアリーグでTOP4を争うトッテナムが、コンテ監督と袂を分かちました。1時間前に発表されたステートメントに「双方合意の上」とあるので、「退任」と表現しましょう。ヌーノ・エスピーリト・サント監督の解任の後を受け、ノースロンドンにやってきたのは2021年11月。2度めのプレミアリーグは、チェルシーの2年より短い1年5ヵ月で幕を閉じました。

公式戦76試合で41勝12分23敗。勝率54.0%はスパーズの指揮官として歴代5位で、ヴィラス・ボアスとポチェッティーノを僅差で下回っています。唯一の功績は、昨シーズンのTOP4フィニッシュ。2年めの今季も4位をキープしていたものの、チャンピオンズリーグはミランに敗れ、ベスト8に進出できませんでした。

「sack」ではなく「leave」という言葉を選んだ「BBC」の速報は、「ドローで終わったサウサンプトン戦後の驚くべきカンファレンスで、選手たちを『セルフィッシュ』と呼び、クラブのカルチャーを批判した」と伝えています。勝利への執念という彼の長所は、急激な改革を望まないクラブで「焦燥」と化し、修復不可能な溝を生んでしまったという説明が妥当でしょう。

スパーズの最後のタイトルは、2007-08シーズンのリーグカップ。その後の15年で指揮を執った8人の監督のなかで、2年以上続いたのはハリー・レドナップとマウリシオ・ポチェッティーノだけです。欧州主要リーグの経験が浅かった監督は空回りし、百戦錬磨の名将はビッグクラブとの感覚の違いを埋められずに去っていきました。

コンテ監督のアシスタントだったステリーニコーチに代行を依頼したのは、次の監督候補との交渉に時間をかけたかったからでしょう。ナーゲルスマンを口説き落とすのか、あるいはポチェッティーノに復帰を要請するのか。いずれにしても、長期的な視座に立った戦力の見直しと勝利を急がない補強がなければ、トロフィーに手が届かない季節が続きそうです。

「テレグラフ」のマット・ロウ記者は、スパーズが抱える問題、すなわち経営トップとビッグクラブで実績がある監督がうまくいかない理由を列挙しています。

「タイトルよりも、収益を得られる順位に入ることを優先している」
「フットボールに対するコミットメントは、名もなき10億ポンドのスタジアムにビヨンセのようなヘッドラインアクトを呼び込むよりも低い」
「コンテのもとで銀メダルにチャレンジするために、夏に1億7000万ポンドを費やせば充分という認識だった」
「ガナーズが夏の時間をまるまるかけて、ミケル・アルテタのターゲット獲得を実現したのに対して、スパーズは34歳のイバン・ペリシッチなどコンテのための選手と、ジェド・スペンスのようなクラブのための選手とをまぜこぜにした」

あまりにもエキセントリックだったコンテ監督ですが、去り際に放ったいくつかの言葉は、スパーズが自らを変えるために残しておきたいものだったのではないでしょうか。今回の退任に際して、「チャンピオンズリーグ出場権を賭けた戦いが待っている。全員が力を合わせなければならない」と檄を飛ばしたダニエル・レヴィ会長には必要のない言葉なのかもしれませんが。


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