イングランドのプレミアリーグ(ときどきチャンピオンズリーグ)専門ブログ。マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプールetc.

偏愛的プレミアリーグ見聞録

マンチェスター・ユナイテッドファンですが、アーセナル、チェルシー、トッテナム、リヴァプール、エヴァートンなどなど何でも見てしまう雑食系プレミアリーグファンです。プレミアリーグ観戦記、スタジアム、チーム情報からロンドンやリヴァプールのカルチャーまで、幅広く紹介しています。

FAカップ制覇から2日…ファン・ハール監督の解任決定!明日にはモウリーニョ監督就任発表へ

Louis van Gaal has been sacked as manager of Manchester United, with former Chelsea boss Jose Mourinho set to be named as his replacement.(チェルシーのボスだったジョゼ・モウリーニョを後任として指名する準備がなされ、ファン・ハールはマンチェスター・ユナイテッドを解任された)」。昨日、ついに「BBC」がいい切りました。「Louis van Gaal: Manchester United sack manager」と題された記事は、FAカップを制覇したばかりのクラブにおける、監督や関係者の月曜日の動向を伝えています。この日、ファン・ハール監督は、8時45分にキャリントンを訪れ、17時前に練習場を去っったとのこと。彼の到着から遅れること45分、同じくキャリントンに姿を見せたのは、プレミアリーグのマネージャー協会(LMA)の弁護士ポール・ギルロイ氏。デヴィッド・モイーズ監督解任の際に動いたことで知られる専門家が顔を見せたことから、当時と同じ話がクラブにあることが容易に想像できました。

そして先ほど、マンチェスター・ユナイテッドの公式サイトで、「奇将」ファン・ハール監督の退任が正式に発表されました。プレミアリーグ5位、サー・アレックス・ファーガソンが解任寸前に追い込まれていた1989-90シーズン以来の低水準となる49ゴールは、契約を解除する理由としては充分です。26年前にFAカップを獲得して解任を逃れたサー・アレックスに対して、同じ大会を制したファン・ハール監督はチャンスを与えてもらえませんでした。実際のところ、理由は戦績だけでなく「そこにフリーのジョゼがいたから」でもあるのでしょう。エグゼクティブ・ヴァイス・チェアマンのエド・ウッドワード氏は、この重い決断を伝えるとともに、前任者のタイトル獲得と若手発掘の功績を称えています。

「歴代最多に並ぶクラブ史上12回目のFAカップ優勝により、4つの異なる国でタイトルを獲得したルイスとスタッフの2年間の取り組みに感謝しています。彼は、偉大なプロフェッショなリズムと尊厳をもって仕事に取り組みました。何人かの若い選手たちが、最高峰のステージでもその能力を発揮できるという信頼を遺産として残し、彼はわれわれのもとを去っていきます。クラブの誰もが、彼に最高の未来が待っていることを願っています」(マンチェスター・ユナイテッド公式サイト英語版より。翻訳は筆者)

いまはただ、「ありがとうございました」という言葉しかありません。今季のプレミアリーグでは、求めていた成果を下回ってしまったのは事実ですが、ファン・ハール監督が残した人材の成長という大きな財産は、未来がどうなったとしても、揺るぎない功績として記憶されるべきものだと思います。そしてまた、クラブの過渡期において12年ぶりにFAカップを獲得し、2016-17シーズンのコミュニティシールドがレスターVSクリスタル・パレスという驚愕のカードとなることを水際で食い止めた実績も、「国内カップしか獲れなかった」と非難されるものではないでしょう。2年前、彼が就任したときのマンチェスター・ユナイテッドは、新陳代謝の機能不全に陥っており、混乱の真っただ中にいたのですから。

初年度を4位としてCLに復帰し、2年めのプレミアリーグ2015-16シーズン。大量の負傷者に加え、プレミアリーグやチーム戦術になじめない新戦力という問題を抱え、8試合勝利なしという苦境に陥った後、トップチームの経験ゼロの若手抜擢というウルトラCを繰り出してクラブを立て直した手腕は、欧州で勝てるクラブを率いてきた経験のなせる業。デヴィッド・モイーズにはできなかったであろう鮮やかな手綱さばきを堪能させていただきました。自らの哲学に対して選手に踏み絵を強いるような組織作りは、ときに我の強い選手との衝突を生み、もっと柔軟に戦力を活かせばいいのにとため息をつかされることもしばしばありましたが、選手の能力の目利きは超一流。若い選手が早期に戦力として機能したのは、彼が敷いた戦略・戦術が明確で、ピッチでどう動いてほしいかを具体的に示せたからでもあるでしょう。

苦しい試合が多く、大変な2年でしたが、冷静に振り返ればおもしろい2年でもありました。最終盤のウェストハム戦に勝ってプレミアリーグ4位に滑り込んでいれば、留任もあったのでしょうか。いや、今となってはそれを問うことには何の意味もありません。ただ、感謝の意を伝えるだけに留めましょう。

新監督に対する希望を語るのは、公式サイトに名前が出た後がいいでしょう。ひとつだけいいたいのは、将来、プレミアリーグのトロフィーやビッグイヤーを掲げるのは、これから補強するビッグネームばかりでなく、リンガード、ラシュフォード、フォス=メンサーらであってほしいということです。補強費320億円などというニュースもあるようですが、マンチェスター・ユナイテッドの進む道が、苦しみながら辿り着いた今いる場所からの延長線上にあることを願っています。最後に…。ファン・ハールさん、奥様との約束通り、一線から身を引かれるのでしょうか。本当に、おつかれさまでした。最初に観たとき、絶句させられた無敵アヤックスの革命的なサッカーと、PK戦前にGKを交代したブラジルワールドカップ準々決勝のコスタリカ戦の采配は、忘れません。名将…いや、やはり「奇将」でした。うーん、せつないです。

おもしろいと思っていただけた方は、お時間あれば、下のブログランキングバナーをクリックしていただけると大変うれしいです。所要時間は5秒です。何とぞよろしくお願いいたします!


“FAカップ制覇から2日…ファン・ハール監督の解任決定!明日にはモウリーニョ監督就任発表へ” への10件のフィードバック

  1. グローリーグローリー より:

    凄く勝手な事を言いますが、少しさみしく残念に思ってます。トップにラッシュフォード、両翼にマルシャル、リンガードそして中盤ルーニーって形を来季スタートから継続してみてみたかった気もします。ブロク主様のおっしゃる通り、モウリーニョがフリーでなかったら起こらなかった解任劇でしょうね。ファン・ハールの作った、後ろがそれなりにソリッドで前線にスピードのある選手が揃ってるベースはモウリーニョのフットボールにハマると思いますし、今後このチームでタイトルを多く獲得していく事でファン・ハールの仕事が間接的に評価されるような未来が訪れてくれればと願います。さよなら奇妙なオランダ人監督

  2. Macki より:

    更新ご苦労様です。
    当初はメディアが叩くファン・ハールの記事に面白く読んでおりましたが、若手の発掘やつまらないと揶揄されながらも結果を出すファン・ハールへの見方を途中で変えました。個人的にはラシュフォードの発掘は当たりだったと思います。この選手は文武両道なのが日本人心をそそられます。
    話を戻すと、もっとリスペクトされて良い監督だと思います。日本の報道では内容の一部分を切り取られて報道されているように受けました。就任1年目4位今シーズンは5位&FA杯優勝とレッズサポの私からすると十分かと思いますが、投資対結果を比較するとやむ得ないのでしょうかね。アヤックス時代やW杯のPK戦と忘れられない監督ですね。お疲れ様でした!

  3. yuto より:

    更新お疲れ様です。
    1月頃にはこの発表を心待ちにしていましたが、今はこの解任に喜びはありません。
    間違いなく、未来へのベースは彼が作ってくれたといえるシーズンでした。
    来期からは新監督の下で若手が躍動することがファンハールさんの評価につながるでしょう。
    2年間お疲れ様でした。そして、ありがとうございましたと言いたいです。

  4. queen より:

    半壊してたチームを整備してくれたことは素直に認めたいですね。あと、今回は選手との激しいぶつかり合いもこれといってなかったですね。リバウドやストイチコフとは確執通り越して憎しみ合いでしたから。
    キャリア最後の記念に日本代表なんかどうですか。技術は劣るけど、聞き分け良い選手多くてやりやすいですよ。と一瞬思いましたが、二年後からあと四年やるなんて無茶言うなって言われちゃいますね。

  5. シティふぁん より:

    CL出場権を失い、トップクラブから落ちていく不安はあるでしょうが
    クラブもファンも来季プレミア優勝、再来季CL制覇とか考えてる様ならユナイテッドはいつまでも変わらないでしょう
    今ユナイテッドは過渡期ですし
    もう1年ファンファールで良かったかなと思います

  6. ガナユ より:

    ファンファールの若手の目利きとその器用に対する大胆さは素晴らしいですね。それと同時にディ・マリアを筆頭にスター選手の放出が多く、もう少し戦術や選手起用に柔軟性があれば若手とスター選手を融合させられたのでは…と思いにふける時があります

  7. por より:

    ルーニーと心中しましたね…
    彼が以前とスランプでなければCLは獲れていたはず…
    ルーニーに対して敬意を持っていたからこそ、スランプでもFWとして使い続け、ベストのタイミングでのコンバート

    若手の発掘とレジェンドルーニーの寿命を延ばしたことは感謝せねば
    試合は詰まらなかったけど…笑

  8. nyonsuke より:

    更新お疲れ様です。

    そして、ファン・ハール監督お疲れ様でした。
    今季、決勝の舞台で2度も敗れたレッズファンとしては、FA杯を制し内容が伴わないとも言われながらも結果を出し続けたマン・ユナイテッドの奇将をどこか羨ましく感じていました。
    皆様が仰るとおり、冷静に分析すると過渡期のチームを寸での所に留まらせた、もっと評価をされてよい監督だったと思います。
    来季、モウリーニョ監督となるとのことでプレミアは文字通り戦国時代へ突入すると思います。
    モウリーニョ監督はどのようなチームを作るでしょうか?
    寂しさとともに、来季への楽しみがまた増えたとも思う複雑な心境です。

  9. pee より:

     更新お疲れ様です。

     なんていうか、勝手なことを言うようですが。あまりいい気分にはなりません。というのも、なぜフロントがここで彼を解任し、モウリーニョを任命するのかよくわからないからです。要するに、例えばLVGの任命責任はどうなるのか、ということです。もしモウリーニョを招聘することに成功することでそう言ったことをうやむやにする意図があるのなら、残念ですがユナイテッドファンでありながら自身あまりユナイテッドの試合を見る気にはなれません。。
     そもそも、ファーギーが引退してからグレイザー家に買収されたことの副作用が目に見えてきている気がしてなりません。移籍市場でのあり方しかり、クラブのスポーツ面への投資しかり。。覚えてますか、だって2009年にロナウドをレアルに売った後市場で買ったのは二人のフリートランスファーだったんですよ?
     ともかく、僕が言いたいのはLVGはもっと敬意を払われてもいいのではないかということ、後今このような人事の決断をすることが本当に適切かどうかということに関して疑問を持たざるをえない、トイうことです。

  10. makoto より:

    グローリーグローリーさん>
    そうですね。ルーク・ショーが戻り、シュヴァインシュタイガーが2年めでフィットし、CBをひとりとストライカーを強化してルーニーはセントラルかインサイドMFで…と考えると結構いけそうな気になってくるんですよね。名残惜しいです。

    Mackiさん>
    そうなんです。プレスカンファレンスに出席してやり合った記者が揶揄するならわかるのですが、インタビュー映像すら見ていない日本のメディアがなぜ悪いほうに盛るんだろうと、いつも思っていました。メディアは、フラットに伝えてほしいですよね。結果は満足とはいえないかもしれませんが、いい財産を残してくれた監督でもありました。

    yutoさん>
    私も、1月は解任してほしい気分に傾いていたので、同じ気持ちです。来季の若手を楽しみにしたいです。

    queenさん>
    確かに、ファン・ハールの日本代表は、選手たちがきちっとやりそうなのでおもしろそうですね。香川真司はセントラルで試されたうえで、ベンチでしょうか!?(苦笑)

    シティふぁんさん>
    来季は、ファン・ハールさんとしては結果を出す年と考えていたはずなので、観たかったですね。

    ガナユさん>
    そうなんです。大胆なので、一発勝負のカップ戦には強いですよね。ブラジルといいFAカップといい。

    porさん>
    試合はつまらなかったです(苦笑)。ただし、終盤は見ごたえのある試合が増えていたので、未来は明るいなと思ってました。

    nyonsukeさん>
    おっしゃるとおりですね。ファン・ハールさんの自信たっぷりな振る舞いや言動が、モイーズさんにはできなかった改革のスピードを早めたところもあり、経験値の低い監督ならもっとひどい結果に終わっていたとも思います。モウリーニョさんは、意外といろいろ踏襲するのではないか?と思ったりもします。今のマン・ユナイテッドとモウリーニョスタイルは、ポゼッションを取る取らないといった違いこそあれ、共通項もまた多いので。

    peeさん>
    投資に関しては、ギルさんがいなくなった影響のほうが大きいのではないかと思います。今、解任したのはイヴラヒモヴィッチを本気で獲りにいくためではないかと推測したりしてます。それがなければ、FAカップが終わって即解任というスピードの説明がつきません。

コメントを残す