モイーズ監督は「ティンカーマン」⁉プレミアリーグ2016-17・先発起用選手が多いクラブランキング
2003-04シーズンよりアブラモヴィッチさんがオーナーとなり、大型補強に打って出たチェルシーをプレミアリーグで優勝させることができなかったのは確かですが、このときは相手が悪かったとしかいいようがありません。2位チェルシーの上にいたのは、無敗優勝を遂げた「ザ・インヴィンシブルズ」、すなわちアーセン・ヴェンゲルが築いたクラブ史上最強のチームだったのです。無冠を咎められたイタリア人監督は、モウリーニョ監督に監督の座を奪われ、イタリアやスペイン、フランスのクラブを率いた後、2015年に11年ぶりにプレミアリーグに復帰しました。今となっては、ラニエリ監督をあの懐かしいあだ名で呼ぶ記者はいないでしょう。レスターを率いた名将は、秋以降はスタメンを固定させて戦い、前季は残留争いをしていたクラブを奇跡的なプレミアリーグ制覇に導きました。
さて、今回の記事の話に戻りましょう。「デイリー・ミラー」が「New Tinkerman」に指名したのは、サンダーランドのデヴィッド・モイーズ監督です。理由はシンプルで、今季のプレミアリーグで最も多くの選手をスタメンで起用しているから。7試合すべてに先発出場しているのは、エースのジャーメイン・デフォーのみ。次に多いのは6試合に出場しているDFのラミーヌ・コネですが、最終ラインだけでも実に9人がスタメン起用されています。
多くの選手をピッチに送り出しながら戦績が振るわない監督を、すべからく「ティンカーマン」と呼ぶのであれば、モイーズ監督はその名前を頂戴しなくてはなりませんが、もともとこの秀逸な表現には、「いじりすぎ」「どっしり構えていればいいものを…」というニュアンスが込められていたはずです。今のサンダーランドは、そんなことをいえるような状態ではないでしょう。序盤戦でスタメン起用人数が多くなるチームの大半は、2つの課題のいずれかを抱えています。「退団と新加入が多く、チームを創り直さなければいけない」「負傷者が多く、その対応に追われている」。残念なことに、モイーズ監督はこの両方に直面しているのです。
サンダーランドは、昨季チームの中心だったエムヴィラが抜け、最終ラインからはカブール、ウェズ・ブラウンといったベテランがいなくなりました。代わって入ったのは、マンキージョ、マクネア、ジロポジ、ヤヌザイ、ドナルド・ラブ、デナイエルといったプレミアリーグのトップクラブのお下がりともいえる面々で、若い選手が多いのが特徴です。新戦力でチームの中心に据える目処が立ったのは、エンドングとマンキージョぐらいで、今後もしばらくお試し期間は続くでしょう。「試しながらチームを作る」「育てながら戦う」ことを余儀なくされているモイーズ監督は、いわば「試行錯誤マン」なのです。
【プレミアリーグ2016-17 先発した選手の人数】
1位/サンダーランド/22名
2位/ウェストハム・ユナイテッド/20名
3位/ストーク/19名
4位/アーセナル/18名
4位/クリスタル・パレス/18名
4位/レスター/18名
4位/マンチェスター・シティ/18名
4位/ミドルズブラ/18名
9位/エヴァートン/17名
9位/サウサンプトン/17名
9位/スウォンジー/17名
9位/トッテナム/17名
13位/チェルシー/16名
13位/リヴァプール/16名
13位/マンチェスター・ユナイテッド/16名
13位/ワトフォード/16名
13位/WBA/16人
18位/ハル・シティ/15名
19位/ボーンマス/14名
19位/バーンリー/14名
ただでさえ厳しい顔ぶれのチームに、悪いことが重なりました。負傷者の状況をまとめているサイト「フィジオルーム」によれば、サンダーランドは9人の負傷者を出しており、こちらは順位テーブルとは真逆でプレミアリーグNo.1。キルヒホフ、カッターモール、ボリーニ、ラーション、マンノーネ…主力ばかりで痛すぎます。2分5敗という冴えない戦績を、指揮官の技量の問題のみに帰結させるのは酷でしょう。誰がやるにしても、このチームを立て直すには時間が必要です。
先発出場選手が多いクラブを見てみると、2位のウェストハムは現在の負傷者数も第2位。序盤戦でパイェを欠き、フェグリ、ディアフラ・サコ、アイェウ、キャロル、クレスウェルを失ってプレミアリーグ18位に沈んでいます。3位のストークは、バートランド、アフェライ、アイルランドが長期離脱中で、ボージャン・クルキッチとシャキリ、イムビュラは昨季のパフォーマンスにはほど遠い状態でした。不振のチームがスタメン起用選手が多くなる傾向はあるのだと思われますが、ただただ苦しんでいるモイーズ監督と「ティンカーマン」という言葉はマッチしないのではないでしょうか。ウェストハムのビリッチ監督、ストークのマーク・ヒューズ監督ともども、ここからの巻き返しに注目したいと思います。
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