混乱は止まらず、一体感はいずこへ…プレミアリーグ優勝監督クラウディオ・ラニエリ、ついに解任!
しかし、何しろラニエリです。創設133年めのクラブに、プレミアリーグ初優勝という永遠に残る栄誉をもたらした名将です。レスターは、他のクラブより数週間は、我慢したのだと思われます。ところが、戦績は一向に好転しません。バーンリー、マンチェスター・ユナイテッドの後、自分たちより下にいたスウォンジーにも負けて、今季プレミアリーグ初の3連敗。忍耐の限界が訪れたのは、おそらくFAカップのミルウォール戦に敗れた瞬間でしょう。発表がセヴィージャ戦の後になったのは、チャンピオンズリーグを控えた選手たちを動揺させたくなかったからだと思います。「国内における戦績から変化を求めるべきと考えた。痛みを伴うが、必要だった」というクラブが発した言葉は、スペインの強豪に負ける前にジャッジがなされていたことを雄弁に語っています。
2シーズン連続でプレミアリーグ優勝監督が期中に解任されるという事件を残念に感じながらも、岡崎慎司の入団以来、レスターの試合をすべて観続けてきた者としては、「やむなし」という言葉しかありません。ここしばらくのラニエリ監督は、チェルシー時代の「ティンカーマン(こねくりまわし屋)」というニックネームを復活させるような混乱に陥っており、直近1ヵ月の8試合のうち4試合でハーフタイムに選手を代えています。このタイミングでのチェンジは、アクシデントでもなければ「私がスタメンを間違えました」という自白であることが多いのではないでしょうか。適応力がある岡崎慎司が「途中から入って何をすればいいのか、イメージが湧かない」と困惑していたことからも、選手たちがいかに戸惑っていたかが窺えます。
昨季王者の低迷理由が語られるとき、必ずといっていいほどエンゴロ・カンテの名前が出てきますが、彼の移籍は優勝を狙えるチームではなくなった理由ではあっても、残留争いに巻き込まれるような低迷の要因ではないと思います。代役として前半戦で起用されていたアマーティは今ひとつでしたが、1月に入団したエンディディは悪くありません。失点が止まらず負け続ける最大の理由は、サイドを着火点とした最終ラインの崩壊ではないでしょうか。マフレズにとっての守備とは、鋭いドリブルで相手のSBを自陣に釘付けにすること。昨季プレミアリーグMVPが中に斬り込むプレイを忘れた瞬間、戻らないサイドMFの裏に入ってくる選手たちがダニー・シンプソンを容赦なくつぶし、危険なラストパスが中央を襲います。不振に陥ったオルブライトンとフクスのサイドも1年前のようにクロスを抑えられず、決して読みがいいとはいえないウェズ・モーガンとフートが止めきれなくなるシーンが増えました。
レスターの守備が堅くなり、負けないチームに変貌を遂げたターニングポイントは、昨年の10月3日、プレミアリーグ8節のノリッジ戦でした。攻めるのが好きなデラートとシュルップだったSBを、サイドアタックへの対応がしっかりしたフクスとダニー・シンプソンに代えたラニエリ監督は、7試合で14失点と殴り合いに競り勝ってきたチームを、31試合で22失点という堅守速攻型にモデルチェンジしました。昨夏、ムサ、イスラム・スリマニと前線ばかり厚くしたクラブが獲るべきだったのは、デマライ・グレイしかいない手薄なサイドで攻守ともに貢献してくれるバレンシアやヴィクター・モーゼスのような選手と、シンプソン頼みの右SBのスペシャリストだったのではないでしょうか。スカウト部門責任者のスティーブ・ウォルシュがエヴァートンに「転職」したのも、孤独になったラニエリ監督をダッチロールさせてしまう一因だったのではないかと思います。いずれにしても、指揮官がコンセプトを明快に語れなくなり、選手の耳に指示が届かなくなれば、チームは終わります。一体感と明るさをエンジンとして、あのおとぎ話を生んだチームであれば、なおさら。
後任は、未定。出場機会を失っていた岡崎慎司にとって、この指揮官交代が吉か凶かは、次の名前を聞くまでは何ともいえません。軋み始めた全員30代の最終ラインを立て直せなければ降格必至だと思われますが、移籍市場が閉まったこのタイミングで、新監督はどこまでがんばれるでしょうか。ブックメーカー「ウィリアム・ヒル」のオッズは、レスターは降格候補の4番手、すなわちぎりぎり残るとなっているのですが…。
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